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「あいつなんかいなくても…」シングルマザーが明かした覚悟|隣人のシングル親子が危うい

鹿目サチ(かのめさち)は、マンションのトナリの部屋に住む、シングルマザー・氷川瑠美(ひかわるみ)の息子、氷川ライ(ひかわらい)のことを気にかけていた。「女手一つで子どもを育てるのは大変だろう」と、出会った時から気にしてはいたものの、ライが夏休みに入ったあたりから、瑠美の行動に異変があらわれ…。シングル家庭にひそむ危うさを描いた作品、『隣人のシングル親子が危うい』最終話をごらんください。

PIXTA

🔴【第1話から読む】隣人の異変。9歳の息子と若いシングルマザーの「危うい日常」

瑠美が会っていた男は、「彼氏」ではなく「愛人」だった。愛人と会うため、ライくんを放置しているのだと思ったサチ。忠告しようとするが、瑠美の真意は別のところにあると知る。彼女の打ち明ける、母親としての覚悟とは…?

「母親」としての真意とは

やけ酒 女性 疲れ 暗い PIXTA

「彼氏?あー、そう伝えてましたね。…ただの愛人です」

そう言った彼女の表情は、なんとも胸がいたくなるものだった。

私の知っている瑠美さんは、明るくてチャーミングな…どちらかというと、「パワフルな若者」という印象だった。でも、今、目の前にいる瑠美さんは、どこか自分の人生をあきらめているような…くたびれた、三十路手前の女だった。

「ここの部屋…あの人が用意してくれてるんで…。ごきげんとっておかないと」

「ライくんは…」

「知ってますよ…。ここが"あの人の家"ってことは。さすがに愛人だとは言ってないですけどね。はは…だから、私があの人のとこに行っても、もんく言わないんですよ」

「だからって…」

「心配してくれてるのは伝わりますけど、これは私たちのことなので。鹿目さんはだまっててくれると助かります。特に、近所の人たちには。あることないこと言われるの、めんどうくさいので」

「ここから先には立ち入れさせません」という、壁を下ろされた感覚だった。

シンママの覚悟

女性 後ろ姿  茶髪 暗い PIXTA

「まあ…不倫関係なんて…あたり前にそう長くつづくとも思ってないんで。だから今のうちにはたらいて、お金を貯めておかないと…。ライは大学までいかせてあげたいんですよねえ。私は…あいつなんかいなくても、ちゃんとライを育てられる…」

「あいつ」というのは、元夫のことだろうか。

私よりもずっと年下の彼女が、そこまで背負っていたなんて。何も知らないとはいえ、「子どもを放って、夜な夜な男とあそびまくっている母親」だという目で見ていた自分を、少しだけ恥ずかしく思った。

「じゃあ、支度しないといけないので。…心配かけてすみません」

「あ…でもじゃあ、私がライくんにごはんをつくってあげるのはいいですか?」

「え?…あぁ…私は何もお返しできませんが、それでもいいなら」

私は「もちろん」というふうに、せいいっぱいの笑顔を返し、会釈をして立ち去ろうとした。

「鹿目さん」

すると、瑠美さんが私を呼び止めた。

「…もう一個だけ、いいですか」

「もうちょっとだけラクになりたくて」と、彼女は今にも泣きそうな表情で言った。

手放したくない

小学生 男の子 笑顔 アップ  外   PIXTA

瑠美さんはうつむき、今にも泣き出しそうに肩をふるわせた。しかし、またパッと顔を上げると、彼女はゆっくりと話し始めた。

「さっき…すごい生意気なこと言ったと思うんです。"一人でもライを育てられる"って。でも本当は、離婚した後すぐは、ライのことを児童施設にあずけようかって思ってたんですよね…」

「え…?」

「たよれる親もいない…高校中退して、夜の仕事しかしてこなかった私が、一人で子ども育てるなんて…絶対ムリだって、自暴自棄になってたんです」

当時で言うと、瑠美さんは20歳。不安になるのは当然だ。私だって、同じ状況だったら不安でしかないだろう。

「でも、施設探しとか手つづきとかしてるうちに、なんか、"イヤだっ"て感情があふれてきて…。この子を手放したくないなって、急に覚悟が決まったんです」

「そうだったんですね…」

「そんな時、彼氏に出会って…家と少しの生活費は助けてあげるからって約束で、今の関係になったんです。こんなの良くないって分ってます。でも、当時の私には、ライを守る道がそれしか思いうかばなくて…」

おせっかいの未来

Ⓒママリ/画像の生成にAIを活用しています

「話してくれて、ありがとう。でも、ライくんとの時間は大切にしてほしい。そのために、私にもできることがあったら言ってください」

「…はい」

瑠美さんは弱々しくも、うれしそうな微笑を向けてくれた。

「そういえば…夫の職場で人が足りてないって話をしてたから…相談してみます。福利厚生もいいから、住宅も安く住めますよ。あと、ひとり親家庭を支援してくれる制度もあるので、一度、一緒に役所に相談しに行きましょう」

「え…本当ですか」

彼女は彼女なりの覚悟で、ライくんを思っていた。そのことが知れただけでも、私は氷川家におせっかいをして良かったと思う。

その後、瑠美さんは私の夫の職場で就職が決まった。愛人とはきっぱりと関係を切り、まじめに、コツコツとがんばっている。彼女の覚悟が本物だったことがよくわかった。

ライくんが中学生に上がった現在…いそがしいことに変わりはないが、瑠美さんも確実に家にいる時間がふえたようだ。

実は、瑠美さんが夫の会社に就職した時に引っ越したので、もう、「おトナリさん」ではない。でも、時々、わが家に顔を見せにきてくれる氷川親子は、今、とてもしあわせそうに笑っている。

🔴【第1話から読む】隣人の異変。9歳の息子と若いシングルマザーの「危うい日常」

【全話読む】
隣人のシングル親子が危うい

あとがき:見返りなんて求めずとも

こまっている人を目の前に手を差し伸べることは、時には「おせっかい」になる場合もあります。また、「見返り」を求めたり、自分を満たすためにする行為は、相手にとって迷惑なだけになってしまう場合も…。

サチは絶妙な距離感と、心から「助けたい」という思いで、自分のできる範囲を理解した上で、氷川親子に手を差し伸べました。それは瑠美の自立を助け、ライくんの笑顔を守る結果へとつながったのではないでしょうか。

今回のように、他人の家庭にどこまで介入するかむずかしいケースもあります。「自分にできること」と「相手が求めていること」にしっかり線を引いて接するサチの行動が、とても参考になりましたね。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

🔴【全話読む】隣人のシングル親子が危うい

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