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監修:清水なほみ

【医療監修】羊水検査でわかる胎児異常の可能性と疾患の種類

出生前診断や新型出生前診断で陽性が出た場合、診断の確定検査として行われるのが羊水検査です。検査を受けるか否かは自己判断となりますが、高い精度で胎児の染色体異常や遺伝子異常の診断が出るため、検査を受ける選択をする人も増えています。羊水検査を受けることでわかる胎児疾患の可能性や疾患の種類についてご紹介します。

PIXTA

羊水検査で胎児異常がわかる可能性

羊水検査は、胎児染色体異常や遺伝子異常を診断する確定的検査の一つで、妊娠15~16週以降に行われます。羊水の中には胎児の細胞が含まれており、羊水を採取することによって胎児染色体異常や遺伝子異常を調べることができます。

羊水検査の正確性はほぼ100%で、胎児染色体異常や遺伝子異常の有無が診断できます。検査は専門の医師や技師が行いますが、目視で確認しているため検査には限界があります。染色体の数や染色体の構造における大きな異常については確認できますが、目で見てもわかりにくい細かな異常は発見できないこともあります。

また、まれなケースですが胎児が正常な染色体と異常な染色体の両方を持っている「染色体モザイク」の場合があります。染色体モザイクは、羊水検査時に正常な染色体と異常な染色体両方が見つかれば診断が可能です。

しかし、片方の細胞が増え続ける、もしくは片方の細胞しか検出されないという場合は、妊娠中の羊水検査では異常を見つけることができず、出生後に初めて染色体異常と診断されます。

真性モザイクと偽性モザイク

染色体モザイクには、「真性モザイク」と「偽性モザイク」という二種類の型があります。胎児が正常な染色体と異常な染色体の両方を持っている場合を真性モザイクといい、異常な染色体を持つ細胞の割合によっては胎児が病気を持つ可能性があります。

偽性モザイクは、羊水を採取した後で細胞を培養する過程で起こるため、胎児には異常はありません。

真性モザイクか偽性モザイクかの診断は難しく一度の羊水検査では判明しないことがあるため、モザイクが疑われた場合は改めて羊水検査を行うことがあります。

出典元:

羊水検査でわかる疾患の種類

血液検査 PIXTA

羊水検査は、胎児染色体異常の中でも染色体の数の異常によるものと染色体の構造による異常を細かく判別することができます。検査でわかる胎児疾患の種類を詳しくみていきましょう。

染色体の数の異常

染色体は46本ありそれぞれに遺伝情報があります。44本は男女共通の常染色体と呼ばれ、残り2本は性染色体で男性がXY、女性がXXです。

染色体異常は44本の染色体の数が多かったり少なかったりする場合や、X染色体、Y染色体のうちの一つが欠けていたり、構造上の異常があったりする場合に起こります。染色体の数の異常によって起こる疾患は以下の通りです。

21トリソミー

21番染色体が三つあるタイプの染色体異常です。ダウン症候群の約95%を占めています。21トリソミーの場合、筋肉の緊張低下や発達に遅れが生じることがあります。合併症として、心疾患や消化器系疾患、甲状腺機能の低下などを合併することもあります。

18トリソミー

18トリソミーは、18番染色体が通常よりも1本多い3本あるタイプの染色体異常です。呼吸障害や心疾患などの内臓奇形や重度の発達の遅れがみられ、出生後も短命であるとされています。

13トリソミー

13トリソミーは、13番染色体が通常よりも1本多い3本ある染色体異常で、約一万人に一人の割合で起こります。心臓や脳の奇形や重度の発達の遅れがみられ、出生後も短命であるとされています。

ターナー症候群

ターナー症候群は、性別を決定する性染色体であるX染色体の一つが欠けている場合に起こる先天性の染色体異常です。低身長や首が短いといった特徴がみられます。女性であれば月経がこない、乳房の未発達といった症状が現れます。

クラインフェルター症候群

クラインフェルター症候群は、男性の性染色体であるY染色体に二つ以上のX染色体が存在する状態のことです。主な症状は精巣萎縮や無精子症などが挙げられ、乳房が女性のように膨らんでくることもあります。

染色体の構造の異常

超音波検査 PIXTA

染色体異常には、数の異常以外に染色体の構造異常による疾患もあります。

転座

転座には相互転座とロバートソン転座と呼ばれる型があります。相互転座は、異なる染色体の一部に切断が起こり染色体の断片が他の染色体に結合することを指します。染色体の数に増減があるわけではないため、見た目や健康的には何も異常がありません。

しかし精子や卵子を作る際に、必要な遺伝情報が不足している染色体ができる可能性があり、流産や不育症の原因にもなります。

ロバートソン転座は、2本の染色体が合わさって1本の染色体になることを指します。相互転座と同じく外見や健康には問題ありませんが、将来的に不妊や流産の原因となることがあります。

欠失

欠失とは染色体の一部に欠損が起こることを指します。何番の染色体が欠失するかによって症状が異なりますが、欠失が起こると個人差はあるものの、心疾患や発達の遅れなどいくつかの症状が現れる可能性があります。

開放性神経管奇形

超音波検査 PIXTA

開放性神経管奇形には、主に「開放性二分脊椎」と「無脳症」の二つの疾患があります。開放性二分脊椎とは、背骨の後ろ側にある椎弓(ついきゅう)の一部が欠損した状態で生まれてくる先天性の異常のことを指します。

無脳症は、神経管の閉鎖不全によって起こる症状で、脳組織の大部分が欠損している状態のことです。

出典元:

パートナーと十分な話し合いを

パートナー PIXTA

胎児の染色体異常や遺伝子異常の確定検査といわれる羊水検査といえども、的中率が100%というわけではありません。

非確定検査で陽性となった場合は、羊水検査を受けるかどうかパートナーと十分な話し合いをして納得した上で受けるようにしましょう。

記事の監修

ポートサイド女性総合クリニック〜ビバリータ〜 院長

清水なほみ

通常の婦人科診療のみならず、最新の脳科学×心理学×医学を統合的に駆使した診療を行う婦人科医。日本で100名しか習得者がいない、トランスフォーメーショナルコーチのテクニックを学び、診療の現場においても、3年間で延べ6000人の患者に同テクニックを用いて診療を行っている。
中学時代のいじめや研修医時代のうつ経験から、「病は気から」を科学的に解明するための研鑽を積む。何気ない会話の中で患者に気付きを与え、片頭痛やイライラをあっさり「忘れさせる」診療には定評がある。5分で病気の「本当の原因」を見抜くため、患者からは「先生は占い師ですか!」と驚かれる。

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