産後、働きたくても正社員で働けない…日本のママ達の就業率が低いのはなぜ?
日本の女性の就業率は外国に比べると低くて、出産後に正社員という形で働いている人は少ないという声を耳にすることがあります。
日本では女性が社会に出て働く機会が増えてきたとはいえ、出産後にフルタイムの正社員として働き続けることができているママはまだまだ少なくて、働きたくてもパート勤務や専業主婦という選択をすることになってしまうママもいらっしゃいますよね。
女性の就業率が低いと言われるのはどうしてなのでしょうか?これまでに女性、特に出産後の女性の就業に関する調査結果が内閣府によってまとめられているので、その資料を参考に紐解いていきたいと思います。
子育てと仕事を両立できる環境が整っていない
出産前に仕事を辞めた女性にその理由を尋ねてみると(複数回答)、「自分の手で子育てしたかった」との回答が53.6%と飛び抜けて多い。
しかし同時に、小さな子どもを持ちながら就業する環境が整備されていないことを示唆する回答も多く、「両立の自信がなかった」が32.8%、「就労・通勤時間の関係で子を持って働けない」が23.3%、「育休制度が使えない・使いづらい」が17.9%、「手助けしてくれる親族がいなかった」が13.7%、「子を持って働くことへの職場の無理解」が8.3%、「子どもの預け先がない」が6.4%となっている。 出典: www5.cao.go.jp
ママとなっても仕事を続けていくために必要な事の一つとしては、「子育てと仕事の両立」が真っ先に思い浮かぶことだと思います。
ママになってもすぐに職場復帰や、子育てと仕事の両立をされていらっしゃる方もいますが、0~3歳というような幼い子供がいる女性は仕事に就いている確率が低く、次いで、4~6歳の物心がつく頃の年齢の子供がいる子供がいる女性も仕事に就いている確率も低いことが内閣府の調査報告によって明らかになっています。
子供が小さいと周りから、そして、ママ自身も「小さいうちは一緒に過ごした方が…」という気持ちが芽生えて手がかからなくなる年齢までは子育てに専念することを選択する女性もいます。
しかしその一方で、働きたい気持ちはあっても、育休制度や時短勤務制度など勤務先で整備されていない等、小さな子どもを抱えながら働ける環境に置かれていないために、子育てと仕事の両立への自信が持てずに離職を選択せざるを得ない女性もいます。
ママが働くためには働いている間にママに代わって子供を見てくれる存在が必要ですし、子供は体調を崩しやすく年齢が小さいほど病院にお世話になる機会も多い訳ですが、保育園に入れず他に頼れる人も居なかったり、会社からの理解も得られにくかったりすると、両立したい気持ちがあっても難しいですよね。
育児休業の取得が困難で出産退職せざるを得ないケースも多い
出産退職した女性にその理由を尋ねたところ、17.9%が「育休制度が使えない・使いづらい」点を挙げている。したがって、育児休業の取得が容易であれば、出産退職者の一部は就業を継続した可能性がある。 出典: www5.cao.go.jp
働いている女性は出産する際に、その後の働き方の選択として退職するか、育休なしですぐに復帰するか、育休を取るかを選ぶことになります。
育休を取得して、その後職場復帰する女性も増えてきていますが、出産をきっかけに退職を選択する女性も増えています。退職を選択した理由の多くが、育休制度が使えなかったり、使いづらかったりということがあるようです。
制度として存在していても、実際その制度を使えるかどうかというのは職場に左右されてしまっていて、育休の取得が叶わずに退職せざるを得ない状況に置かれてしまう女性もいらっしゃると思います。
また、パートや派遣など出産前の雇用形態によって、そもそも育休が選択できる環境に無く退職を選択しなければならない女性もまた多いと思われます。
待機児童の問題
大都市では、入所希望児童数が受入可能児童数を上回る傾向にあり、2005年には1~2歳児を中心に全国で約2万3,000人の待機児童が存在する。
本項冒頭でも示したとおり、待機児童率の高い地域に居住する女性の就業確率は低い傾向にあり、このような状況では安心して職場に戻ることが難しいことを示している 出典: www5.cao.go.jp
特別の理由がない限り、育休を取得したママは1年後に職場復帰をすることになりますが、職場復帰後に働き方に悩むことも少なくありません。
夫婦共働きの場合、働いている間は子供の世話をすることができないので、保育園に子供を預けて仕事をすることになりますが、保育園に入れるとは限らない、いわゆる待機児童の問題に直面してしまう場合があります。
待機児童問題は人口が多い都市部などで毎年のように問題になっていますが、「0歳児の空きがない」という話をニュースで聞くことがあるように、子供の年齢が小さければ小さいほど待機児童は多く、実際に保育園に入りたくても入れることができずに職場復帰が難しい状況に置かれているママも多いかと思います。
また、行政の認可を受けている保育園に入れない場合等は認可外の保育施設を利用することも選択肢に入ると思うのですが、認可保育園と比べると保育料が高く、また、認可外の保育園によって、入園は申し込み順となっていることも多いため、場合によっては出産直後から保育園への申し込みをしなければいけない状況にならざるを得ないケースもあります。
ママが仕事をしている間の子供の保育をしてもらえる場所が見つからなかったり、子供の保育にかかる費用が払えそうな額ではなかったりという場合はママも働くことを諦めなければならなくなりますよね。
外国の女性達はどんな働き方をしているの?徹底検証!
職場復帰して働いているママもいる一方で、働きたくても働けないという状況に置かれているママ達も決して少なくなく、二極化しているようにも見える日本のママ達の状況ですが、他の国の働くママ達の状況はどのような感じなのか気になりますよね。
「子育てと仕事は両立できているの?」「出産後も希望する働き方ができているの?」など、外国のママ達はどんな働き方をしているのかを取り上げてみたいと思います。
1.北米・南米地域で女性の労働率No.1!カナダのママ達の場合
2012年の世界銀行の報告書で、北米・南米エリアでアメリカを抑えて女性の労働率が1番高いと報告されたカナダ。カナダのママ達はどんな働き方をしているのでしょうか。
雇用保険に加入していれば、有給育児休暇がお母さんなら1年ちょっと、お父さんなら35週ほどもらえるので活用している人も多いようです。また、フリーランスなど自宅で働く人も沢山いますし、赤ちゃんを職場に連れて来てもOKという会社も最近は増えてきています。 出典: www.sodatsu.com
まず、育児休業に関しては、雇用保険に加入していると有給の育児休業がママは約1年もらえるということでこの点は日本と似ていますが、パパも35週、約9か月もらえるというのは凄いですね。カナダでは、子育てはパパ・ママが一緒にするという意識が浸透しているのだそうです。
働き方については、子連れで仕事に行けるという選択肢があると、復帰までに保育園が決まらなくても、子供を近くで見ながら仕事ができますから、ママとしては安心できますよね。
2.復帰の際の権利が法律で認められている!オーストラリアのママ達の場合
出産・育児をする女性に対して有給育児休暇を認めることが、企業に対して義務づけられました。財源は政府として、期間中は企業を通して最低賃金額(週543ドル、約42,000円)が労働者へ支払われます。これはフルタイム・パートタイム社員に限らず、臨時従業員にも適応されます。
また、産休後職場復帰する際は、従業員は産休前と同じポジション、またはそれと同等レベルのポジションに復帰する権利が認められており、雇用主が復帰を断ることは法律で禁止されています。
また、フルタイムの正社員だった女性が産休後に育児との両立のためパートタイムでの就労を希望した場合も、雇用主が断るには、そのポジションがフルタイムである必要性を政府に証明しなくてはならないそうで、結果的に受け入れるケースが多いようです。 出典: www.innovations-i.com
オーストラリアはもともと女性の労働環境は後進的な立場だったそうですが、2011年には有給の育児休業の義務付けや職場復帰の際の女性の権利も法律で定められている為、労働環境の改革が行われているようです。
有給の育児休業が正社員だけに止まらず、パートや臨時の従業員にまで保証されているのは素晴らしいですよね。また、職場復帰の際のポジション問題は日本でも問題になることが多々ありますが、法律できちんと復帰できる権利が認められているのはとても大きなことだと思います。
3.共働きが当たり前!シンガポールのママ達の場合
シンガポールでは共働きのご夫婦が当たり前なのだそうです。シンガポールには20歳前後に2年の兵役制度が男性にはあり、女性と比べると仕事のキャリアにブランクが生じることが多く、女性のエリート職は男性よりも高収入であることが多いため、仕事を続けるケースが多いのだそうです。
また、「育児は夫婦だけでは無理」が大前提で制度が整っているのだそうです。
フィリピン、インドネシア、ミャンマーなどから来たメイドを雇う優遇制度があり、月5万~6万円ほどで雇うことができます。
また、多くのシンガポール人は35歳になるとHDB(公団住宅)を安価で購入することができます。そして親元の近くに購入する場合は、さらに割り引きされる制度があります。これによって共働き世代は、子どもがいても祖父母世代に面倒を見てもらうことができるのです。 出典: dual.nikkei.co.jp
メイドさんに家事などを任せることができると、家事へ割く時間が減る分、ママも安心して仕事など他の事に専念することができますよね。
また、公団住宅の割引制度が確立しているのは良いですよね。もともと、シンガポールは祖父母世代が子供の面倒をみたりするのは日常よくあることなのだとか。全く知らない人に預けるよりも、身内に見てもらえる方が気持ち的にちょっと安心感が増しますよね。
4.子育てと仕事の両立は当たり前!中国のママ達の場合
女性たちの働き方で気になるといえば、お隣の国の中国。今もなお経済成長と続けている中国で働くママ達はどんな感じで働いているのかと調べてみると、思わず羨ましく思ってしまうような環境でバリバリと働いている女性が多いようです。
日本よりも「家族」のつながりが強い中国では、一般的に「出産後の子育ては、祖父母が行う」という意識がある。女性は出産後も仕事を続けるのが普通であり、授乳以外の子育て部分は祖父母の仕事だ。そして子育ては退職後の祖父母の大きな楽しみの一つでもある。 出典: dual.nikkei.co.jp
授乳以外の子育ては全部おじいちゃんおばあちゃんが担当というのは驚きですよね。子供ができるまでは別居で、出産後は親と同居している方々も多いそうです。
また、住み込みの保母さんを雇っている家庭もあるそうで、共働きの家庭だと十分に雇える程度の料金のため、雇っている人も増えているのだとか。住み込みということで24時間一緒に育ててくれるので、初めての出産だと有り難いですよね。また、食事や掃除など家事全般を手伝ってくれるというのは嬉しいですよね。
5.子育てしやすい環境整備されている!ノルウェーのママ達の場合
北欧3か国は福祉や子育て対策が充実しているイメージがありますよね。その中でもノルウェーは子育て支援が充実していることで有名です。
妊娠している女性は、予定日の3週間前から休暇に入ることが定められており、給与の80%にあたる手当を受け取りながら57週の休暇を取得するか、100%を受け取りながら47週の休暇を取得するか、どちらかを選べます。有給休暇が終わったら、無給の育児休暇を取得する人も少なくありません。 出典: www.sodatsu.com
給与の80%受け取りで約14か月、給与の100%受け取りでも約11か月の休暇、そのどちらかを選べるというのは凄いですよね。日本でも休暇による給付金はありますが、休暇の約半年で67%の受取額になってしまうので貰えるのは有り難いものの、もう少し金額が増えると家計に嬉しいなと思ってしまいますよね。
また、育児休業を夫婦で取得できるということですが、取得の仕方も3歳までの間で自由に使うことができるというのは有り難いですよね。
ママが輝いて働くためには子育てと仕事を両立しやすい環境は必要不可欠
日本のママ達の就業率が低いのはなぜ?という話から、カナダ・オーストラリア・シンガポール・中国・ノルウェーと世界5か国の働くママ達の働き方を見てきた訳ですが、子育てと仕事が両立できる環境にママ達が置かれているかどうかというのは重要なポイントではないかと感じました。
子育てに対する家族のサポートは勿論なんですが、制度や環境整備での国や行政のサポート、そして職場の理解やサポートはママ達が働くためにはとても大切です。
働きたいママ達が働きやすくなるように、また、今働いているママ達がもっと働きやすくなるような働き方ができる環境が整うことを期待したいですね。