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記事提供:スゴいい保育

子どもが病気になった。ベテラン保育者も知らない病児保育の現実と希望

一言に保育と言っても保育も色々、関わり方も人それぞれ。読者の方の保育にまつわるエピソードをご紹介する「保育とわたし」。今回はご自身が病児保育に従事する保育者の方のエピソードです。

20年以上保育に従事しているが預かるのは健康な子どものみ。病児保育へ配属になったが、子育て経験がないため病気になった子どもを預かるのは初めて。そこで目の当たりにした病児保育の現実と希望とは。

私は20年以上保育所勤務をしてきました。基本的には元気な子どもを保護者に代わって保育することが前提なため、保育中に38度の熱が出たり、下痢をしたり、元気がないと保護者に連絡をして迎えに来ていただいていました。子どもたちが集団で過ごしているため他児への感染防止を優先するからです。
しかし連絡をしてもすぐには迎えに来られない保護者もいました。なんとか都合をつけて迎えに来られる保護者もいました。それでも子どもたちを感染から守るためには仕方がないと思っていました。
そう思って保育していた私が、病児保育施設に異動することになったと聞いた時は正直びっくりしました。私は保育所での勤務経験は長くても子育てをした経験がありません。保育所で元気に過ごす子どもの姿しか知りません。病気で辛い思いをしている子どもを知りません。ですから病児保育に携わることになった時は不安な気持ちでいっぱいでした。

私は病児保育施設に異動し勤務するまで、病気の子どもは保護者が看護することが望ましいと考えていました。私自身が小さい頃病気になった時に、母が看護してくれた記憶がいつまでも残っているからです。病気になると普段と違って勉強しなくても叱られるどころか、好きなものを食べても、好きなだけマンガを読んでも、好きなだけテレビをみても、好きなだけ布団で横になっていても、叱られることがありませんでした。そして側で母が優しく見守ってくれているという安心感がありました。側にいなくても台所で食事の準備をする後ろ姿を見て近くに母がいるという安心感がありました。
ですから病気の時は保護者が看護する事が子どものためにとっていいことだと思っていました。

しかし実際に病児保育施設で勤務してみると、利用者の中には祖父母が他県にいるため困っている、兄弟共にインフルエンザになってしまい2週間も続けて休めない、看護師・教員など専門職のため急には休めない、仕事の面接に行きたいのに子どもが熱を出してしまい困っている、など数々の困っている保護者に出会いました。また、保護者は朝早くから夜遅くまで週6日間仕事に行かなければ仕事を失うことになってしまう、だから休むことができないという厳しい現状を知りました。

仕事のために泣いている我が子を申し訳なく置いていく保護者の気持ちがわかるため、子どもたちが少しでも楽しかった、元気になったという気持ちになって欲しいと保育に携わってきました。実際に迎えに来られた保護者から本当に助かりました、子どもが楽しかったと言っていたのでまた利用したい、などの声を聞いた時には少しではあったけれども役立てたことが嬉しかったです。
もし、保育所での勤務しか経験していなければ病児保育の厳しい現状を目の当たりにして、なんとか保護者の力になりたいと思うことはなかったでしょう。

最後になりますが私の感じたことを述べたいと思います。少子化対策をいくらしても、保護者が子どもの具合が悪くなっても仕事を休みにくい社会では、本当の子育て支援にならないのではないかと思います。私が小さい頃は近所の子どもたちが集まって遊び、近所の大人が困った時は助けてくれ、間違ったことをしているときは叱ってくれました。それは子どもだけでなく保護者も困った時に近所の方が助けてくれました。しかし現在は近所での付き合いが薄く、核家族化している中で、困った時にどうすることもできない保護者が多くいると思われるので、安心して仕事をしながら子育て出来る社会になるまでの間は病児保育が必要だと思います。そしていつの日か子どもだけでなく保護者も安心して暮らせる社会になって欲しい、そう思っています。 ※1

(登場する場所・名前・所属などは編集部により架空のものに差し替えています。)

親御さんのエピソードや声を聞くことはあっても、保育者の生の声を聞くことはあまりないですよね。20年のベテランの方でも知らない保育の世界があることに保育が多様で奥深い仕事であることがわかります。また社会を支える重要な仕事であることも。待機児童問題が世間を騒がせていますが、保育園に預けられたとしても、子どもが体調を崩すという当たり前のことで、仕事を続けられなくなる人がいる。それをなんとかしたいと思う保育者がいる。それを支えられる社会にしていきたいですね。

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本記事は必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて、医師その他の専門家に相談するなどご自身の責任と判断により適切に対応くださいますようお願いいたします。なお、記事内の写真・動画は編集部にて撮影したもの、または掲載許可をいただいたものです。

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