「保活」をテーマにしたアンケートが実施されました
育休中のママや再度仕事を始めたいと思っているママが行うものの一つ、通称「保活」。主婦に特化した人材サービス「しゅふJOB」の調査機関・しゅふJOB総研が、保活をテーマに働くママたちへアンケート調査を行いました。「保育園不足」「待機児童の増加」などが叫ばれている昨今、働く主婦の皆さんは保活をどのように行い、どんなことを感じているのでしょう。
全体、世代別双方の結果を踏まえながら、保活の実態に迫っていきます。
調査対象
- 調査手法:インターネットリサーチ(無記名式)
- 有効回答者数:650名
- 調査実施日:2019年1月30日(水)~2019年2月6日(水)
- 調査対象者:ビースタイル登録者/求人媒体「しゅふJOBパート」登録者
アンケートの回答結果を紹介
今回行われたアンケートの結果で印象的だったのは、世代別によって回答内容の割合が大きく違っていることでした。特に30代以下の回答と、50代以上の回答で顕著だったことからも、保活を取り巻く環境や考え方が一気に様変わりしたといえるのではないかと思います。
働くママとは切っても切れない保活に関するアンケート結果を、ここからは一つずつ見ていきます。
保活を行った経験が「ある」44.0%
保活経験の有無に関する質問には、44%の人が「経験がある」と回答しました。
勤めている会社へ以前のように復帰するためには、両親・義両親に見てもらう選択肢が選べない場合、勤務中子供を預けられる保育園などに入園させる必要があります。入園チャンスのすそ野を広げるべく、まだ小さな子供を連れて一つでも多くの保育園へ見学に行く、情報収集のために園や役所へ何度も足を運ぶなど、懸命な活動を行っているようです。
一方、保活を行わなかった人たちからは「子供が小さいうちはそばにいてあげるべき」「とにかく保活は大変、というマイナスイメージが強くて行わなかった」といった意見が。そこまで保活へ一生懸命になりすぎなくてもよいのでは?と考えているママも少なからずいるようです。
- 厚生労働省「「保活」の実態に関する調査の結果 第3版」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/hokatsu-chousa_1.pdf,2019年3月14日最終閲覧)
保活経験の有無:年代別比較
次に、保活経験の有無を年代別に比較してみると、30代以下では「保活経験がある」と回答したのが約60%だったのに対し、50代以上では30代以下の半数に満たない25%という回答になりました。
女性労働者であることを理由に、男性労働者と差別的に取り扱うことを禁止する「男女雇用機会均等法」が施行されたのが1986年。女性の働き方や職場での処遇が大きく変わる転換期となりました。
今50代以上となる女性は、男女雇用機会均等法の施行前に働いていた方もおり、当時は寿退社や妊娠・出産を理由に退職勧告などがまだ行われていた頃。そのため、出産後保育園へ預けて働くという人が今よりも少ない可能性もあり、預けやすかった時代なのかもしれませんね。
現代では共働きを選択する世帯も多くなっています。その結果、保活経験者の割合もぐっと増えたと言ってよいのではないでしょうか。
まさに、それぞれの世代背景の影響が色濃く反映しているアンケート結果なのでは、と感じました。
- 厚生労働省「働く女性に関する対策の概況(平成15年1月~12月)」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/15d.pdf,2019年3月8日最終閲覧)
- 厚生労働省「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等(第9条)」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000141973.pdf,2019年3月12日最終閲覧)
保活した結果、「希望の施設に預けることができた」のは53.5%
保活経験がある人に、施設へ預けられたかどうかを尋ねたところ、「希望の施設に預けることができた」と回答した人が53.5%、「希望の施設ではないが預けることができた」と回答した人が24.8%という結果でした。二つの回答を合わせると、8割近い方が保育施設へ預けることができているようです。
反対に、2割を超える人が子供を預けることができず、結果として「仕事を辞めた」人が約5%、「現在も保活中」の人が7%もいる現状が浮き彫りに。都市部や人口が多い市町村の保育施設不足対策が、急ピッチで進められているとはいえ、まだまだ待機児童問題が解消したとは言いきれないようです。
また回答者からのコメントには、「2人目を考えたときにまた一緒の園へ入れるかなど悩みが増える」など、兄弟姉妹で別々の保育施設へ預ける可能性を心配する声も。「希望の施設ではないが預けることができた」という選択肢でさえ、満足できないという状況が発生しているようです。
保活結果の年代別比較と保活難易度
前述した問いの回答をさらに年代別で比較し、保活の難易度を指数値化した結果も発表されています。
「希望の施設に預けることができた」と回答した人のみが保活の成功者と考えた場合で見てみると、50代以上では34%の人が不満足な結果だったのに対し、40代では44.6%、30代以下では53.4%と、実に過半数以上の人が不満足な結果だったと回答。今どきの保活は、それ以前の年代よりも相対的に難易度が高いと言えるようです。
興味深いのが、「現在も保活中」と回答したのが、30代以下では11.9%なのに対し、50代以上では0%となっている点。保育園に入れなかった場合の現代と数十年前での選択肢の違いが顕著に出ています。併せて「預けることができず仕事を辞めた」と回答したのが30代以下では4.2%、50代以上ではおよそ2倍の8.5%という結果に。「保育園に落ちたら職場復帰するのは諦める」という考えは、現代では少数派であるということが言えそうです。
アンケートで寄せられた声を紹介
ここからは、アンケートのフリーコメントに寄せられた、保活に取り組んだ経験が「ある」と回答した人の声を抜粋して紹介します。
自分と同じ世代、働くママの切実な本音、皆さんはどう感じるでしょうか。
矛盾している現況が不満
なぜ働くのに、そこまでしなければ、ならないのか。女性活躍というが矛盾していると感じる。 ※1
保活はとにかく準備期間も、実際の活動も大変な思いをします。大きなおなかで動きづらい時期や生まれたての赤ちゃんを連れての園見学は、想像以上にハードなもの。
女性活躍という言葉がこれだけ叫ばれているのに、保育園の数やシステムが働きたいと考えている女性の理想に程遠いと、回答者の方のように大きな矛盾を感じざるを得ないですよね。
役所の丸投げ感にイラッ!
区役所に何度も足を運び、絶対大丈夫と言われ続け、結果は落選。「もっと恵まれてない方がいる。自助努力でなんとかして。」と言われ、憤りを感じた。 ※2
認可保育園の入園を希望する場合、自治体が管轄する役所とのやり取りが発生します。
少しでも不明点を無くしたい!なるべく認可保育園に入れてスムーズに職場復帰したい!という気持ちで役所に通いつめたのに、落選したらまるで丸投げをするかのような言い方をされてしまってはイラッとしてしまうのも無理はありません。
また、保活はITがこれだけ発達している世の中であるにもかかわらず、役所のサイトに掲載された保育園情報が見づらい、必要書類は役所の窓口へ提出などアナログな部分が非常に多く、ドライな対応をされてしまうことにも不満を感じる人は少なくないようです。
役所のうまく丸め込もうとする姿勢が許せない!
行政がうまく機能していないため、ひたすら時間はかかるし、あわよくば預けない方向にもっていこうとする対応に憤りを感じる。 ※3
役所の対応で憤りを感じた!という方のコメントをもう一つ紹介します。時間がかかるだけでもイライラは募るのに、気づけば保育園へ預けなくていい方向へ話を持って行く役所の人の対応は許せませんね!
役所の人も、同じような要望を述べる人たちばかりを対応していて大変なのはもちろん分かりますが、保活をしているママたちにとって認可園入園への唯一の窓口。一生懸命になってしまうのは当たり前だよな…と感じてしまいます。
保活のためにかかるお金が…
とにかくお金がかかるので、貯金を切り崩したのだが、最終的に、出産前よりかなり収入が減ったので、将来が不安。 ※4
保活をしている人の中には、認証保育園へ入る点数を確保するためフルタイムのベビーシッターを雇う、一度認可外保育園へ入園させる、などの選択肢を選ぶ人も決して少なくありません。
ベビーシッター代、認可外保育園代共に決して安いとは言えない金額なので、家計に少なからず影響してしまうのもつらいところ。
筆者の友人にも認可外の保育園へ子供を通わせている人がいますが、「ときどき、保育料を稼ぐために仕事へ行っている気持ちになって、やるせなくなるときがある…」とこぼしていました。
保活をもうやりたくないから2人目は諦めました
保活をしなければ行けないことがそもそも問題。希望すれば入れるような体制にすべき。無償化より先に待機児童を解決しないと不公平感がさらに増す。とにかく子育て家庭の負担が大きく、二度とやりたくないので子供を複数持つのを諦めました(30代:正社員) ※5
こちらの方は、2度も保活をしたくないから2人目の子供を考えるのを諦めた、とコメントしています。
大変な思いをして保育園へ子供を入園させたのに、2人目以降の子供を保育園へ入れたい、となった場合にはまた1から保活をスタートさせないとなりません。保活をしたとしてもきょうだいそろって同じ保育園へ入園できる保証が無いとなると、2人目の妊娠を躊躇してしまうのも、至極当然かもしれません。
もう少し柔軟な対応をしてもらえ、気軽に保育園へ通わせられる環境であればいいのに…、と思わずにはいられません。
幼児教育無償化よりも、保育園全入を希望
幼児教育無償化よりも、保育園全入を保証してほしいです。 ※6
2019年10月から幼児教育・保育無償化が本決定し、現在制度実施のための準備が進められています。
字面だけ見ると、「保育料がタダになる!」と手放しで喜びたくなるところですが、実は対象年齢が3~5歳の子供がいる世帯という条件付き。そして、幼稚園&保育所と認可外保育施設では金額上限の有無に差も。残念ながら全ての子育て世帯が平等だと感じられるような制度ではないようです。
「そもそも保育園に入れていない子供には何の恩恵も無い…。まずは待機児童問題を最優先で解決するような政策を取ってほしい」と感じる保活中のママも少なくありません。
- 厚生労働省「幼児教育・保育の無償化について」(https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000361066.pdf,2019年3月12日最終閲覧)
働くために無理をしないとならないのがきつい
働きたいのに働けない、無認可に入れて自分の給与以上に払い割に合わないと感じつつ、小学1年になると保育園以上に厳しい環境になった。 ※7
保育園入園には、基本的には「親が働いている」ということが大前提です。
さまざまな理由で出産前に仕事を辞めた後、子供の手が離れてきたタイミングで「フルタイムで仕事をしたいから保育園に子供を預けたい」と思っても、認可保育園はもとより、住んでいる地域によっては認可外保育園の入園も難しい場合があります。コメントを寄せている方のように、自分の給与以上の高い保育料を支払わないと通えない保育園しか選べなかった、というケースも。
働きたいのに預け先が確保できないから働けない、保育料の支払いのために仕事をするような現状。それでいて女性の社会進出が声高に叫ばれているのは、矛盾以外のなにものでもないように感じます。
早生まれの子供が圧倒的に条件が不利なのが不満です
産まれた月により成長度合いが違うのに、4月一斉入園という線引きにそもそも無理があると思っている。 ※8
認可保育園は4月に一斉入園という流れが基本的。そのため1月1日~4月1日が誕生日の早生まれの子は、1歳になってから入園をさせるケースが多くなります。しかし、1歳児クラスへの入園は高倍率。かといって、0歳児クラスへ入園も入園可能な保育園が限られており、保活に関して不利であるとされています。
保活をするママへの負担がいかに大きいかを、痛感せずにはいられません。
- 厚生労働省「あなたも取れる!育休&産休」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/31.pdf,2019年3月14日最終閲覧)
- 厚生労働省「「保活」の実態に関する調査の結果」平成28年7月28日公表(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/hokatsu-chousa_1.pdf,2019年3月14日最終閲覧)
- キッズライン「保活の年間スケジュール」(https://kidsline.me/hokatsu/contents/about_schedules,2019年3月15日最終閲覧)
子供が大きくなるまでは子育てに集中できるような世の中になってほしい
子供が大きくなるまでは子育てに集中出来るような世の中になれば、保活などというくだらない活動をせずに済むと思います ※9
少子高齢化が顕著になり、働き手が慢性的に不足する将来を見据えて、現在の日本では女性がもっと働きやすい環境を整備すべき!と声が高まっています。
先日、「子連れ出勤制度推進」のニュースに対し賛否両論が巻き起こったのは、皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか。残念ながら現在の日本企業で、企業内保育園が完備されている、万が一のときはテレワーク出勤などを選べるフレキシブルな出勤形態を取り入れているようなところは、ほんの少数。
女性の社会進出をもっと推進したいのであれば、勤務時間中は仕事に専念、そして育児中は育児に集中できる環境(企業体質や保育所数の充実)を整えていくことも並行して行われてほしい、と筆者は感じます。
- 東京新聞TOKYOWeb「「母親の負担 増すだけ」 国推進の「子連れ出勤」物議醸す」(https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201902/CK2019020202000173.html,2019年3月14日最終閲覧)
- 厚生労働省「平成 26 年度 認可外保育施設の現況取りまとめ」(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000112872.pdf,2019年3月14日最終閲覧)
保活に神経をすり減らすことがないような社会になってほしい
希望の保育園に、必ず入れるようになると良いと思う。本当に保育園に入れたいお母さん達は、保活に神経をすり減らしていて大変そうでした。育児に集中させて欲しい ※10
今まで記述してきた通り、現代の保活は20年程前と比較しても非常に困難度が増し、母親は精神的にも肉体的にも疲労してしまうようなものとなっています。
保活がここまで大変なものになったのにはさまざまな事柄が原因となっているので、「○○さえ解決すればすべてうまくいく!」ということにはなりません。しかし、現状が少しずつでも改善されていく社会の流れになっていったらよいな、と筆者は思います。
問題点も多い保活。どのように行っていくかよく考えてみましょう
時代とともに女性の働き方・生き方がずいぶんと様変わりしたにもかかわらず、残念ながら子育て世代への支援のあり方は今現在も不十分。問題点も多く、働く女性全員が満足できるとは言い難い状況です。だからこそ、保活を行う際は自分自身でどのように進めていくのかを見極める必要があるのでは、と筆者自身は思います。
形態が複数ある保育施設からどこを選択するか、何歳から保育園へ通わせるのか、自宅から近い保育園を選ぶか、それとも勤務先に近い保育園を選ぶのか。しっかりと情報収集をし、それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、子供、自分自身、家族にとってよりベターな選択肢を選ぶことが、保活を早く終わらせてスムーズに職場復帰する近道なのではないでしょうか。
ぜひ焦らず落ち着いて保活を進めていってくださいね。