戸籍とは
戸籍とは、人が生まれてから亡くなるまでの親族関係を記録し証明するもの。具体的には個人の氏名や生年月日、家族との続柄などが登録されています。
基本的に戸籍に入れるのは「夫婦とその子供」の2世代だけです。婚姻関係がない状態で生まれた子のことを非嫡出子(ひちゃくしゅつし)といいますが、もし母親が出生届を出したらその子は母親の戸籍に入ります。母親が両親と同じ戸籍に入っていた場合は、子の出生時に戸籍が分かれて新たに「母親と子供」の戸籍が作られます。
父親がその子を「認知」しないと、子の戸籍に父親の氏名が記載されるようにはなりません。養育費の支払いや法定相続人など法律上の親子関係が成り立つには、父親からの認知が必要なのです。
認知とは
「親が子を認知する」とは、具体的には認知届を出すことを指します。
父親が非嫡出子を自分の子供として認知すると、誕生時までさかのぼって法律上の親子関係が成立し、さまざまな権利や義務が生じます。子供が成人するまで養育費を支払わなければいけないだけでなく、子供が父親の法定相続人に追加されます。
なお、認知後も基本的には親権は母親にあります。ただし、父と母とで協議し、「親権管理権届」を提出すれば、父親が親権者となることも可能です。
認知の方法
認知の方法には、大きく分けると以下の種類があります。父親が自らの意志で認知したかそうでないかで分かれるともいえます。
- 任意認知
- 強制認知
任意認知
任意認知とは、婚姻関係にない父親と母親との間に生まれた子あるいは胎児を、父親が自分の子であると認めることです。
父親か子どちらか本籍地の市区町村に父親自身が認知届を出すことで手続きが完了します。認知する子が胎児の場合、「胎児認知」と呼ぶこともあります。
任意認知は父親の意志によって行われ、基本的には母親や子自身の同意は不要です。ただし、胎児認知の場合は母親の同意が、子が成人している場合は本人の同意が必要です。
強制認知
強制認知とは、婚姻関係にない父親と母親との間に生まれた子を、父親が自分の子として認めないときにとられる手段です。
子本人あるいは母親(厳密には子、子の直系卑属、法定代理人)が家庭裁判所に対して調停、審判、裁判を申し立てます。父親の住所地にある家庭裁判所に「認知調停申立書」を提出する必要があります。
手続きの順序としてまず調停からで、いきなり訴訟を起こすことはできません。家庭裁判所に調停を申し立て、調停にも応じない場合、訴訟することになります。
認知届の書き方・出し方
ここでは任意認知の場合の手続き、つまり認知届の書き方や出し方について解説します。
認知届に必要なもの
まずは次のものを用意します。届け出先の市区町村によって多少の違いはありますが、たいてい以下のものが必要になると考えてください。
認知届は市区町村の役所に行くと無料でもらえるほか、ウェブサイトから書式をダウンロードできるところもあるので調べてみましょう。
- 認知届
- 届出人(認知する人)の印鑑
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 認知する父親と認知される子の戸籍謄本(届け先が本籍地でない場合のみ)
- 認知承諾書(認知される子が胎児もしくは成人している場合)
認知届の書き方
認知届の書き方は次のとおり。記入欄ごとに注意点を挙げました。
1.氏名・生年月日
認知される子と認知する父親それぞれについて、氏名と生年月日、続柄を記入します。
2.住所
認知される子と認知する父親それぞれについて、住民登録をしている住所を記入します。世帯主の氏名も忘れずに。
3.本籍
認知される子と認知する父親それぞれについて、本籍の住所を記入。筆頭者の氏名も書きます。
4.認知の種別
今回は任意認知という想定なので、「任意認知」のチェックボックスに印をつけます。
5.子の母
母親の氏名と生年月日、本籍の住所、筆頭者の氏名を記入します。
6.その他
「未成年の子を認知する」「胎児を認知する」などの記載あり。当てはまるチェックボックスに印をつけます。
7.届出人
「父」のチェックボックスに印をつけ、認知する父親自身の住所、本籍の住所と筆頭者の氏名、署名と印鑑、生年月日を記入します。
認知届の提出先
認知届は基本的に、認知する父親あるいは認知される子の本籍地か所在地の役所に提出します。ただし、胎児認知の場合は届け出先が限定され、母親の本籍地のみになります。また、母親が外国籍なら胎児の母の住所地に届け出ます。
なお繰り返しになりますが、認知届は認知する父親自身が提出しなければいけません。
認知届にかかる費用
市区町村の役所に提出する際の費用は基本的に無料です。特に心配はありません。
一人で悩まず相談しよう
事情があって未婚の母として出産する方もいるでしょう。残念ながらまだまだ偏見がある世の中、ご自身とお子さんが大変な思いをしないためにも、必要な手続きを欠かさないようにしましょう。
とはいえ、認知届や家庭裁判所とのやりとりなどは一人で抱え込むと苦しい思いをするかもしれません。頼れる人には頼って相談してみましょう。もし身近にそんな人がいない場合は、お近くの司法書士事務所等でも相談に乗ってくれるようなので、是非一度調べてみてくださいね。