妊娠・出産費用は思いのほか自己負担がある
現在、妊娠・出産にかかるお金には一部公費負担がなされています。
妊婦健診費用については公費で14回の助成があり、出産費用については健康保険から出産育児一時金42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産の場合は39万円)がもらえます。
ただ、これらの公的助成ですべて妊娠・出産費用をまかなえるわけではありません。
妊婦健診の受診票があっても「足が出る」
日本産婦人科医会の資料によると、妊婦健診に対する公費負担は自治体で異なり、全国平均は99,999円。最も多くて山口県の111,127円となり、最も少ないのは大阪府の39,813円です。
母子手帳にとじ込まれた受診票(補助券)を利用しても、その日の健診内容によっては「自腹」が発生します。また、妊娠の経過によって健診回数が計14回を超えたなら、15回め以降は自己負担となります。
ママたちが語るように、補助券を使ったとしても「足が出る」ことがありえるのです。
出産費用も「42万円」以内に収まるとは限らない
また出産時の分娩費用も、産院や分娩方法などによって差があるものです。
1人目は自然に陣痛がきて促進剤、吸引分娩になりました。
個室代1日1万2千円も含め入院5日間でトータル60万くらいでした。
2人目も同じ病院で個室、計画分娩、促進剤で入院4日間で65万くらいでした。
つまり、出産育児一時金の42万円でまかなえる場合もあれば、そうでない場合もあります。
自腹が発生する可能性を考えると、岸田氏の「出産費用をゼロに」はメリットがあるように思いますね。
- 日本産婦人科医会「日本産婦人科医会 記者懇談会」(http://www.jaog.or.jp/sep2012/know/kisyakon/24_090708_a.pdf,2020年9月10日最終閲覧)
- 医療法人社団 飯野病院「当院での妊婦健診項目」(http://www.iino-hospital.or.jp/ninken-ko.pdf,2020年9月10日最終閲覧)
- 医療法人仁雄会 穂高病院「出産費用と立会い」(https://hotaka-hospital.or.jp/childbirth/delivery,2020年9月10日最終閲覧)
- 全国健康保険協会「出産育児一時金について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r310/,2020年9月10日最終閲覧)
- 厚生労働省「出産育児一時金の支給額・支払方法について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shussan/index.html,2020年9月10日最終閲覧)
- 東京都福祉保健局「妊娠がわかったら」(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/kenkou/syussan.html,2020年9月10日最終閲覧)
- 厚生労働省「妊婦健診Q&A」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken13/dl/02.pdf,2020年9月10日最終閲覧)
岸田氏の発言に対してママリユーザーの意見は?
それでは、少子化対策として「出産費用ゼロ」はどれだけ有効なのでしょうか?出産費用がゼロになったら、妊娠・出産・育児への不安は解消されるのでしょうか?
ママリユーザーの意見をいくつか抜粋してみました。
妊娠・出産にお金がかかるのは事実であるし、負担が軽くなるのはありがたい。けれど、決して出産がゴールではない。産後ワンオペ育児にならないようなサポートがあったり、将来の学費負担が軽減されたりするなど、子どもを育てていくうえでかかる費用のほうの心配。そんな声が目立ちました。
国の少子化対策にこれからも注目しよう
今回の総裁選では、「出産費用の負担減」だけでなく「不妊治療の保険適用」など、少子化対策にかかわる発言が目立つように思います。
今まさに妊娠・出産・育児に向き合う方々からすれば、期待する気持ちがある一方「本当に実現するのか」と疑問に思ってしまう面もあるでしょう。
今回の総裁選にとどまらず、継続的に少子化対策が前進していくか注目したいですね。