Ⓒママリ
🔴【第1話から読む】不妊治療中、ママになったかつての友人との再会
不妊治療を続けているうちに友人であるユウコと再会したマキ。しかしユウコは自身の息子に対し過激な言葉をぶつけていました。あの姿が忘れられないまま、再び二人は産婦人科で再会します。
友人が自分の子にかけた言葉を忘れられない
ユウコの家から帰宅した後、私は何も手につかなくなっていました。帰ってくる夫のために夕飯を作ろうとしても、ふとあの光景が頭に浮かびます。床に寝転がって泣き叫ぶユウタくん。彼の頭を叩きながら吐かれた、あの冷たい言葉。
「こんな子、産まなきゃよかった……!」
子育ては、きっと想像を絶する大変さがあるのでしょう。泣き止まない、話せない、癇癪を起こす……そんな日々の中で、感情を抑えきれなくなることもあるのかもしれません。だけど、あの叩き方は……あの言葉は……。やっぱり、普通じゃない。私にはどうしてもそう思えてしまいます。そんなとき、ユウコからメッセージが届きました。
「今日は来てくれてありがとう。見苦しいところを見せて、本当にごめん。久しぶりにマキと話せて、ちょっとホッとしたよ。また会おうね」
私は迷った末に、「こちらこそ、また会おう」とだけ返しました。他の言葉が思い浮かばず、どうしてもそうとしか返せなかったのです。
次に会ったのは、また病院の待合室でした。とくに待ち合わせしたわけではなく偶然ではあったのですが、ユウコは嬉しそうに近づいてきました。互いに呼ばれるのを待っている間、ぽつぽつと彼女が話し出しました。
虐待する母親の弱音
「うちの子、言葉がまだうまく使えなくて。聞き取りにくかったり、通じにくかったりしてさ。もう5歳なのに……。保育園でもいろいろ言われて、ほんとしんどい」
そういえば、あの日の訪問時にユウタくんが何かを話しているのは聞かなかった気がしました。そこで私は気になって、色々質問してみることにしました。
「検査とかは?」
「一応、小児科には行ってる。でも『個人差がありますね』って。それだけ」
ユウコは疲れた顔で言いました。私はそれ以外に質問、というか何を話したらいいか分からず黙ることしかできませんでした。
「ユウタ、最近ますます癇癪ひどくてさ……。私だって頑張ってるのに、なんでこんな思いしなきゃいけないんだろうって思っちゃうんだよね」
私はその時、思い切って口を開きました。
「ユウコ、この前のことだけど。ユウタくんに……あんなふうに怒鳴ったり、叩いたりするのは、よくないと思う」
「……あんたまで、私の頑張りを否定するの?」
ユウコの顔が、みるみるうちにこわばっていきました。それを見た途端「しまった」と思ったものの、時すでに遅しでした。
「……マキまで、私を責めるの?」
「責めたいわけじゃない。ただ、見ていて本当に心配になったの。あのままじゃ、ユウコも、ユウタくんも、つらいだけだと思う」
すると、ユウコの目にうっすら涙が浮かび、彼女は少し震える声で言いました。
「……あんたまで、私の頑張りを否定するの?誰にも頼れなくて、毎日寝る暇もなくて……。それでも育ててるんだよ、私は!」
私は何も言い返せませんでした。ユウコの怒りは、きっと悲鳴と紙一重だったのだと思います。
その日、私は家に帰って、ずっと考えていました。私はユウコの味方でいたい。でも、子どもを守ることを、見て見ぬふりしていいのか?私はこのまま「何もできなかった」ことにしてしまって、後悔しないだろうか。不妊治療で、子どもを持てるかどうかもわからない私。それでも、あの子の悲しい泣き声だけは、耳から離れない。そして――私は決意しました。
翌日、私は児童相談所に電話をかけました。どこに連絡すればいいのか、何を伝えればいいのかもわからないまま、震える声で「友人の子どもが……」と話し始めました。電話の向こうの女性――加藤さんは、私の話をていねいに聞いてくれました。私がどれだけ迷っていたか、どれだけ苦しんでいたか、それも含めてすべて受け止めてくれました。
「ご相談いただき、ありがとうございます。誰かが声を上げてくれることが、この子の未来を守ることにつながるんです」
その言葉に、私は救われるような気持ちがしました。私はただの部外者かもしれません。でも、それでも、やっぱり――見過ごすことはできなかったのです。
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あとがき:大切な友人だからこそ、見過ごすことはできない
やはりユウコを見過ごせず、児童相談所へと相談したマキ。ユウコのためを思っての行動であることが伝わりますが、彼女の反応が気になるところですね。
もともと優しい性格だったユウコが虐待に走ってしまった理由を突き止め、親子ともに笑顔になれるよう導いてくれる人が現れるとよいのですが…。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










