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両家顔合わせの場で、義父の奔放な態度と発言が場を凍らせる。母の怒りも爆発し、結婚への不安が募り始める──波乱の幕開け。
胸に広がる小さな違和感
「明日は顔合わせだね。私も緊張してるけど、意外とお父さんの方がガチガチかも」
「ははっ、そうなんだ。お義父さんって緊張しやすい方なんだっけ?」
ベッドに腰掛け通話する私、高橋彩花は電話越しの彼、岸本直樹と婚約。先日、私の両親への挨拶を済ませ、いよいよ明日には両家顔合わせを控えていました。
「そういえばさ、直樹のご両親ってどんな人なの?怖い?」
私は彼に質問しました。思い返すと、彼の口からご両親の話をあまり聞いたことがなかったのです。
「……ん〜どうだろう。親父は少し気難しいかな、ははっ……」
その時の彼の切り返しにはどこか歯切れが悪く、それまでと一転して声に影がかかったように感じました。けれど「仕事で疲れてるのかな」くらいに思い、その違和感を深く追求することはしませんでした。でもまさか、その違和感があんなことになるなんて……。
波乱の顔合わせと義父の振る舞い
翌日。母が「遅れるより早く着いて待ってた方がいい」と、彼より先に私たち家族が会場に到着していました。彼が予約してくれたのは立派な料亭で、車中から外観を眺めただけで圧倒されていました。
約束の時間の少し前になり、入り口で待っていると彼の姿が遠目に見えました。爽やかなスーツ姿と笑顔。だけど、その顔はどこか引き攣っているようにも見えました。「緊張しているのかな?」と思っていると、次第に彼の表情の強張りの理由がなんとなく分かってきました。それは彼の数歩後ろ、義父の装いでした。
「お待たせして申し訳ありません。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。こちら、僕の両親です」
ボサボサの髪、着崩れしたスーツ、はみ出したワイシャツ……。爽やかな好青年な彼とは対照的な義父の出立ちに、私たち家族は面食らいつつも義家族に挨拶しました。すると義父は、料亭の落ち着いた雰囲気にはそぐわない、豪快なしゃがれ声で話し始めました。
「いやこの度はどうも。おい直樹!早く受付済ませろ。モタモタするな」
「直樹、頼んだわよ〜。あ、どうも初めまして〜」
義父の雑な挨拶と彼への威圧的な態度に加えて、それを流す義母。早くも私たち家族は、義両親に対して難色を示し始めていました。
受付を済ませ、個室に入室すると、司会の誘導のもと会が進行。しかしその間も、会食を急かしたり、深いため息を吐くなど、義父の不遜な態度が目立ちました。横目に映る両親の表情は曇り、母にいたっては怪訝そうな表情が漏れ出ていました。特に、母は礼節や格式を重んじるタイプだったので、不機嫌になるのも納得でした。
向かいの席の彼は冷静を装うも、やはり気まずさを感じている様子。義母は平然と会の進行に従うのみ。全員平静を装うも、会が進むにつれて空気は確実に重くなっていきました。
会食に移る頃には、私たち家族と彼はゲンナリしていました。そのためか、会話は義父中心に回されることに。
「そちらもだとは思いますが、ウチも孫が楽しみでね〜。彩花ちゃん、頼むよ!」
「えっ、あ、はい!頑張ります!……」
孫を期待する親心が分からない訳ではないけれど、面と向かって放たれたその言葉は、私にとってプレッシャーでした。そして、義父は食事を口に入れたまま、続けて私たち家族に向かって話しました。
「もし子どもができなかったら、養子をもらうから!そのつもりで」
その言葉は暗に「お前と息子の結婚は子どもありきだ」と言われているように聞こえました。横目に映る父の複雑で切なそうな表情は、私の胸を締め付けました。
波乱の顔合わせを終え、モヤつきは残りつつもなんとか私たちの婚約を両家から認められ、少しホッとしました。
会終了間際、義父は思い出したように私たち家族に向け、軽い口調でこう言い放ちました。
「そういえば、ウチは結納金払わないから。ほら、その分新婚生活とかに回せるでしょ?」
悪びれもなく、むしろ気を利かせたと言わんばかりの表情を最後に、義父はそそくさと個室を後にしました。彼は申し訳なさそうに私たち家族に深々と頭を下げた後、義母とともに急いで義父のあとを追っていきました。取り残された私たち家族の間には、重苦しい空気と沈黙だけが残りました。
母の怒りと結婚への暗雲
帰りの車中。会話はなく、私もどう切り出せばいいか分かりませんでした。すると、ずっと窓の外を見ていた母が深く息を吸い込み、重い口を開きました。
「向こうのお父さんの態度……あれ、なんなの!?信じられない!大事な会で身なりはテキトーだし、結納金も勝手になしって、彩花を何だと思ってるの!?」
溜め込んでいた鬱憤を爆発させた母。その顔は鬼のように赤く紅潮していました。私と父、二人がかりで宥めつつ、私のモヤつきを母が代弁してくれているようで、ほんの少しだけ心が晴れた気がしました。しかし、嫁ぐ予定の義家族と対面し、私の今後の結婚生活に早くも暗雲が立ち込めました。
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あとがき:門出を揺るがす義父の影
本来であれば、両家が親しくなり未来を祝うための顔合わせ。しかし義父の言動はその空気を一変させ、むしろ両家の溝を浮き彫りにしました。母の怒りは当然でありながら、彩花にとっても「義家族との関係は険しい道になるかもしれない」という不安を強めるものでした。婚約の喜びと同時に訪れた重苦しい現実──これが後に続く義父との波乱の始まりだったのです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










