前沢里子(35歳)は、市役所で働く、一児の母。夫・信男は、趣味に没頭し、家事育児に無関心。ワンオペ育児の重圧から逃げるように、「不倫」という道に踏み込んでしまった里子。ある日、信男に不倫を追求され…。
趣味に没頭する夫とワンオペ育児
「お前、不倫してるだろ」
信男の声は、いつもよりずっと低く、冷たかった。突き出されたスマホ画面を見て、私は凍りついた。この日、私は何よりも大切な日々をうしなったのだ…。
私は前沢里子、35歳。長女気質で、人に頼ることが苦手だ。市役所で働く公務員で、結婚前は仕事一筋だった。結婚し、息子・マモルを産んでからは、仕事と育児の両立に奮闘する毎日…。いや、奮闘なんてかっこいいものじゃない。実際は、ただ必死に、毎日を食らいつくように生きているだけだった。
夫の信男は大学の同級生だった。卒業後は商社に勤めていて、出張が多く、家を空けることも多い。趣味はアウトドアやスポーツジム。自分の時間を何よりも大切にしている。
信男がマモルを愛しているのは分かる。信男もマモルと遊ぶ時間は楽しそうだ。マモルも、いつも強くてかっこいいパパが大好きだ。でも、育児や家事となると話は別…。ほとんど私に任せっきりで、正直、信男は「子育て」に関心がないようだった。
マモルが1歳になって、復職してからのワンオペ育児は、私の心を少しずつ蝕んでいった。
母親に向いてない…私の犯した過ち
保育園の送り迎え、ご飯の準備、お風呂、寝かしつけ…。
すべてが私の肩にかかっていた。信男は疲れて帰ってきても、自分の趣味のことで頭がいっぱいで、私の苦労には気づいていないようだった。一度、「少しは育児を手伝ってほしい」と伝えたことがある。
信男は一瞬、顔をくもらせたかと思うと、
「俺の方が稼いでるんだから、これくらいは当然だろ」
と吐き捨てた。その一言に、私の心は完全に閉じてしまった。
「なんで、私ばっかり…。子育てなんてしたくない。仕事をしてた方がラク」
いつしか、そんな考えが頭に浮かんでしまう自分がいた。
私は、「母親に向いていないんじゃないか」と毎日、自分を責めた。マモルの寝顔を見るたびに、「こんな母親でごめんね」と心の中であやまった。
育児中のつらさや孤独から逃げ出したくて、私はあることをしてしまった。
それは、不倫だった。
現実逃避から始まった不倫…
「ごめん、今日は残業になっちゃって」
信男との電話を切った後、私はスマートフォンを握りしめ、彼にメッセージを送る。
『今日、会える?』
彼からの返信を待つ間、私の心はわずかに高揚し、同時に、深い罪悪感に苛まれた。その二つの感情の狭間で、息をするのがやっとだった。
不倫は、私にとっての救いだった。
そこには、育児の疲れも、夫への不満も…すべてを忘れさせてくれる逃避の世界があった。
でも、そんな日々は長くは続かなかった。
ある日の夜、信男がいつもより早く出張から帰ってきた。私とマモルがリビングで遊んでいると、信男は無言で近寄ってきて、スマートフォンを私の目の前に突きつけた。
画面に表示されていたのは、私と彼がラブホテルに入っていく写真だった。
「お前、不倫してるだろ」
信男の声は、いつもよりずっと低く、冷たかった。まるで、氷でできた刃物のように、私の心を切り裂いた。私は何も言えなかった。
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あとがき:「不倫」という名の現実逃避
夫の家庭への無関心と、ワンオペ育児の重圧から逃れるため、不倫へと走ってしまった里子…。
ギリギリの精神状態で、なんとか自分を保つためだったのでしょう。自ら、「長女気質」と言っていることからも、元々、他者に頼ることが苦手で、自分一人で抱え込んでしまう性格のようですね。そして、あっさりと不倫は夫・信男にバレてしまいました。
目の前の苦しみから逃れるためとはいえ…犯した罪は里子に重くのしかかる様子が描かれていますね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










