🔴【1話から読む】夫の「不倫してるだろ?」その一言で、私の人生は音を立てて壊れた
不倫の代償に絶望しつつ、おなかの中に宿る命に重みを感じる、里子…。そんな里子に、きびしくも温かい言葉をかけてくれたのは、大学時代の先輩で…。
大学時代の先輩に相談…
信男は、家事育児に無関心で、自分の趣味を優先する人だった…。
残業も有給も、自分のためなら取れるのに、私や子どものことになると関心がない。私が家事育児で困っても、きげんが悪くなるだけだった…。
イヤイヤ期と夜泣きが重なり、毎日、夜中の2時3時まで、狂ったように泣き叫び、暴れ回るマモル…。私は疲れ果てていた。
となりで、すやすやと寝る夫に頼ることもできず、マモルと一緒に、泣きながら朝方までドライブをしたこともあった…。夫からしたら、私はただの家政婦。子どもは、ママよりパパっ子…。そんな現実がつらくて、悲しくて…。
私は逃げたのだ…。「母親でいること」からも「妻でいること」からも…。
マモルと離れてから、私は友人の千花さんに連絡をした。
千花さんは、大学時代のテニスサークルの先輩で、私をかわいがってくれた人だった。信男とも同じサークルだったため、信男のこともよく知っている。もちろん、結婚式にもきてくれた。
彼女は、私の話を親身になって聞いてくれた。
不倫で両親が離婚…先輩の過去
「里子から連絡がくるなんて!本当、連絡不精なとこ、学生時代から変わらないよねー」
千花さんの変わらない明るさに、私は胸がいっぱいになった。
「千花さん…私、離婚したの。マモルの親権を信男に取られちゃった…」
私は、自分の不倫から始まった一連のできごとをすべて話した。信男のモラハラ気質なところ…ワンオペ育児で悩んでいたこと、そして、不倫相手にも見放されたこと。
千花さんは、私の話を静かに聞いてくれた。
「里子の苦しみ、理解できるよ…。信男にも非はあると思う。あいつ、学生時代からえらそうだったもんねー。里子、よく頑張ってたわ」
千花さんは苦笑しながら、そう言って私に寄り添ってくれた。
「でもね、里子…。きびしいことを言うようだけど、不倫は…里子らしくなかったんじゃない?」
千花さんは私の目を見て、静かに続けた。
「私はね…実は、子どものころさ…父がモラハラ気質で、その逃避のためか、母が不倫したんだよね。それで、両親は離婚。兄と一緒に、父に引き取られたの」
「え…」
私は、初めて聞く、千花さんの過去におどろきを隠せなかった。
「父親としての愛は感じていたからさ。時に反抗しながらも、折り合いをつけて大人になった。で、母への思いは複雑でねー。幼いころに、『置いていった。捨てられた』という思いがあって…」
千花さんは、さみしそうな表情を浮かべ、沈黙をした後、話を続けた。
「それでも好きだったよ…。母なのでね。もし、私がマモルの立場なら、里子のおなかの子がうらやましいと思う。母親がそばにいてくれるからさ。マモルもきっと、ママを必要としているよ」
千花さんの言葉は、私の心を深く揺さぶった。
「サレ妻」で離婚した上司
「おばあちゃんは、子どもにとって『母親』とは、また少しちがうよね…。家事育児に関心のない旦那さんの元に、マモルを置いていった…その罪はやっぱり、いつまでもついてくると思うよ。けど、里子には、おなかの子への責任があるからね」
「千花さん」
「親権はなくとも、里子はマモルの母親だよ。いつか、マモルが里子の罪ごと受入れてくれる日がくるかもしれない…。その時に、誇れる人であってほしい」
千花さんの言葉は、私の心に深く突き刺さった。私は、自分のしたことの重さに、改めて気づかされた。
その夜、千花さんの言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。
私に母親になる資格なんてあるのだろうか…。 私は、マモルからは『母親』を、これから生まれてくる子からは、『父親』をうばってしまったのに…。この子を、本当にしあわせにできるのだろうか。
産んであげたいけど…。産むことすら、私のエゴなのではないか。私がしてしまった過ちは、一生かけて背負っていかなければならず、それを生まれてくる子にも背負わせてしまうのではないか。
翌朝、離婚の報告と産休の相談をするため、上司の杏さんに声をかけた。 離婚に産休…目まぐるしい状態の私に、杏さんはおどろいたような顔をしたが、すぐに優しく笑いかけてくれた。
「前沢さん、ランチでも行かない?」
杏さんは離婚経験者で、いわゆる「サレ妻」だったということを知っていた。
自分の不倫のせいで、マモルの親権をうしなったことを打ち明けるのは、怖かった。 でも、杏さんの優しいまなざしに、私はすべてを話してしまいたくなった。
🔴【続きを読む】「私が不倫して…」離婚報告したら、元サレ妻の上司がまさかの回答
あとがき:当事者の気持ち
大学の先輩に、不倫や離婚、妊娠のことを打ち明けた、里子…。里子は、最悪の事態になるまで、自分の悩みを誰にも相談できず、一人で抱え込んでいた様子ですね。そんな里子に、先輩は優しく寄り添いながら、自分も両親が離婚した「当事者」であった過去を語るのでした。
そんな先輩の言葉は、説得力と共に、里子に大切な気づきを与えます。マモルにとっては、唯一無二の『母親』であるという事実…。そして、そんなマモルにとって、これからは「誇れる人間」であってほしいという、先輩の願いが伝わってきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










