ごく普通の主婦さつき(29歳)は、夫と娘との平和な日常を送る一方で、SNSで目にする「経済的な余裕」に強い憧れを抱いていた。家計を気にせず、家族を安心させたいという願いが、やがて甘い投資話の罠へと彼女を誘い込む、最初の心の隙となる。
信じられないできごと
私はさつきといいます。29歳の主婦です。実は最近、大きな失敗をしました。SNSで知った甘い投資話に乗せられて、まんまと詐欺に遭ってしまったのです。
「まさか、私が?」
詐欺被害だなんて、もっと高齢の方が遭うものだと思っていました。正直、自分がこんな目に遭うなんて、夢にも思っていなかったのです。
私と同居している家族は夫と娘。夫の俊哉は31歳で、食品メーカーに勤める、ごく普通のサラリーマン。そして、2歳になる娘の「なお」は、毎日を笑顔と元気で満たしてくれる、私たちの宝物です。
「普通」の暮らしである現状
私たちの生活は、まあ、世間一般でいう「普通」。朝は俊哉を送り出し、なおが起きるまでの間に掃除と洗濯を済ませる。昼間はなおを連れて公園に行ったり、ママ友とお茶をしたり。夜は俊哉と三人で食卓を囲む。贅沢はできないけれど、毎月の生活費に困ることもなく、平和で満たされた日々を送っています。
でもね、そんな満たされた日常の裏で、私の中にはずっと、小さな、でも確かな「憧れ」があったんです。時々SNSで流れてくる「余裕のある暮らし」の投稿を見ると、胸が締め付けられるような羨ましさに襲われます。
「え、ハワイに1週間?いいなあ…」
「このブランドバッグ、新しいモデルだ」
もちろん、俊哉も家族旅行に連れて行ってくれるし、なおには必要なものは買ってあげています。でも、旅行に行くたびに「今月はちょっと引き締めなきゃね」なんて言って、家計簿と睨めっこするんです。それが嫌でした。
もっと、何も気にせず、なおの教育費の心配も、老後の心配もなく、俊哉が「あれ欲しい」と言ったときに、「いいよ、買ってあげようか?」ってサラリと言えるような、そんな経済的な「余裕」が欲しかった。
そんな憧れは、俊哉には言えませんでした。彼が頑張っているのを知っているからこそ、「不満があるの?」と思われるのが怖かった。だから、スマホの中の、キラキラした世界をただ眺める日々が続きました。
私なら大丈夫という過信
そんな私に、ある日、信じられないほど甘い「チャンス」が舞い込んできたんです。それは、私が日頃からフォローしていた女性のSNSアカウントからでした。このとき、私の中の「大丈夫」という過信が、一番の敵になるなんて、知る由もなかったんです。
「自分は絶対大丈夫」
そう思っていたのに、私は見事に、その罠に引っかかってしまったんです。これは、そんな私の、愚かで、でも切実だった失敗の記録です。
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あとがき:『普通』の裏に潜む、小さな羨望
さつきの抱える「憧れ」は、決して贅沢をしたいという単純なものではありません。それは、愛する家族の将来への「不安」から生まれています。今の生活に感謝しつつも、もしもの時に娘を守れるだけの経済力が欲しい。多くの主婦が共感する、この切実な願いこそが、詐欺師が狙う最大の弱点となります。
自分は大丈夫という過信と、誰にも言えない秘密の重さが、さつきの日常を徐々に侵食していく様子を描きました。この「秘密」が、これから彼女をどれほど苦しめることになるのか、読者の方にも感じ取っていただければ幸いです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










