🔴【第1話から読む】「経済的な余裕が欲しい」普通の主婦の心にあった“小さな隙間”|SNSで投資詐欺に騙された話
無料グループで具体的な投資指示が始まり、さつきは「たった10万円なら」と、生活費から資金を捻出し、仮想通貨を購入。しかし、すぐに指示は「海外の運用専門アプリ」への送金に切り替わって…。
300人という数に感覚がマヒ
LINEグループに入ってみると、そこにはすでに300人近い参加者がいました。みんな同じように、仮想通貨で10万円分を投資するだけでお金が増えたミオさんの華やかな生活と「無料で教えます」という言葉に惹かれた人たちです。
ミオさんは、グループ内で毎日、今日の相場状況や、「昨日も利益が出ました!」といった喜びの声を投稿していました。
私は、スマホを握りしめながら、本当に投資をするのか最後の悩みを抱えていました。今の暮らしでも生活できていないわけではない…でも、どうしてもリッチな暮らしをしてみたい。
時間とお金の余裕という誘惑
ミオさんの投稿で見る、時間のゆとり、場所の自由、そして何よりもお金の「余裕」。あれこそが、私が本当に欲しかったもののような気がしたんです。俊哉にもっと楽をさせてあげたい、なおにもっといろんな経験をさせてあげたい。その「希望」が、私の理性を麻痺させていきました。
(私にもできるかも。たった10万円なら、もし投資で少し減ってもすぐに取り返せる額だし)
そう、これが私を騙した最も強力な言い訳でした。全財産を注ぎ込む勇気はなかったけれど、ちょっと試してみる「お小遣い」の感覚で、つい手を出してしまったんです。
ミオさんのLINEで、いよいよ具体的な指示が来ました。
『まずは、日本の仮想通貨取引所で口座を開設してくださいね』
『そして、投資のスタート資金として、10万円分だけ仮想通貨を購入しましょう』
指示通り、私はすぐに口座を開設し、生活費の口座から10万円を振り込みました。指先に力を込めて「購入」ボタンを押す瞬間、心臓がドキドキと高鳴るのを感じました。
「よし、これで私も一歩踏み出した。リッチになれるかもしれない!」
踏み出した矢先の暗雲
しかし、ここから話は一気に複雑になります。ミオさんは私たちの仮想通貨をよくわからないアプリに送金するよう指示してきたのです。
『さて、ここからがノウハウです。皆さんが購入された仮想通貨を、私が指定する「運用専門アプリ」に送金しましょう。これが私の投資成功の秘密なんです』
ミオさんが送ってきたのは、聞いたこともない海外の仮想通貨運用アプリでした。
「え、これって、どうやるの?なんか難しそう…」
アプリの文字は全て英語。翻訳機能を使ってもチンプンカンプンです。ミオさんは「慣れれば大丈夫」と操作手順の画像とテキストを送ってきました。
私はそのアプリのことを調べもせず、妄信していたミオさんの指示通りに「運用アプリ」へ送金しました。操作が終わると、自分が開設した口座の残高は「ゼロ」になりました。
「これで、自動で運用してくれるんだよね…?」
そこで、私はふと立ち止まりました。このアプリ、解約の仕方が全くわからない。どこにも日本語のサポート窓口もない。もし、すぐに現金に戻したくなったらどうするんだろう?不安になり、ミオさんにDMを送りました。
『送金できました!ところで、もし途中で解約したい場合、どうすればいいですか?』
画面に表示されたのは、「既読」の文字。しかし、そこから何時間待っても、ミオさんからの返信はありませんでした。
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あとがき:『小さな一歩』が導く、絶望のゼロ
「たった10万円」という小さな数字が、理性を麻痺させる魔法の言葉でした。全財産ではないという安心感が、冷静な判断力を奪ってしまうのです。本話では、見知らぬ海外アプリ、複雑な送金手続きといった、詐欺の具体的な手口を描写しました。手続きの煩雑さが、被害者に「これは専門的なものだ」と誤解させる効果を持つのです。送金後に残高がゼロになった事実と、ミオからの返信が途絶えた「既読」の文字が、さつきの心を締め付ける不安の象徴となります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










