🔴【第1話から読む】「経済的な余裕が欲しい」普通の主婦の心にあった“小さな隙間”|SNSで投資詐欺に騙された話
ミオからの連絡が途絶え、さつきは不安のあまり自力で検索を開始。そこで、自分の状況が詐欺の手口と完全に一致することを知り、絶望して…。
嫌な予感が胸を過る
ミオさんからの返信が来ないまま、丸1日が過ぎました。
「ただ忙しいだけかな?それとも、すぐに解約の話なんてするから、嫌われちゃった?」
そんな風に、最初は自分を納得させようとしました。でも、振り込んだ直後から、私の気持ちは四六時中そわそわしっぱなしです。まるで、おなかの中に小石が一つ入っているような、重苦しい感覚が続きました。
なおの笑顔を見ても、心から笑えない。俊哉が帰ってきて「おかえり」と言っても、声が上ずってしまう。この秘密が、私と家族の間に見えない壁を作り始めていました。
意を決して、インターネットで検索を始めました。
「仮想通貨 運用アプリ 解約できない」
「SNS 投資 詐欺 女性」
恐る恐る、一つ一つキーワードを入れていくと、そこにはぞっとするような記事や体験談が並んでいました。
「送金先は、運営会社の実態がないダミーの取引所」
「解約しようとすると、手数料だの税金だの名目で、さらにお金を要求されます」
詐欺だと確信してしまう
頭が真っ白になりました。記事の内容が、私の今の状況と寸分違わず一致している。複雑な送金手続き、日本語が怪しいアプリ、そして、解約を申し出た途端の沈黙…。
「これは…詐欺だ」
絶望でした。私はすぐにミオさんのLINEに、改めて、強くメッセージを送りました。
『アプリの解約方法をすぐに教えてください。もし返信がないなら、警察に相談します』
しかし、LINEの通知は「既読」のまま。インスタのDMにも同じメッセージを送りましたが、そちらも「既読」で沈黙。そして、しばらくしてミオさんのインスタアカウントを見てみると、「このユーザーはいません」と表示されるようになりました。LINEのグループも、いつの間にか強制的に退会させられていました。
「やられた……」
あの10万円は、娘のなおのために使いたかった、ささやかだけど大事なお金。それが、あっという間に見知らぬ誰かの手に渡ってしまったのです。
覚悟を決めて夫に相談
その夜、私は涙が止まらなくなりました。家族の時間がもっといいものになれば、将来の不安を少しでもなくせれば、と思って信じたのに。信じたのは、キラキラした虚像だった。何日も、この事実を一人で抱え込みました。食欲もなく、頬はこけて、俊哉に「疲れてる?」と心配されるたびに、罪悪感で胸が張り裂けそうでした。
もう、無理でした。隠し通すことはできない。私は意を決し、俊哉が風呂から上がってくるのを待ちました。俊哉がリビングに戻ってきて、テレビを見始めた時、私は絞り出すような声で話しました。
「俊哉、私…、あなたに秘密で大変なことをしてしまったの…」
私がうつむいたまま、蚊の鳴くような声で、SNSでミオさんと出会った経緯、そして10万円を振り込んでしまったこと、連絡が取れなくなったこと、すべてを話しました。話している間、私はずっと俊哉が怒鳴りつけるのを覚悟していました。
「なんで勝手なことをしたんだ!」
「バカなことをするなよ」
と。しかし、俊哉は静かに、ただ静かに私の話を聞き終えると、そっと話し始めました。
「さつき。話してくれて、ありがとう。辛かったね、一人で抱えて」
俊哉は怒っていませんでした。その優しさが、逆に私の涙腺を崩壊させました。
「ごめん…なさい。ごめんなさい、私…」
「いいんだ。怒ってないよ」と俊哉は言いました。
「10万円は高い勉強代だったね。それより、さつきが何日も苦しんでいたことの方が、俺はよっぽどつらいよ」
俊哉の言葉は、私の心を救ってくれました。
🔴【続きを読む】投資詐欺に遭った妻→怒らない夫の一言で、主婦が心に誓ったこと|SNSで投資詐欺に騙された話
あとがき:夫の言葉により立ち直る機会を得る
詐欺被害者は「自分が馬鹿だった」という自責の念から、家族に言えない二重の苦しみを抱えます。さつきは俊哉の怒りを覚悟しますが、彼の「怒ってないよ。辛かったね」という言葉は、何よりも彼女を救う特効薬となりました。
金銭的な被害よりも、家族の信頼を失うことのほうが恐ろしい。俊哉の無償の愛と理解が、さつきを絶望の淵から引き戻し、立ち直るための土台となります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










