🔴【第1話から読む】「ご祝儀で返すから」弟夫婦への不安な貸し出し
結婚式直前、弟夫婦に頼まれて式費用60万円を立て替えた美雪。ご祝儀で返すと言われ安心したが、式後になっても返済の連絡がなく、不安を抱きながら弟に確認を始める。
晴れの日の安心と期待
式直前の費用問題に慌てたけれど、何とか無事に式が執り行われることとなった。天気は晴天。2人の門出を祝い、かつ2人を表すような、そんな空模様だった。親族控室では両家の両親が楽しげに、それでいて感慨深いように話に花を咲かせていた。その様子を見て、私は少し安堵していた。
今朝、私たち夫婦の車に両親を乗せてきた時、父はまだどこか結婚式費用のことを引きずっている様子だった。やけに私たち夫婦に「すまなかったね」「ありがとう」と口にしていたのですが、にこやかな義両親の人柄もあってか、どうにか持ち直したようだ。
式には多くの人が足を運んでいて、懐かしい弟の友人の姿もちらほら見えた。ゲストの人数の多さを確認しながら、貸した結婚式費用もご祝儀でちゃんと返ってくるだろうと、静かに胸をなで下ろしていた。
結婚式と披露宴はそれぞれ問題なく進行し、温かなお祝いムードが会場全体を包んでいた。満面の笑みや感涙する弟夫婦の姿に私も胸を打たれ、感動的な式は幕を閉じた。
連絡が来ない不安
結婚式を終えてから3日、結婚式費用の返済について、未だ弟からの連絡はなかった。結婚式直後は夫婦水入らずの時間が必要だろうとこちらからの連絡は控えていた。けれど、式から1ヶ月後には新婚旅行に行くと聞いていたこともあり、それまでには流石に返済してほしいと思っていた。
式から3日しか経っていないタイミングで少しためらいを感じたけれど、私は弟にメッセージを送信した。
「結婚式直後でごめん。貸したお金だけど、いつ頃返せそう?」
午前中に送ったメッセージへの返信は、その日の夜に送られてきた。
「今、愛梨とお礼状の準備とかしててちょっと忙しいんだ……落ち着いたらこっちから連絡するね」
弟からの返信に若干のモヤモヤを感じつつ、自身の結婚式直後を思い出し、忙しいのは仕方ないと「分かった。連絡待ってるよ」とだけ返信した。結婚式当日に撫で下ろしたはずの胸が、静かにざわつき始めるのを感じた。
それからというもの、一向に弟からの連絡はなかった。確かにゲストは多かったから、名簿やお礼状作成も大変だろうけど、大金を貸している以上、流石に何かしらの連絡をもらえないと不安は募るばかりだった。
義妹の拒否と現実
式から5日が経った頃、痺れを切らした私は弟に電話をかけた。
「あ、健太、ごめんね。急かすようで悪いんだけど、お金は……まだ返せそうにない?」
遠慮がちに私が訊ねると、弟は困った様子で重い口を開いた。
「いや、実はさ……愛梨が返すのに渋ってて……」
「えっ……?愛梨さんが?」
弟の口から聞かされた話は私にとって、衝撃的だった。私の中で、結婚挨拶の礼儀正しい印象が残っていた義妹の愛梨さん。けれど、そんな彼女が借りたお金の返済を渋るなんて……。
「そう……もちろん返済の催促はしてるんだけど……。もう少し話してみるからさ」
弟は頼りない声でそう話す。どこか歯切れの悪い話し方に引っ掛かりつつも、弟にさらに訊ねた。
「愛梨さんのことは……とりあえず分かった。でもお金は返してもらわないと困る。ご祝儀は足りたんでしょ?」
「実は……ご祝儀の管理は愛梨に任せてて。もう口座に預けて、引き出しは愛梨しかできないんだ……」
そう弟に告げられ、私は貸した大金が返ってこない可能性が極めて高いことを悟った。義妹の想定外の言動と頼りない弟の電話越しの情けない声に、今更私は大金を貸したことを後悔した。
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あとがき:信頼が揺らぎ始めた瞬間
幸せな結婚式が終わり、全てが丸く収まったはず。なのに、返済に触れると空気が変わってしまいます。連絡が来ない理由を「忙しいから」と自分に言い聞かせても、心の奥には不安がこびりつくようです。
信じたくないけれど、愛梨さんが返済を渋るという弟の言葉に、胸のざわつきは隠せません。家族だからこその信頼が、少しずつ崩れていく予感がしますね…。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










