里美は夫・和樹と生後間もない息子・怜人との3人暮らし。職場時代の友人・奈美子を信頼していたが、里美が不妊治療の末に妊娠したことを報告した途端、奈美子さんの声は冷たくなり、決定的な違和感を覚える。
幸せな日々に見え隠れする悩み
「もう少し早く気づいていれば」
今になって、そう後悔しても遅いんだけど、元同僚・奈美子さんとの関係を振り返るとき、どうしてもその言葉が頭をよぎってしまう。
私は里美。夫の和樹と、生後間もない長男の怜人との3人暮らしだ。私たちはごく普通のアパートに住んでいて、和樹は31歳。少し年上で頼りになる私の大切な人。出会いは職場だった。私は結婚を機にやめたけど彼は今も勤めていて、役職にも就いている。
元同僚・奈美子さんは29歳で、息子さんの健くんが4歳。彼女はシングルマザーとして、健くんと2人で暮らしている。
シングルマザーの友人との出会いは職場だった
奈美子さんとの出会いは、まだ私が会社で働いていたころに遡る。部署は違えど、休憩時間や仕事終わりに話すようになり、すぐに意気投合した。奈美子さんは私より年上で、人生経験も豊富に見えたから、私にとっては頼れるお姉さんだった。サバサバしていて明るく、仕事の悩みや将来のことを相談すると、いつも的確なアドバイスをくれた。
特に、健くんの話をする時は本当に優しいお母さんの顔になって。当時の私は、奈美子さんを心から信頼していたし、彼女も私を大切に思ってくれていると信じていた。
私と和樹が結婚した後も、私たちは連絡を取り続けていた。和樹は奈美子さんとも面識がある。「奈美子さんは頑張り屋さんだよね」と、和樹も彼女のことを評価していた。
私が会社を辞めてからも、私たちは時々ランチをしたり、メールや電話で近況を報告し合ったりと、友人としての関係は続いていた。
妊娠判明したころの違和感
そんな奈美子さんに、少しずつ違和感を覚え始めたのは、ちょうど去年の今ごろ。私の妊娠が判明したころからだった。
私にとって、この妊娠は本当に待ち望んだものだった。子どもをなかなか授かれず、不妊治療を続けていた中、やっと、やっと小さな命を授かったのだ。妊娠がわかった瞬間は、喜びで涙が止まらなかった。
私はその喜びを、一番に報告したいと思い、奈美子さんに電話をした。
「奈美子さん!私、妊娠したよ!本当に、やっと!」
電話口で弾む私の声に、彼女は少しの沈黙の後、いつもの明るいトーンとは違う、どこか冷たい声で言ったんだ。
「そっか。良かったじゃん」
その冷たい感覚すらある一言にちょっとした違和感を覚えたけれど、ただ疲れているのかな、と思う程度だった。でも、このあと私は奈美子さんについて「おかしい」と感じるできごとを数多く体験することになる。
あんなに仲が良かった奈美子さんとの関係が思ってもみない方向に進んでいくなんて、この時はまだ知る由もなかったのだ―――。
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あとがき: 善意の仮面
里美にとって奈美子さんは、仕事の悩みや人生経験を相談できる頼れる存在でした。サバサバとした明るい性格と、シングルマザーとして健気に頑張る姿に、里美は心から共感し、信頼していたはずです。しかし、里美の「幸せな妊娠」が、二人の関係を試す試金石となってしまいました。
この違和感は、奈美子さんの「善意」の裏に隠された、里美には想像もつかないような強い感情が芽生え始めたサインだったのかもしれません。信頼から始まった関係が、これからどう歪んでいくのか、里美の不安は募ります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










