🔴【第1話から読む】夫が出社せず…警察からの一本の電話で、地獄が開いた|夫が痴漢で捕まりました
このお話のできごとが起きたのは、さかのぼること25年前。主人公・佳奈さんは20歳の若いママとして、家族と幸せに暮らしていました。しかし、ある日1本の電話がかかってきて…。
「行方不明の夫」から始まった崩壊
私は佳奈。現在45歳の主婦です。子どもは、佳文という息子が一人。これは、私が人生で一番苦しみ、一番戦った時の話です。
私は20歳の時に、5歳年上の文也と結婚しました。いわゆる授かり婚で、私は結婚式からすぐ出産し、専業主婦として家庭に入りました。文也のお母さんはとても厳しい方で、授かり婚は当たり前に反対され、私は息子をたぶらかした女として嫌われていました。
でも、私は優しく真面目な文也と夫婦になり、子どもを授かれたことがうれしく、とても幸せな日々でしたですが、その幸せはあっという間に壊れてしまいました。その優しく真面目な夫、文也の起こした事件によって。
その日の午前10時ごろ。私は洗濯物を干そうとしていました。いつもは静かな家の固定電話が、突然けたたましく鳴りました。受話器を取ると、会社名を名乗る男性の声。
「ご主人が、出社されておりませんで…、携帯にもつながらず、何かご存じありませんか?」
喉がぎゅっと締まったようになりました。
「えっ…、今朝はいつも通り出て行ったんですが…」
自分でも、声が震えているのが分かりました。平謝りして、電話を切ったあと、事故?事件?どこかで倒れた…?悪い予感ばかりが全身を巡り、息が浅くなりました。佳文が「まま?」と顔を覗き込んできます。
私はすぐ文也の携帯電話に電話しました。ですが、出ません。携帯電話を握りしめて家の中を行ったり来たりするばかりでした。何をすればいいのかわからないまま、時間だけが過ぎていきました。
警察からの電話と、信じたくない現実
昼を過ぎたころ、再び固定電話が鳴りました。胸が、ドクンと跳ねました。絶対に良くない電話だ…。そう確信してしまうような音でした。おそるおそる電話を取ると、受話器の向こうから聞こえたのは、冷静な声です。
「警察署ですが、奥様でいらっしゃいますか?」
やっぱり、文也は事件に巻き込まれたんだ!ですが、続く言葉に心臓が止まりそうになりました。
「ご主人が、痴漢の容疑で身柄を確保されています」
この人、何を言ってるの?痴漢?文也が?そんなはずない。真面目で、優しくて、のんびり屋で、紳士で…。何度頭の中で否定しても、電話の相手の声は現実を告げ続けました。私は膝が抜けそうになり、壁にもたれかかりました。
続く言葉は、耳に入りませんでした。受話器をしっかり耳に押し当てているのに、何ひとつ意味のある言葉にはならず、全身が熱くなり、心臓はバクバクしています。
「痴漢」その2文字は衝撃的で、信じがたい言葉でした。警察や痴漢という言葉はあまりにも文也に似合わず、ただただ動揺し、うろたえるばかりでした。文也が痴漢?まさか!そんなわけない、たまたま手が当たってしまったんだ。真面目で優しい人です。義両親に守られて大切に育てられた彼が、痴漢なんてありえない。
気づけば、私は子どもの靴下を片方だけ履かせたまま、上着のボタンは掛け違えたまま、家を飛び出しました。警察署までの道のりは、ひどく長く感じました。
電車の窓に映るのは自分の顔なのに、知らない人に責められているように見えて、目をそらしながら乗っていました。警察署に着き、薄暗い面会室に通されると、ガラス越しに文也が座っていました。
面会室で突きつけられた“答え”
彼の目はうつろで、私の姿を見ると、視線を落とし、
「…ごめん」
と、ぼそりとつぶやきました。私は瞬時に、文也が本当に痴漢をしたのだと悟りました。私は電車の中で、文也のいろいろな姿を想像していたのです。「痴漢などしていない」と叫ぶ姿、泣きながら「手が当たってしまっただけなのに」と訴える姿…。実際にはそのどれでもなく、痴漢が事実である、と私に告げるだけの姿。
「嘘…。うそ…。うそ!!」
思わず叫んでいました。文也はうつむき、膝に置いた手を固く握っているだけでした。その様子は、私をさらに混乱させました。泣けばいいのか、怒ればいいのか、事情を聞けばいいのかもわかりません。
文也はうつむいて所在なさげに座っている…。それだけで、おかしくなりそうでした。
帰宅するとすぐに、佳文にごはんを作りました。おむつも替えました。午後にする予定だった家事を終わらせ、ソファーに倒れこむようにして座りました。電話を受けてからやっと座ることができ、深く息を吸いました。その瞬間、涙があふれて止まりませんでした。
どうしよう…、それより、なんで文也が痴漢を…?
そうだ、会社、どうしよう…?なんて言えば…。あっ、お義母さんたちになんて言えば…。
私ははじめて恐怖で体がガタガタと震えるという経験をしました。
私、どうしたらいいの…?―――
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あとがき:おだやかな日々は、音もなく崩れ去った
佳奈さんが受け取った現実は、怒りよりも先に「理解が追いつかない衝撃」でした。優しい夫が加害者になるという事実は、これまで積み上げてきた日常を一瞬で壊してしまいます。動揺しながらも家事や育児を続ける姿は、崩れそうな心を必死で支える母としての強さにも見えます。ここから佳奈さんの本当の闘いが始まります。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










