🔴【第1話から読む】結婚・出産しても消えない。「信仰なき者は不幸」母の呪いが、私を蝕む理由
産後間もないすみれに、母は教団のイベントへの参加を強要しようとする。断っても、「守護が必要」と、聞く耳を持たず、かつての相談ごとさえ、信仰を正当化するために利用される。母の善意に潜む支配欲に、すみれは深い絶望とうら切りを感じていき…。
「宗教イベント」に、生後一か月の孫を連れ出そうとし…
「もしもし…お母さん?」
「すみれ! なかなか出ないから心配したわよ。今ね、支部の先生と美鈴ちゃんの鑑定についてお話ししてたの」
寝室のドアを閉め、声をひそめて応対します。母の声ははずんでいました。彼女にとって、これは「娘のための善意」なのだと、その声色だけで分かってしまいます。
「……鑑定って何? 美鈴は元気だよ」
「それだけじゃ足りないの。人生の節目節目で徳をつまないと!それでね、来週、大きなイベントがあるの。美鈴ちゃんを連れて、顔だけでも出しに来ない?」
「ムリだよ!まだ、産後一か月だよ? 外出だって控えてる時期なのに…」
私は、せいいっぱいの拒絶を言葉に込めました。
「やめて」と言っても、届かない私の言葉
しかし、母には届きません。
「あら、会場は空調も整っているし、みんな、美鈴ちゃんを祝福したいって言ってるわ。先生も、今、行けばこの子の将来に大きなご加護があるって……」
「お母さん、もうやめて!前にも言ったよね? 私はもう、そういう活動には参加しないって」
私の声が少しふるえます。結婚が決まった時も、妊娠がわかった時もそうでした。
お祝いの言葉よりも先に、「これでやっと入会する決心がつくわね」という言葉がとんできたのです。
「すみれ…あなたは、親の心、子知らずね。あなたがぶじに結婚できたのも、子宝に恵まれたのも…私が、お祈りし続けてきたからなのよ?」
「……それは、新平さんと私の努力や、周りの助けがあったからでしょ」
「それもすべて導きなの! 妊娠中に、赤ちゃんの発育が悪いって泣きついてきた時だって、私が先生に写真を送って、お祓いしてもらったから持ち直したのよ!」
夫にはこわくて話せない…
あの時、不安でたまらなくて、母にもらした一言…。
それを「お祓いの材料」にされた時の絶望感を、母はみじんも理解していません。私の弱みを、宗教の正しさを証明するための道具として使われたような、うら切られたような気持ち…。
「写真は勝手に送らないでって言ったよね……」
「結果的に良くなったんだから、感謝しなさい。すみれ、あなたももう母親になったんだから、この子のために、何が一番大切か…もう一度、よく考えなさい」
一方的に電話を切られ、私はくらい部屋で立ち尽くしました。母のことはきらいになりたくない。でも、電話が来るたびに、私の平穏な生活が侵食されていく。
「おーい、すみれ? 寝た?」
ろうかから、新平の声が聞こえます。私はあわてて涙をぬぐい、むりやり笑顔を作りました。
「……うん、今、寝るところ」
新平…もし、彼にすべてを話したら、彼は私の家族をどう思うだろう。
さげすまれるのではないか…。美鈴を守るために、私と距離を置くのではないか。そんな恐怖が、私の口をかたく閉ざさせていました。
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あとがき:踏みにじられた心の聖域
弱っている時に差し伸べられる手が、必ずしも救いとは限りません。
自分の不安を、「お祓いの材料」にされた すみれさんの絶望は、計り知れないものです。親にとっての正解が、子にとっての正解とは限らない…。信じたいものを信じる自由はあっても、それを他者に強要した瞬間、それは、愛ではなく「支配」へと変貌してしまいます。
新平にウソをつき続けている すみれさんが、秘密を抱えきれなくなってきているのが伝わってきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










