🔴【第1話から読む】小1息子のサッカーチーム選びで、夫の【体育会系スイッチ】がONに…|体育会系こじらせパパ
亘が選んだのは、プロを輩出することを目指す指導者がいる地域の強豪クラブチーム。入会初日から達也は周りのレベルに圧倒されるが、亘は「怯むな」と期待をかけて―――。
夫が選んだチームは「ガチ勢」だった
夫がクラブチーム選びで重視したのは、コーチ陣の質、練習のハードさ、そして何よりも「生徒たちの真剣度」だった。結果、わが家が住む地域で、常にタイトルを争う一番強いクラブチームに決まったの。
「このクラブは指導者が本気でプロを育てようとしてる。それに応えるだけの熱意がないなら、金と時間のムダだからな」
入会が決まってからも、亘の口癖は変わらなかった。まるで、達也のサッカーへの情熱が試されているような雰囲気で、息が詰まると思った。
レベルの高すぎる練習に圧倒
入会初日の練習見学は、私たち親子にとって、強烈な洗礼となった。
達也と同じ小学1年生の子どもたちだというのに、そのプレーは尋常じゃなかった。パスは正確で、スピードも力強い。みんなが目を血走らせてボールを追いかけ、声が枯れるほど叫び合っている。達也が今まで通っていた「お遊び教室」とは、次元が違った。
「わぁ……すごい」
私は思わず、達也の隣で声を漏らした。隣の達也は、キラキラした目でフィールドを見つめているけれど、その瞳の奥には、ほんのわずかだけど、恐怖のようなものが宿っているように見えた。
「おい達也、見てみろ。あれが本気ってやつだ。みんなうまいだろう?お前もあの中に入れ。怯むなよ」
亘は興奮した様子で、達也の肩をたたく。その大きな手が、達也の小さな体をさらに小さく見せた。美香子は、その時、周りの大人たちにも圧倒されていた。
保護者の皆さんも、真剣そのもの。お母さんたちはビデオカメラを構え、お父さんたちは身振り手振りで子どもに指示を出している。みんな、わが子がこのチームのレギュラーとして、将来プロになることを夢見ているようだった。
自分の夢をわが子に託す夫
達也は、入会当初はまだ、その緊張感を楽しんでいるようだったの。
「パパ!あのシュートかっこよかったね!僕もできるようになりたい!」
「おう!そのためには、今の100倍練習しないとダメだぞ」
亘は、達也の頑張る姿を見て、まるで自分の夢をもう一度追いかけているかのように目を輝かせていた。そんな達也は、サッカーの強豪校に進学しながらもレギュラーを掴めないまま引退した過去があるという。その悔しさが、今、達也の背中に乗り移っているのだろうか。
夫の厳しいスタンスは、達也への期待の裏返しだとも理解できた。でも、繊細な達也にとって、この強すぎる期待とプレッシャーは、あまりにも重すぎたのかもしれない。
練習が始まって数週間。達也は必死に食らいついていたけれど、周りのレベルについていくことはできていなかった。そして試合の日。達也にもほんの少し出場のチャンスが与えられた。
「いいか、達也。試合は練習と違う。全力で、がむしゃらにやれ。パパが見てるぞ」
亘はそう言って、達也の背中を力強く押した。その言葉は、達也の心に火をつけたのか、それとも、とどめの一撃となったのか。私には、そのどちらとも判別がつかなかった。
ただ、この日から、達也のサッカーに対する態度が、少しずつ、確実に変わっていくのを感じていたのよ。不安と重圧が、達也の小さな肩にのしかかっているのが、痛いほど伝わってくるほどに―――。
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あとがき:「本気」の次元が違う
「お遊び」と「ガチ」のチームでは、空気も指導も保護者の熱量も全く違います。達也にとって、強豪チームの環境は憧れでもあり、同時に逃げ出したくなるほどの重圧でもあったでしょう。達也の瞳の奥に宿る「恐怖」を美香子は感じ取っていますが、亘の情熱的な「期待」を前に、口を挟めずにいるのが伝わってきます。
この「期待」は、亘が達也を愛している証拠でもありますが、それは達也自身のキャパシティを超えた重荷になっていくことを予感させます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










