🔴【第1話から読む】小1息子のサッカーチーム選びで、夫の【体育会系スイッチ】がONに…|体育会系こじらせパパ
強豪サッカークラブへの入会3か月後、達也は周りのレベルについていけず、試合で「どうせできない」と動かなくなる。試合後、亘は達也に怒鳴り散らし、達也はどんどん自信をなくしてしまい…。
自信を失っていくわが子
クラブチームに入会し3か月が経ったころ、達也の様子は目に見えておかしくなっていた。楽しそうな表情は消え、試合になると足が固まったように立ち尽くしてしまう。
「ねぇ、今のどうしたの?なんでボール取りに行かなかった?」
ある試合中、ハーフタイムに私が思わず達也に聞くと、達也は下を向いたまま、小さな声で答えた。
「だって、どうせ僕にはできないから」
周りの子は本当にうまくて、達也がボールに触る前に、あっという間にかわされてしまう。だから、達也は諦め始める。どうせ取れないなら、動かない方が安全、競り負けたりミスをしたりすると亘に叱られるからと思っているのかもしれない。
そうなれば仲間も達也にはパスを出さないし、もちろんシュートなんてできない。トレーニングの時間はそれなりに頑張っているし上達もしていると思うけれど、試合になると動けないのだ。
私は毎回試合を見るたびに、イライラが募った。それでも達也なりの頑張りを認めてあげたくて「大丈夫」「達也にはできるって、ママが知ってるよ」という言葉をかけていた。
夫の叱責が強すぎる
しかし、亘は達也への寄り添いなんて一切ない。ある日の試合後、車に戻るなり、達也は亘の怒鳴り声の標的になった。
「おい、達也、お前やる気あるの?何のためにここに来てるんだよ!」
亘の声は、駐車場に響き渡る。周りの保護者がちらっとこちらを見るのが分かって、私は恥ずかしくて顔が上げられない。達也は後部座席で縮こまり、目線は窓の外。完全にフリーズしている。
「亘、達也も頑張ってるんだから、そんな怒鳴らなくてもいいと思う…」
「頑張ってる?どこが?サッカーやっててボールに触りにいかないなんて、頑張りも何もねえだろ?」
亘は、がむしゃらに頑張る周囲の子と達也を比べているのだと思う。達也は繊細で動き始めがゆっくりなところがあるけれど、何も考えていないわけではないし、もちろんやる気がないわけではないのに。
(あなたには達也の良さが分からないだけ!)
心の中でそう叫んでも、口に出せなかった。
夫のプレッシャーに委縮するわが子
亘は強豪校で、努力が認められない、活躍できない悔しさを、誰よりも知っているはずなのに。その悔しさが、今、達也に向けられている。自分が達成できなかった夢を、達也が放棄しているように見えて、耐えられないんじゃないか、と思った。
達也はただただ、自分の自信を失っていくだけ。
「もう、サッカー辞めちゃおうかな」
ある日、達也がぼそっと言った言葉を、私はどうやって亘に伝えればいいのか、途方に暮れていた。私は達也の繊細さを理解しているつもりでも、自分のイライラを抑えきれずにいる。
そして亘は、自分の過去の傷を達也の姿に重ねて、怒鳴り散らすことしかできない。この負の連鎖は、一体いつまで続くのだろうか―――。
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あとがき:動けない子と、できない父
達也が試合で動けなくなったのは、自己防衛の手段だったのでしょう。繊細な子にとって、挑戦して失敗するよりも、「動かない」ことで傷つくことを避ける方が安全だと体が判断してしまったのです。
一方、亘の怒鳴り声は、達也の不甲斐なさに対するものではなく、過去の自分に対する怒りの投影だと美香子は理解していることがうかがえます。わが子に過去の自分を投影してしまっている父親が、これ以上暴走しないと良いのですが…。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










