🔴【第1話から読む】小1息子のサッカーチーム選びで、夫の【体育会系スイッチ】がONに…|体育会系こじらせパパ
公園での練習中、達也は年上の上手な子との1対1に惨敗し、泣きながら逃げ出す。亘は「逃げるやつに資格はない」「金と時間の無駄」と達也のいる部屋へ向けて静かに暴言を吐いてしまい…。
偶然クラブチームの子と練習をすることに
日曜日の午後。私は達也の気持ちを少しでも軽くしてあげたいと思い、公園に連れ出した。家族でのラフな時間なら、達也もサッカーを楽しむことができていた。
「前よりボールが強くなったね」
「ドリブルも速くなったね」
達也の変化をほめてあげると、うれしそうにしていた。達也はやっぱり、サッカーが好きなのだ。
「達也いいか、トラップしたら、すぐにドリブル!そうだ!いいじゃん!」
亘の大きな声が響く中、達也はぎこちないながらもボールを追っていた。その時だった。
「あれ、達也!」
公園の奥から、見慣れたユニフォームを着た少年が現れた。達也が通うクラブチームの1つ上の学年のお兄ちゃん、翔太くんだった。翔太くんは明るい子で、達也にも優しく話しかけてくれた。
「俺も一緒にやりたい!達也、一緒にやろうよ」
その様子を見て、亘はうれしそうだった。
「先輩に胸を借りろ、達也」
亘は目を輝かせた。翔太くんは、上の学年の中でも特に上手な子だし、達也の刺激になると思ったのだろう。でも、達也はあまり気乗りしなそうな顔をしていた。きっと自信がなかったのだと思う。
ついに失われてしまった自信
そして、翔太くんとの1対1が始まった。結果は、もちろん惨敗。翔太くんのスピードとテクニックに、達也は全くついていけない。ボールを奪おうと足を出しても、軽くいなされて置き去りにされる。
シュートを打たれて、達也がゴールを守れなかった瞬間、達也は顔を真っ赤にして、ボールを拾おうともしなかった。
「もうやだ!」
達也はそう叫ぶと、ボールを放り出し、泣きながら公園から走り去ってしまった。翔太くんはきょとんとしていたけれど、亘の表情からは怒りとイライラが見て取れた。
「おい、達也!待て!逃げるなよ!」
亘の声が届くことはなかった。
あまりにもひどい言葉に、怒りが沸く
家に帰ると、達也はそのまま自室に直行し、布団を被ってふて寝してしまった。夕飯時になっても、達也はリビングに降りてこない。
「あいつはもうダメ。サッカー辞めた方がいい」
夕食のテーブルで、亘は静かにキレていた。いや、静かに見せているだけで、その声には凍り付くような怒りが含まれていた。
「あの程度の負けで逃げるやつに、サッカーやる資格なんてない。サッカーが好きなら、泣いて終わりじゃなくて死ぬ気で練習するだろ。悔しいならさ」
私は黙って、亘の言葉を聞いていた。達也の夕飯の皿は、テーブルの上にポツンと残されたままだった。
「今週の練習で、コーチに辞めるって言うぞ。高い月謝を出して、いちいち送迎して。あんなやつに使う金と時間がもったいねえんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、私は頭の中で何かが切れる音を聞いた。夫の暴言は大きくて、自室にいる達也にも確実に聞こえている。いや、亘は聞かせようとしているんだ。こんな親の暴言を聞いた達也はどう思う?わたしは絶対に許せなかった。
達也の気持ちを無視し、自分の期待だけを押し付けた挙句、結果が出ないから「無駄」だと切り捨てる父親。こんなの、絶対におかしい―――。
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あとがき:臨界点を超えた「無駄」発言
「逃げる」という行為は、達也にとってこれ以上自分の心を保てない悲鳴でした。そして、亘の「金と時間がもったいない」という言葉は、達也の努力と存在価値を否定する最低な一言です。美香子は、この言葉で亘の根底にあるのは「達也への愛」ではなく、「自分の過去の傷の清算」だと確信します。
達也の繊細さを理解しながらも口をつぐんでいた美香子が、ついに夫の理不尽な期待に対して立ち上がる瞬間です。この怒りは、母親が子の心を守るための、最後の砦と言えるでしょう。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










