🔴【第1話から読む】小1息子のサッカーチーム選びで、夫の【体育会系スイッチ】がONに…|体育会系こじらせパパ
達也が「サッカーを辞める」と告げた瞬間、美香子はテーブルを叩き「あんたは達也に自分の理想を押し付けているだけ」と亘に激しく反撃。ついに自分勝手な体育会系夫に、はっきりとNOを突き付ける。
わが子の姿に怒りは頂点
前日、夫が自室の達也に聞こえるような暴言を吐いたあと、部屋を見に行ったら、達也は眠っていた。泣き疲れてしまったのかもしれない。翌日は亘が仕事で、家族で顔を合わせるのは夕食の時間になった。
夕食で家族で顔を合わせると、達也静かに席についていた。表情はほとんどなかったけれど、開口一番、亘に向かってこう言った。
「パパ、昨日の話だけど…」
達也が、意を決したように小さな声で言った。
「僕、サッカー…辞めるよ。僕には資格ないと思う」
その言葉を聞いた亘は、一瞬びっくりしたようだったが、すぐに表情を元に戻してこう言った。
「もう、やる気はないってことでいいんだな?」
達也は、なんとも言えない表情を浮かべる。その顔を見て、私は黙っていられなくなった。
「いい加減にしなさいよ、亘」
自分の理想を押し付ける夫にブチ切れ
亘は急に私が怒り出したと思ったのだろう。びっくりした表情だった。
「なんだよ、急に」
「急になんかじゃない。昨日からずっと怒ってる。達也は達也なりに成長しているのに、周りと比較ばっかりして『金と時間の無駄』?そんなこと言う親がどこにいるのよ、亘こそ、父親やってる自覚あるの?」
私の声は震えていたけれど、止まらなかった。今まで抑え込んできた感情が、津波のように噴き出した。
「亘は、自分の理想を押し付けているだけ!あなたの学生時代の悔しさなんてどうでもいい。達也はあんたの分身じゃないんだよ」
亘は目を丸くして、言葉の勢いは一気になくなった。
「ち、違う、俺は、ただ…真剣にやってほしくて…」
「達也は真剣にやってるし、サッカーが好きなんだよ!あの公園での笑顔見たでしょう?クラブで委縮するのは、亘のせいだよ。そんなことばっかりするなら、もう練習見に行かなくていいから」
私は達也に向き直り、優しく言った。
「達也、あなたがサッカーをしたいなら辞める必要なんてない。好きなら頑張りな。それを応援するのがパパやママの役割なんだよ」
子は子。親は親。
「パパ、あなたはサッカー指導者じゃなくて父親なんだよ。子どもとの向き合い方をもう一度考え直して。それまで練習は見に来ないで」
亘は私の迫力におされ、ガクッと肩を落とした。
後日、達也はサッカークラブを辞めず、続けることを選んだ。試合にはなかなか出られないけれど、練習で楽しそうにボールを追いかける彼の表情は、以前よりずっと穏やかになったし、上達も感じる。
そして、亘はそれ以来、達也のプレーについて一切口出しをしなくなった。何か言いたそうにそわそわしてるけど。私はそこは知らんぷり。
亘は私にブチギレられたあと、達也が寝た後にこう約束したのだ。
「ごめん美香子、俺が自分本位すぎた。達也のサッカーは応援したいし、見に行きたい。絶対に口出ししないし、父親として見守るだけでいい。美香子の言う通り、俺は自分の悔しさを、達也を使って晴らそうとしてたんだと思う」
体育会系すぎる夫への、私からの強烈なしっぺ返し。これで、わが家の平和は守られた。子どもの心を守るため、母親が鬼になる瞬間も必要だったと思うようにしている。
あれ以来、達也と亘の関係性はとてもよくなって、休日は2人で公園サッカーを楽しんでいる。私はひそかに、息子が試合で活躍する日を楽しみに待っている。
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あとがき:子の心を守る、母親の愛あるブチギレ
美香子の「あんたは達也の分身じゃない!」という叫びは、この物語の核心を突いています。夫の過去の傷や、達成できなかった夢を子どもに背負わせる行為は、毒親になる第一歩です。美香子は、愛する夫であっても、子の心を削る存在になった瞬間に、強い決意で立ち向かいました。亘が意気消沈した姿は、彼がどれだけ自分の夢に囚われていたかを示しています。達也がサッカーを続ける選択をしたのは、「自分の意思」を取り戻せた証拠です。母親の「鬼」になる瞬間こそ、子どもの健全な成長を守るための必要な儀式だったと言えるでしょう。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










