彼は玄関先でひたすら土下座して謝ってきました。私は両親と共に拓真の前に座りましたが、彼の「ごめんなさい」「絶対に変わるから」という言葉が、何の重みも持たない空虚な響きに聞こえました。
「それは誰への謝罪?私がどれだけあなたを信じて、家族を説得したかわかっているの?」
私は生まれて初めて、あんなにも人を責めました。今まで拓真に嫌われたくなくて、言いたいことを黙っていた自分とはまるで別人でした。その場にいた両親は、前回の発覚時とは違い、怒鳴ることもなく、ただただ呆れて冷静でした。
虚しさに耐えきれなくなった私は、両親と顔を見合わせて
「もう明日も仕事なんだから、帰って」
と拓真に伝えました。
拓真は最後に「絶対に変わるので、最後のチャンスを下さい、お願いします」と再び涙ながらに訴えましたが、私は何も返事をせず、彼を帰らせました。今の私には、拓真の言葉は一切届きませんでした―――。 ※1
二度の裏切りで妻の心は冷え切った
3日前にも、同じように謝罪を繰り返した夫。上辺だけのパフォーマンスだったようです。すっかり信用をなくしてしまった人の言葉は、もう心には響きません。
拓真を帰らせたあと、沙羅は今後のことについて、真剣に考えます。
自分のために突き進むことを決意
拓真が帰った後も、私の心はまだ整理がつきませんでした。昨日まで大好きだった人を、急に過去形にすることはできません。しかし、彼の行動を理解しようと考えれば考えるほど、「頭がおかしいやつ」にしか思えませんでした。仮に彼が変わってくれたとしても、私自身が彼を信用できるようになるまで、何年かかるかも分かりません。
私は、このまま感情に流されて立ち止まることをやめました。両親も「お前が選んだ人生を応援する」と言ってくれて、しばらくは実家に滞在できます。しかし、私自身がまず動く必要がありました。
まず、私は慰謝料を取ることに集中することを決めました。綾乃夫婦の助けを借りて確保した写真、ボイスメモ、身分証明書の情報といった完璧な証拠が手元にある今、慰謝料請求は着実に進められます。
「まずは、弁護士さんに相談して、あの女性から慰謝料を確実に取ることから始める。拓真のことは、その後考える」
私はそう決意しました。そして何よりも最優先すべきは、お腹の中にいる子ども。この子を無事にこの世に誕生させ、幸せに育てていくこと。それが、私に残された最大の使命でした。 ※2
怒りや悲しみ、憎悪など、さまざまな感情でぐちゃぐちゃになってしまいそうですが、自分とおなかの子のために、前に進むことを決意した沙羅。
手元には、完ぺきな証拠がそろっています。まずは慰謝料を手に入れることで、自分の生活を安定させることを最優先に考えたのです。やるべきことを淡々とこなします。
二度の裏切りで妻が決意したこと
後日、私は綾乃夫婦と食事に出かけて、心からの感謝を伝えました。彼らの協力がなければ、私は証拠も取れず、ただ泣き崩れて終わっていたかもしれません。
拓真との離婚については、今は保留です。拓真は変わるかもしれませんが、私の心はもう戻らないかもしれません。私は、拓真の言葉に再び耳を傾ける前に、まず自分の足元を固め、未来の選択肢を広げることにしました。
この二度目の裏切りは、私に「誰にも期待せず、自分の人生を自分で守る」という、強い覚悟を与えたのです。 ※3
本当に、友人夫婦の助けは大きかったですね。信頼できる人の助けは、必要不可欠です。
「未来の選択肢を広げる」という沙羅の考え方、とても素敵です。母親となる覚悟とともに、自分の人生を自分で切り開いていこうとする姿に、エールを送りたくなる作品です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










