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「泥棒ってこと?」打ち明けた不安を、夫は“考えすぎ”と否定した|封筒貯金が消えた話

慎ましい3人暮らしの中で、「万が一」に備えて封筒貯金を続けていた主人公・恵。それは家計のためであり、心の安心でもあった。しかしある日、その封筒の中身に違和感を覚えて…。『封筒貯金が消えた話』第2話をごらんください。

©︎ママリ

🔴【第1話から読む】“封筒貯金”の中身が消えた?→気のせいにした小さな違和感

恵は生活費として管理している封筒貯金の金額が記憶と違うことに気づき、不安を覚えた。夫・健太に相談するも「入れ忘れでは」と流され、違和感を抱えたまま日常へ戻る。その1ヶ月後、確実に入れたはずの今月分が再び減っていることに気づき、恵の不安は現実味を帯びていく。

違和感が“確信”に変わった日

封筒 PIXTA

前回の違和感から1ヶ月後。恵は、いつも以上に慎重になっていた。
月初め、給料日直後。お札や小銭の感触を確かめながら金額も確認し、封筒にお金を入れる。

(ちゃんと入れた)

入れた瞬間を、しっかり覚えている。
封筒の中身を数え、厚みを確かめ、引き出しにしまった。

(今月は、間違いない)

そう思えるように、あえて声に出して確認したほどだった。

それから数日後の昼下がり。
恵は、何となく胸騒ぎを覚え、再び引き出しを開けた。
茶封筒は、そこにある。
位置も、向きも、いつも通り。

けれど──
中身を取り出した瞬間、確信に変わった。

(……減ってる)

今回は、迷いようがなかった。
数日前、自分の手で入れた金額。
その感触も、紙幣の枚数も、はっきり覚えている。
恵は何度も数え直した。
それでも、結果は変わらない。

「どうして……?」

心臓が、嫌な音を立てる。

(私、出してない)

必要な出費もなかった。
封筒を開ける理由が、この数日間にあったとは思えない。

「考えすぎだよ」夫に否定された違和感

リビング 夜 PIXTA

夕方、健太が帰宅した。
莉子は保育園で覚えた歌を歌い、家の中はいつもの賑やかさだ。

夕飯を終え、莉子を寝かしつけたあと。
恵は、前回よりもはっきりとした不安を抱えたまま、切り出した。

「ねえ、健太」

「ん?」

スマホを見ていた健太が顔を上げる。

「封筒貯金のことなんだけど……今月分、ちゃんと入れたの。自分でも確認した」

健太は少し眉を寄せた。

「それで?」

「……また、減ってる」

一瞬、部屋の空気が止まった気がした。

「え?」

健太は驚いたように目を見開く。

「俺、知らないけど」

「うん……。心当たり、ない?」

「ないない」

即答だった。

「そもそも、俺あれ触らないし」

恵は唇を噛んだ。健太の態度に、嘘っぽさは感じない。
けれど、だからといって納得できるわけでもなかった。

「じゃあ……」

言い淀んだあと、恵は思い切って口にする。

「もしかして、誰かに入られたとか……」

「は?」

健太の声が、少し強くなる。

「泥棒ってこと?」

「……可能性の話、だけど」

すると健太は、ため息をついた。

「そんな半端なことする泥棒、いるわけないだろ」

「え……?」

「現金盗むなら、もっとごっそり持ってくよ。封筒からちょっとだけ、なんて聞いたことない」

健太はそう言い切り、話を終わらせるように立ち上がった。

「考えすぎだよ。勘違いか、数え間違い」

その背中を、恵は黙って見送るしかなかった。

(考えすぎ……?)

自分でも、そう言い聞かせようとした。けれど、胸のざわつきは消えないままだった。

“安全なはずの家”が揺らぎ始めた夜

スマホ 夜 PIXTA

その夜。
健太が先に寝室に行き、恵はリビングで一人、スマホを開いた。
無意識のうちに、検索窓に文字を打ち込んでいる。

「貯金 盗まれた」

次々と表示される体験談。最初は「やっぱり大げさだ」と思った。
しかし、読み進めるうちに、ある言葉が目に留まる。

──少額ずつ盗む泥棒もいる。

「……え?」

記事を開く。

(気づかれないように少しずつ)
(家族が犯人だと疑われないため)
(生活圏を把握している人物が多い)

似たような内容の記事が、いくつも出てくる。

「そんな……」

恵の背中を、冷たいものが這った。

(じゃあ、あれも……?)

自分の家。自分の生活。

安全だと信じていた場所が、揺らぎ始める。
画面を閉じても、不安は消えない。

(本当に、外部の人?それとも……)

考えたくない方向に、思考が向かいそうになり、恵は首を振った。

(疑うなんて、嫌だ)

けれど、封筒が減っていた事実だけは、消えない。

その夜、恵はなかなか眠れなかった。
静かな部屋で、引き出しの奥にしまわれた茶封筒の存在が、やけに重く感じられた。
この違和感が、ただの思い過ごしで終わるのか。
それとも──。

恵の不安は、確実に深まっていった。

🔴【続きを読む】記録をつけて迎えた1か月後、消えたお金は“勘違い”じゃなかった|封筒貯金が消えた話

あとがき:消えたのは、お金だけじゃない

「気のせい」と言われた違和感が、確信に変わるとき、人は初めて“信じていたもの”を見つめ直します。
封筒の金額以上に、恵の心の安定が削られていく過程が描かれていました。

否定される不安、共有できない違和感は、孤独を深めていきます。
まだ犯人も理由も見えないまま、ただ「何かがおかしい」という感覚だけが残る。
恵の視線は、さらに身近な場所へと向いていきます。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

イラスト:まい子はん

🔴【全話読む】封筒貯金が消えた話

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