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記録をつけて迎えた1か月後、消えたお金は“勘違い”じゃなかった|封筒貯金が消えた話

慎ましい3人暮らしの中で、「万が一」に備えて封筒貯金を続けていた主人公・恵。それは家計のためであり、心の安心でもあった。しかしある日、その封筒の中身に違和感を覚えて…。『封筒貯金が消えた話』第3話をごらんください。

©︎ママリ

🔴【第1話から読む】気のせいにした小さな違和感|封筒貯金が消えた話

恵は確実に入れたはずの封筒貯金が再び減っていることに気づき、不安を深めた。夫・健太に相談するも否定され、外部犯行の可能性も一蹴されてしまう。納得できない恵は、事実を確かめるため、貯金の記録を帳簿につけ始めることにした。

「警察はやめろ」拒まれた相談

スマホ PIXTA

翌朝。
朝食の準備をしながら、恵の頭の中には昨夜読んだ記事の内容がぐるぐると回っていた。

少額ずつ盗む泥棒
気づかれないように、生活圏を知っている人物──

(考えすぎ、なのかな……)

そう思おうとしても、不安は拭えない。
健太がリビングに来たタイミングを見計らい、恵は口を開いた。

「ねえ、昨日の話なんだけど」

「ん?」

「ちょっと調べたらね……少額だけ盗む泥棒の話、結構あったの」

健太は、コーヒーを飲みながら眉をひそめる。

「それで?」

「一度、警察に相談だけでもしてみた方がいいんじゃないかなって……」

その瞬間、健太の表情がはっきりと曇った。

「やめた方がいいよ」

即答だった。

「え……?」

「確証があるわけでもないし。勘違いだったらどうするんだよ」

恵は言葉を詰まらせる。

「でも、続いてるし……」

「だからって、警察に行くほどの話じゃないだろ」

健太はそう言って、話を切り上げるように立ち上がった。

「そんなことで大事にしたら、恵が疲れるだけだよ」

その背中を見つめながら、恵の胸に小さな棘が刺さる。

(……疲れさせてるのは、どっち?)

危機感のなさ。真剣に受け止めようとしない態度。
怒鳴られたわけでも、責められたわけでもない。それなのに、心の奥がじわりと冷えていく。

(もし、本当に何かあったら……?)

その問いに、健太は向き合おうともしなかった。

私は記録をつけることにした

家計簿 PIXTA

その日から、恵は行動を変えた。
封筒貯金をするたびに、ノートを開く。
日付、金額、封筒に入れた紙幣の枚数。
几帳面とは言えない自分が、ここまでやることに、恵自身が少し驚いていた。

(でも、はっきりさせたい)

誰かを疑いたいわけじゃない。
ただ、事実を知りたかった。

引き出しに封筒をしまう時も、以前より慎重になる。
位置を覚え、触った感触を記憶に残す。
それは安心のためであり、同時に、貯金が消えている現実を再確認させられ、自分を追い詰める行為でもあった。

そして、帳簿をつけ始めて迎えた最初の月。
恵は、深呼吸をしてから引き出しを開けた。

(……大丈夫)

自分に言い聞かせながら、封筒を取り出す。
中身を数えた瞬間、視界がぐらりと揺れた。

「……また」

減っている。帳簿と、封筒の中身。
数字は、明確に食い違っていた。

今回は、言い逃れできない。
勘違いでも、思い込みでもない。

疑われたのは、私だった

夫婦 喧嘩 PIXTA

恵はその夜、帳簿と封筒を持って健太の前に座った。

「見て」

健太は、不思議そうにノートに目を落とす。

「これ、今月分の記録。入れた日も、金額も、全部書いてある」

封筒を開き、中身を見せる。

「……減ってるでしょ?」

健太は黙り込んだ。
数秒、いや、それ以上だったかもしれない。

「……ふーん」

その反応に、恵の胸がざわつく。

「ふーん、って……」

「いや、でもさ」

健太は視線を逸らしたまま言う。

「帳簿なんて、後からでも書けるだろ?」

その一言で、空気が一気に変わった。

「……どういう意味?」

「いや、だから。恵が間違えてる可能性も、ゼロじゃないって話。ほら、記録漏れとか、あるかもしれないだろ?」

恵は、喉の奥がひりつくのを感じた。

(信じて、ない……)

泥棒の存在よりも、夫が自分の言葉や行動を疑っていることの方が、ずっと苦しかった。

「私が、嘘ついてるって言いたいの?」

「そんな言い方してないだろ」

健太は、軽く肩をすくめる。

「でも、決めつけるのはよくない」

決めつけているのは、どちらなのか。恵はそれ以上、何も言えなかった。

その夜、布団に入ってからも眠れず、天井を見つめ続けた。

(泥棒かもしれない)
(でも……)

健太の曖昧な態度。警察を嫌がる理由。
帳簿を見ても動揺しなかった反応。

疑いたくない。疑う自分が、嫌だ。
それでも、心は静かに結論へ近づいていく。

(外の誰かより……)

恵の疑いの矛先は、少しずつ、
しかし確実に、夫へと向き始めていた。

🔴【続きを読む】“確かめたい”だけだった…見守りカメラが映した決定的な瞬間|封筒貯金が消えた話

あとがき:疑いは、誰を守るためのものか

恵が帳簿をつけたのは、犯人探しのためではなく、自分の感覚を守るためでした。
それでもなお疑われたとき、夫婦の信頼関係は大きく揺らぎます。
外部犯行よりも、身近な存在への疑念が芽生える瞬間は、とても静かで、だからこそ残酷です。

恵の視線はさらに日常の細部へ向かい、疑いは「確信」に近づいていきます。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

イラスト:まい子はん

🔴【全話読む】封筒貯金が消えた話

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