36歳の主婦・麻美は、中3の娘・湊が、友人関係の悩みから「学校に行きたくない」と言い出し、動揺する。さらに、トラブルの相手が湊と同じ志望校を受けると知り、湊は「ランクを下げたい」と泣きついてきて……。
わが子の高校受験に頭を抱える
「ふぅ……」
思わず、大きなため息がこぼれてしまいました。目の前のコーヒーは、いつの間にか冷めきっています。
私は麻美。36歳。15歳になる娘の湊と、夫の正光と暮らす、どこにでもいる普通の主婦です。今の私の頭の中は、9割以上が、娘の「高校受験」のことで占められています。
湊は、中3の部活引退までは塾に行かず、自力でテスト勉強や提出物をこなしてきました。通知表は、オール4に時々3がまざるくらい。
何よりも、やさしい、まじめな子なんです。
親のよく目かもしれませんが、本当に手のかからない、自慢の娘でした。
学校で友だちとトラブルになった娘
でも、そんな湊が、中3の秋になって、急に「学校に行きたくない」と言い出したんです。
「……湊、また早退したの?」
「うん。なんか、教室の空気が重くて……」
リビングのソファーで丸くなる湊を見て、私は胸がしめ付けられる思いでした。
原因は分かっています。
同じクラスの「あの子」…友人関係のトラブルです。
今日は久しぶりに、高校生のお子さんを持つ、里佳子とランチの約束をしていました。彼女は、私にとって育児の戦友であり、尊敬する先輩でもあります。
「里佳子、久しぶり! 今日は相談にのってほしくて……」
待ち合わせのカフェに現れた里佳子は、私の顔を見るなり、
「麻美、顔色がわるいわよ。受験生の母が倒れてどうするの」
と、笑ってくれました。
友人に相談をすることに
私は堰を切ったように話し始めました。
湊が仲の良かった友だちとギクシャクしていること。その子の顔色を伺って、いやなことをされても、言い返せないこと…。
そして、その影響で、学校を休みがちになっていること。
「その友だち、中学に入ってから少し変わっちゃったみたいで。湊はその子が大好きだから、突き放せないの。でも、その子と何かあると、すぐに"学校に行きたくない"って……」
里佳子は静かに話を聞いてくれました。
「それはつらいね。でも、高校に行けば、環境が変わるじゃない? 湊ちゃん、志望校は決まってるんでしょ?」
そうなのです。本来なら、そこが希望の光になるはずでした。
「それがね……実は、そのもめている子も、湊と同じ高校を受けるって言い出したみたいで……」
声がふるえました。逃げ場がない。そう思ったら、目の前が真っ暗になったような気がしたんです。
「中3のこの大事な時期に、また関係が悪化して。湊ったら、"もう志望校を下げたい"って言い出してるの。あんなにがんばって成績を上げてきたのに…友だちとの関係だけで、将来を決めていいのか……。私はどう言えばいいのか分からないのよ」
里佳子の表情が、少しだけきびしくなりました。
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あとがき:逃げ場のない"子の気持ち"
わが子が学校へ行けず、ふるえる声で「志望校を変えたい」と言い出した時、冷静でいられる母親はいないでしょう。
麻美のあせりは、娘の将来を思うからこその重圧です。「友だち関係」という、本人にしか分からない、せんさいな問題が、一生を左右しかねない受験に影を落とす。出口の見えない嵐の中にいるような、麻美の苦しい胸の内が伝わってきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










