1歳の娘と喘息を持つ夫を連れ、半年ぶりに実家へ帰省した可南子。「孫のために片付ける」という母の言葉を信じていたが、玄関を開けるとそこは以前と変わらぬ「汚部屋」だった。埃とカビの臭いに絶望が募る。
帰省が不安な理由
「可南子、本当に大丈夫なの?」
新幹線の座席で、夫の学人が少し不安そうに私に尋ねました。膝の上では、1歳になったばかりの娘・みちるがすやすやと眠っています。
「大丈夫。お母さん、今回は『孫のために片付ける』って何度も言ってたし。学人の喘息のことも、耳にタコができるくらい伝えてあるから」
私は自分に言い聞かせるように答えました。私の実家はいわゆる「汚部屋」です。物が捨てられない母と、それに諦めを抱いている父。幼いころから、足の踏み場もないリビングが当たり前でした。
でも、今回は違う。初孫のみちるが歩き回るようになった今、あんな劣悪な環境に置くわけにはいかない。
半年も前からお願いしていた片付け
半年前から、私は帰省のたびに電話で念を押していました。
「お母さん、みちるが埃を吸ったら大変だよ。学人も喘息があるんだから、絶対に片付けてね」
『わかってるわよ!今、病院通いで忙しいんだから、あんまり急かさないで。ちゃんとやるわよ!』
母のヒステリックな声に溜息をつきながらも、どこかで「孫のためなら重い腰を上げるだろう」と信じていたんです。
しかし、実家の玄関を開けた瞬間、その期待は粉々に砕け散りました。
「……え?」
鼻を突く、カビと埃の匂い。廊下には中身のわからない段ボールが積み上げられ、カニ歩きをしないと奥に進めません。
まったく片付いていない汚部屋に怒りが沸く…
「おかえり。いやあ、昨日から急いで片付けたんだけど、終わらなくてさ」
のんきに笑う父の背後で、母が顔を出しました。
「可南子!みちるちゃん、会いたかったわぁ!」
母が抱きつこうと手を伸ばしましたが、私は反射的にみちるを抱きしめて一歩下がりました。
「お母さん……これ、片付けたって言うの? 全然変わってないじゃない」
「何よ、せっかく前日徹夜してまで物を寄せたのに! 文句から始まるわけ?」
母の目が釣り上がります。足元には電化製品のコードが蛇のようにのたうち回り、埃の塊が舞っています。
通された客間は、さらに悲惨でした。かろうじて布団が2組敷けるスペースが確保されているだけで、周囲は衣装ケースの山。そして何より、凍えるほど寒い。
「お母さん、この部屋エアコンないの? 外にいるみたいに寒いんだけど」
「贅沢言わないでよ。昔はみんなこうだったんだから」
その横で、学人が小さく「ゴホッ、ゴホッ」と咳き込み始めました。私の心に、どす黒い不安と怒りがこみ上げてきました。
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あとがき:期待という名の呪縛を解くために
「孫のためなら変わってくれるはず」という淡い期待が、無残に砕け散る瞬間の痛みは計り知れません。実家という場所が、安らぎではなく「戦場」や「我慢の場」になってしまっている方は意外と多いものです。特にお子さんやパートナーを連れての帰省は、自分一人の時とは違う責任感が加わり、親の無神経さが刃のように突き刺さります。まずは自分自身の直感を信じ、違和感を無視しないことが自分を守る第一歩です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










