妊娠中の歩美を待ち受けていたのは、職場の下輩・後藤さんによる過剰な「親切」だった。保育士資格を盾に、サプリの服用やエコー写真の提出、果ては子どもの名前まで強要する彼女。歩美は次第に恐怖を感じ始める。
職場の先輩が悩みのタネ
「おはよー歩美ちゃん! 今日も赤ちゃんは元気?ちゃんと栄養摂ってる?」
朝、デスクに鞄を置いた瞬間に飛んでくる声。それが私の日常。 私は歩美(29歳)。夫の道義(31歳)と二人暮らしで、現在待望の第一子を妊娠中です。幸せの絶頂にいるはずの私を、今一番悩ませているのは、同じ部署の先輩・後藤さん(37)の存在でした。
「あ、後藤さん、おはようございます。ええ、おかげさまで今のところは順調です」
「今のところ、じゃダメよ! ママがしっかりしなきゃ。ねえ、昨日の夜は何食べたの?写真は?」
後藤さんは未婚で、お子さんはいません。でも保育士の資格を持っていて「子どもが大好き」だと公言しています。最初は心強い先輩だと思っていました。初めての妊娠で不安だらけの私に「何でも相談してね」と言ってくれたときは、本当に救われる思いだったんです。
親切心に違和感を感じる
でも、最近その「親切」が、なんだか様子がおかしくなってきていて……。
「歩美ちゃん、はいこれ。私のおすすめの葉酸サプリ。ちゃんと毎日飲みなさいよ?あ、それから次の健診、土曜日でしょ?終わったらすぐにLINEしてね。あ、できればエコー写真は全部、動画で撮って送って。心臓の音も聞きたいし!」
「えっ……エコー写真、全部ですか?あ、はい。でも、病院によっては動画NGなところもあって……」
「そんなの、こっそり撮ればいいじゃない!私がチェックしてあげるから。私、専門知識あるんだから、医者が見逃した異変も見つけられるかもしれないし」
ニコニコと笑いながら、距離を詰めてくる後藤さん。 その目は、まるで自分の子どものことのようにギラギラと輝いています。
名付け親になる気満々の先輩
「あとね、歩美ちゃん。ベビー用品を買いに行く時は、絶対私を呼んでね?初心者の夫婦だけで行くと、無駄なもの買わされるんだから。私が見繕ってあげる。……あ!そうだ、名前!私、もう候補を10個くらい考えてあるの。今夜LINEで送るから、必ずご主人と検討してね。私の考えた名前、絶対センスいいから!」
「な、名前まで……ありがとうございます。でも、名前は夫と二人で決めようって話してて……」
「何言ってるの!ご主人なんて男の人でしょ?名付けのセンスなんてないわよ。いい?子どもの将来がかかってるんだから、意地を張っちゃダメ」
後藤さんは私の肩をパンパンと叩き、満足げに自分の席へ戻っていきました。 机に残されたのは、後藤さんが「推奨」するサプリメントと、ずっしりと重いプレッシャー。
私はスマホを取り出し、道義にこっそりメッセージを送りました。
『ねえ、今日も後藤さんに名前の候補送るって言われちゃった……。ちょっと怖くなってきたかも』
すぐに既読がつきますが、返信を打つ間もありません。
「歩美ちゃん!仕事中スマホばっかり触ってると、電磁波が赤ちゃんに悪いわよ!」
……まだ始業前なのに。 私は溜息を飲み込み、無理やり笑顔を作ってパソコンを立ち上げました。この時の私はまだ、彼女の干渉がこの後どれほど異常なエスカレートを見せるのか、想像もしていなかったのです。
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あとがき:その優しさ、賞味期限切れではありませんか?
初めての妊娠。不安な時に「何でも聞いて」と言われたら、砂漠で水を見つけたような気持ちになりますよね。でも、後藤さんのように土足でプライベートに踏み込むのは「親切」ではなく、ただの「侵略」です。自分の意見を押し付けるだけの人は、あなたの幸せではなく、あなたをコントロールして得られる「全能感」を愛しているだけかもしれません。違和感は、あなたと赤ちゃんの心を守るための大切なアラートなのです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










