🔴【第1話から読む】「赤ちゃんの名前の候補、考えてきたから!」マタハラ先輩の凶行
干渉は「監視」へと変貌する。カフェイン摂取を「虐待」と罵り、飲み物を没収する後藤さん。休日の健診中も執拗にLINEで報告を迫り、挙句の果てには「胎動を確認する」とおなかを触ろうとする狂気に歩美は震える。
細かすぎるチェックが憂うつ
妊娠中期に入り、体調は安定してきたものの、会社に行くのがどんどん苦痛になってきました。 後藤さんの干渉が、もはや「親切」の域を完全に超えてしまったからです。
「歩美ちゃん!それ、何を飲んでるの?」
お昼休み、私がデスクでひと息つこうとカップを持った瞬間、後藤さんが背後から身を乗り出してきました。
「あ、これですか?市販のミルクティーですけど……」
「ちょっと!原材料見せて!……やっぱり!カフェインが入ってるじゃない!信じられない、歩美ちゃん、これって虐待よ?」
「ぎゃ、虐待って……。1日1杯程度ならお医者様も大丈夫だって……」
「お医者さんは甘いの!ネットで調べてごらんなさい、カフェインがどれだけ胎児に悪影響か。脳の発育が遅れたらどうするの?後悔しても遅いのよ!はい、没収!」
後藤さんは私の手からカップをひったくると、そのまま給湯室へ持っていき、中身を捨ててしまいました。呆然とする私に、彼女は水道水を入れたコップを突き出します。
「これからは水か、私が持ってくる特製のタンポポ茶にしなさい。分かった?」
先輩の要求が異常なレベルに…
それだけではありません。お昼にお弁当を食べていれば「塩分が高い」、外食しようとすれば「添加物の塊よ」と付いてこようとする。私の口に入るもの全てが、彼女の検閲対象になってしまったのです。
さらに苦痛なのが、毎週土曜日の健診後の「報告義務」でした。
(ピコン!) (ピコン!)
土曜日の昼下がり。道義とランチを食べている最中も、スマホが激しく震えます。
『健診終わった?』 『性別分かった?』 『お股のエコー写真、ちゃんと撮った? 見れば私すぐ分かるから!』
「……また後藤さん?」
道義が心配そうに顔を覗き込みます。
「うん……性別が分かったら、お股のエコーを送れって。さすがにそれは抵抗あるよ。プライバシーっていうか、なんていうか……」
「それは異常だよ、歩美。なんで職場の先輩にそんなもの見せなきゃいけないんだ。まだ分からないって突き通せばいい」
私もそう思って、LINEには『まだ隠れてて見えませんでした』と返しました。
これは立派なハラスメント
すると、即座に返信が。
『えー、残念!次は私が一緒に行こうか?私が先生に「ちゃんと見せてください」って言ってあげる。それか、胎動はどう?もうあるでしょ?月曜日に会社で触らせてね。もし胎動が少ないと感じるなら、私がきちんと確認してあげるからね!』
画面を見る手が震えました。
「おなか触らせて、だって……」
「歩美、もう返信しなくていい。これ、立派なハラスメントだよ」
道義は私の手を握ってくれましたが、月曜日になればまた、あの狭いオフィスで彼女と顔を合わせなければなりません。
月曜日。
「歩美ちゃん、おはよー!さあ、おなか触らせて。ほら、早く!」
出社するなり、後藤さんが私のデスクの横で待ち構えていました。私の意思なんて関係なく、彼女の手が私のおなかに伸びてきます。私は反射的に身を引いてしまいました。
「……すみません、まだ自分でもよく分からないくらい微かなので」
「えー?そんなはずないわよ。隠さないでよ、減るもんじゃないんだから!」
彼女の笑顔が、今までで一番不気味に見えました。
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あとがき:「あなたのため」という言葉のナイフ
「あなたのためを思って」という言葉は、時としてどんな罵倒よりも鋭く心を突き刺します。歩美さんの飲み物を捨て、生活のすべてを検閲しようとする後藤さんの姿は、もはやホラー。妊娠中のナイーブな時期に、自分のペースを乱されるストレスは計り知れません。逃げ場のないオフィスという閉鎖空間で、一歩ずつパーソナルスペースを侵食されていく恐怖。夫の道義さんが異変に気づいてくれたことが、唯一の救いです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










