主婦の静香は、不倫を軽蔑していた親友・奈々から「好きな人ができた」と打ち明けられる。相手は、かつての顔見知り、マサ。やさしくあまい言葉を注ぐマサに、奈々は家庭がありながらも心をうばわれていき…。
おさななじみはとても一途な人だった
私は静香(31歳)。夫の宗太とは結婚して4年。大きな不満があるわけじゃないけれど、日常が淡々と過ぎていく…そんな毎日を過ごしていた。
そんな私の自慢は、幼稚園からのおさななじみである「奈々」。
彼女は私と同じ31歳で、一児の母だ。奈々を一言で表すなら「超」がつくほどの”一途”。
学生時代から、すきになったらその人一筋。浮気や不倫なんて、彼女の辞書には「最も軽蔑すべき行為」として刻まれている…はずだった。
奈々の夫婦仲は、側から見ればおだやかで理想的だ。
そんな彼女から、ある日、衝撃的な言葉がとび出した。
既婚友人から、衝撃の相談
「静香…私、すきな人ができちゃったかもしれない」
手に持っていたフォークが、おさらに当たって、カツンと乾いた音を立てた。
一瞬、耳をうたがった。
「えっ…すきな人? 俳優さんとか、アイドルの推し活の話?」
「ううん…リアルの人。ずっとわすれられなかったっていうか……」
彼女の薬指には結婚指輪が光っている。家には、やさしいご主人と、おさない娘がいるはずだ。
「相手は…だれなの?」
「…おぼえてるかな。結婚する前、よくかよっていたダイニングバーの店員さん。3つ年上の…マサさん」
記憶にある…シュッとした顔立ちの、愛想の良い店員。
当時から、奈々のことを"特別扱い"しているようには見えた。けど、あくまで客と店員だ。
(奈々が宗太さんと結婚してからは、お店にも行かなくなっていたはず)
"泥沼"に足を踏み入れようとしている
「なんで…いまさら? 連絡取ってたの?」
「SNSとLINEはつながってたんだけど…この前、急に向こうから連絡が来たの。"ひさしぶりに顔が見たくなった"って」
奈々はスマホをにぎりしめ、少し不安そうに、でもうれしそうに語りはじめた。
「最初は近況報告だったんだけど、最近、毎日LINEが来るの。夫とは最近、業務連絡ばっかりで…。でもマサさんはちがう。 "奈々は今日、何してた?"とか、"がんばってるね"って…私自身を見てくれる感じがして…」
いやな予感がする。
「マサ」という男は、奈々が既婚者で子持ちであることを知っている。その上で、主婦の心のすき間に入り込もうとしている。
「奈々、それって……」
「わかってる! 不倫なんて最低だって。でも、彼、言ってくれるの。"子どもも一緒にしあわせにする" "責任を取って、しっかり養う"って……」
マサのあまい言葉の数々に、奈々は完全に「沼」に足を踏み入れていた。
一途な彼女だからこそ、一度火がつくと止まらない…。私はこの時、奈々のひとみのおくにある危うい熱に、つよい不安を覚えずにはいられなかった。
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あとがき:不倫という、あまい「毒」
「あの人だけはだいじょうぶ」と思っていた親友の変貌ほど、おそろしいものはありません。不倫を誰よりもきらっていた奈々が、なぜマサの誘惑に落ちたのか…。
それは彼が彼女の「承認欲求」を巧みに突いたからです。「母親」や「妻」という役割につかれ、「一人の女性として見てほしい」…そんな心のすき間にすべり込むあまい言葉は、劇薬のように一途な女性をくるわせます。
静香が感じたのは、平穏な日常がこわれる予兆だったのかもしれません。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










