🔴【第1話から読む】いじめの加害者は自分の息子!「まさか、うちの子が?」
児童館で悠真の言動について指摘を受け、「翔くんもやっていたから」と同調を口にした息子に戸惑う真帆。そんな現在に至るまでを振り返る中で、かつて悠真が翔にいじめられていた過去と、その後「仲良くなった」と語るようになった経緯が思い出される。
「行きたくない」から始まった違和感
「行きたくない……」
ある朝、悠真がぽつりとそう言った。
「え?どうしたの?」
思わず聞き返すと、悠真は視線を逸らしたまま、小さく首を振る。
「……なんでもない」
そう言いながらも、明らかに様子がおかしい。
それまで、学校や児童館を嫌がることなんてほとんどなかったのに。
その日を境に、朝になると同じ言葉を繰り返すようになった。
「行きたくない」
「今日、休んじゃダメ?」
理由を聞いても、はっきりとは答えてくれない。
けれどある日、ようやく口にした言葉で、すべてが繋がった。
「……翔くんが、いやなんだ」
その一言に、胸がざわつく。
「翔くん?どうして?」
「……いじわる、してくる」
ぽつり、ぽつりと話すその内容は、決して軽いものではなかった。
「仲良くなった!」その言葉に安心してしまった
物を取られたり、嫌なことを言われたり。
時には、仲間外れのようなこともされているらしい。
「もっと早く言ってくれればよかったのに……」
そう言いながらも、どこかで気づけなかった自分を責めていた。
すぐに担任の長谷川先生へ相談した。
事情を話すと、先生は真剣に耳を傾けてくれた。
「学校でも様子を見てみますね」
そう言ってくれたものの、不安が消えるわけではない。
その後も、悠真からはぽつぽつと訴えが続いた。
「今日も言われた」
「一緒に遊んでくれなかった」
そのたびに胸が痛んだ。
児童館でも同じようなことがあったと聞き、私は何度も悩んだ。
どうすれば、この子を守れるのか。どうすれば、安心して過ごせるようになるのか。
答えの見えないまま、時間だけが過ぎていった。
そんなある日。
「ママ、今日ね!」
学校から帰ってきた悠真が、珍しく明るい声を上げた。
「翔くんと仲良くなった!」
「……え?」
思わず聞き返す。
あれだけ嫌がっていた相手の名前が、こんなにも嬉しそうに出てくるなんて。
「一緒に遊んだんだよ。もう大丈夫!」
満面の笑みでそう言う悠真を見て、私は戸惑いながらも安堵した。
「そっか……よかったね」
本当に、それでいいのかという迷いはあった。
でも、本人が笑っているのなら、そう思った。
変わっていった言葉と、「だって翔くんも」
それからというもの、行き渋りはぴたりと止まった。
朝も普通に支度をして、学校や学童へ向かう。
あのときの不安が嘘みたいに、穏やかな日常が戻ってきた。
けれど、それ以降少しずつ、違和感が積み重なっていった。
「それ、違うし」
「ちゃんとやってよ」
ふとした瞬間に出てくる、きつい言い方。
最初は、気のせいかと思った。
でも、それは一度きりじゃなかった。
「だからさ、遅いんだって」
「何回言えばわかるの?」
以前の悠真なら、言わなかったはずの言葉。
そのたびに「そんな言い方しないよ」と注意する。
すると悠真は、不満そうな顔をしてこう言うのだ。
「えー、別にいいじゃん」
まるで、それが当たり前かのように。
ある日、あまりにも言い方がきつくて、私は思わず強く叱った。
「悠真、その言い方はダメでしょ!」
少し声を荒げてしまった私に、悠真は驚いた顔をした。
でも次の瞬間、返ってきた言葉に、私は息を呑む。
「だって、翔くんも言ってたし」
その一言で、すべてが繋がった気がした。
仲良くなった、と思っていたあの関係。
でも本当は...
「それ、よくない言い方だよ」
そう伝えても、悠真は納得していない様子だった。
「みんな言ってるよ?」
当たり前のように言い返してくる。
その姿に、言葉が詰まった。
あのとき感じた、小さな違和感。
見過ごしてしまった変化。
「仲良くなった」という言葉に、安心してしまった自分。
今思えば、それは“安心”じゃなかったのかもしれない。
ただ、問題が形を変えただけだったのかもしれない。
そして今、その違和感がはっきりとした“問題”として、目の前に現れている。
私は、何を間違えたのだろう。
そう考えながらも、まだ答えは見つからないままだった。
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あとがき:“仲良くなった”の裏側にあるもの
子ども同士の関係は、ときに大人の想像以上に複雑です。「仲良くなった」という言葉の裏側に、どんな力関係や心理があるのか。それを見極めるのは簡単ではありません。
本作では、“守られる側”だった子どもが、なぜ“加わる側”へと変わってしまうのか、その過程に焦点を当てています。違和感に気づいたとき、親としてどう向き合うのか。次回は、その核心にさらに近づいていきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










