🔴【第1話から読む】いじめの加害者は自分の息子!「まさか、うちの子が?」
児童館での言動をきっかけに、悠真が翔に同調していることを知った真帆。過去には翔からのいじめに悩んでいたにもかかわらず、「仲良くなった」と語るようになって以降、言葉遣いに変化が見られていた。そんな経緯を踏まえ、改めて悠真に向き合う中で、その行動の裏にある理由を問いかける。
「ダメ」だけでは届かない違和感
「悠真、それはダメだよ」
できるだけ落ち着いた声で、そう伝えた。
さっきの話。
児童館での様子を聞いたあと、私は改めて悠真に向き合っていた。
悠真は少しだけうつむいて、「……うん」と小さく頷く。
その表情には、反省の色も見える。でも同時に、どこか納得しきれていないような、そんな曖昧さも残っていた。
「お友だちに強い言い方したり、無視したりするのは、よくないことだよ」
言葉を選びながら、ゆっくりと伝える。
悠真は黙ったまま聞いている。
けれど、何か言いたそうに、ちらちらとこちらを見ているのがわかった。
「……どうして、そうしちゃったの?」
私は少し間を置いてから、そう問いかけた。
「翔くんがやってたから、って言ってたよね?」
「……うん」
「でも、それだけじゃないよね?」
その瞬間、悠真の表情が、わずかに揺れた。
「やられる側になりたくなかった」本音
「……だって」
ぽつりと、言葉がこぼれる。
「同じことしなかったり、一緒にしてないと……」
言い淀みながら、続ける。
「仲間にしないからって言われるし……」
その声は、さっきまでとは違っていた。
少しだけ早口で、どこか焦っているような。
「それで……蹴られたりもするし……」
「……え?」
思わず、聞き返してしまう。
悠真は顔を上げないまま、言葉を重ねた。
「言葉でも、喧嘩でも……勝てないし!」
その一言に、胸が強く締めつけられる。
必死に、何かを守ろうとしているような声だった。
「だから……一緒にやるしかなくて……」
最後の方は、ほとんど聞き取れないくらい小さな声だった。
何も言えなかった。
ただ「ダメ」と伝えるだけでは足りなかったことに、ようやく気づく。
この子は、ただ真似していたわけじゃない。
そうしなければ、自分がやられる側になるかもしれない。
そう感じて、選んでしまった行動だった。
正しさと守ることの間で揺れる
「……そうだったんだ」
やっとの思いで、それだけ言う。
頭の中が、ぐるぐると回っていた。
守りたかったはずのわが子が、今度は誰かを傷つける側に回っている。
でもその裏には、確かに“怖さ”があった。
その日は、それ以上うまく言葉をかけることができなかった。
「明日、またちゃんと話そうね」
そう言うのが精一杯だった。
悠真は「うん」と頷いたけれど、その顔には、まだ不安が残っているように見えた。
翌日。家事をしながらも、昨日の悠真の言葉が何度も頭をよぎる。
──仲間にしないからって言われるし
──蹴られたりもするし
あのときの表情。
あの声。
思い出すたびに、胸がざわつく。
「……どうしたらいいんだろう」
思わず、独り言がこぼれる。
翔くんのこと。その関係。
正直に言えば、翔くんのお母さんに相談することも考えた。
でも...顔が浮かぶ。
いつも感じのいい人で、会えば世間話もする。
お互いに子育ての大変さを話したこともある。
だからこそ、言い出しにくい。
「あなたの子が」と責めるようになってしまわないか。
関係が崩れてしまわないか。
そんな不安が、足を止める。
ふと、昨日のやり取りを思い出す。
悠真は、自分のことで精一杯だった。
怖かったこと。
嫌だったこと。
それをどうにか回避するために、必死だった。
だからこそ「ダメ」という言葉だけでは、届いていない。
正しさを伝えることと、守ること。
その両方を、どうやってやればいいのか、答えが見えない。
「……どう伝えればいいの……」
悠真にとって、本当に必要な言葉は何なのか。
考えても、考えても、はっきりとは浮かばなかった。
ただひとつわかるのは、今ここで、ちゃんと向き合わなければいけないということだけだった。
🔴【続きを読む】「やめなさい」だけでは変わらない…親として気づいた“本当に伝えるべきこと”|息子がいじめる側になった話
あとがき:“加害”の裏にあった、もうひとつの理由
子どもが誰かを傷つけてしまったとき、「やめなさい」と伝えることは大切です。しかしその行動の裏にある理由まで見なければ、本当の意味での解決にはつながりません。
本作では、“加害”の奥にある「恐怖」や「自己防衛」という側面を描いています。親として、正しさを伝えることと子どもを守ること。その両立の難しさに、どう向き合っていくのかを考える回です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。










