児童相談所から息子の優太が戻ってきて、平穏な日々の再開です。優子と浩介は、親としてどう変わったのでしょうか?
変わり始めた夫、そして私
それからの半年間は、私たちの人生の中で最も「勉強」した時間でした。
浩介は宣言通り、前の職場を辞め、タクシー会社に転職しました。
「最初は不安だったけどよ、ここ、いい環境なんだ」
タクシー会社の同僚たちは、浩介の過去を色眼鏡で見ることなく、一人のドライバーとして接してくれました。何より、毎日決まった時間に帰宅でき、優太と一緒に夕飯を食べられることが、浩介の心に余裕を与えました。
「優太までトマトを食べられるようになったのか、すごいなぁ」
「パパも食べなよ、美味しいよぉ」
「う…じゃあ優太に食べさせてもらおうかな」
浩介が笑いながらサラダを食べる。
そんな当たり前の光景が、今の私たちにとっては奇跡のように尊いものでした。
私は、アンガーマネジメントの講座で教わった「6秒ルール」を徹底しました。
カッとした時、まずは6秒数える。それだけで、言葉のナイフを飲み込むことができるようになりました。
また、近所の自治体が開催している「ママ相談会」にも顔を出すようになりました。
最初は「私のような元ヤンが浮かないだろうか」と不安でしたが、皆、育児に悩み、葛藤している一人の母親であることに変わりはありませんでした。
「優子さん、大変だったね。一人で抱え込まなくていいんだよ」
そう言って差し出された先輩ママたちの手は、あたたかく、私の孤独を溶かしてくれました。
定期的に訪れる児童相談所の職員さんは、相変わらず厳しい目をしていましたが、最近では少しだけ表情が柔らかくなった気がします。
「……優太くん、表情がとても明るくなりましたね」
その言葉が、私たちにとっては何よりの合格通知でした。
家族が揃っているという幸福
ある日曜日の午後。
公園で走り回る優太を眺めながら、私と浩介はベンチに座っていました。
「なあ、優子」
「なに?」
「俺たち、昔は『強くあること』がすべてだと思ってたよな。喧嘩に負けないとか、舐められないとかさ」
浩介が、穏やかな目で優太を追いました。
「でも、本当の強さって、違うんだな。自分の間違いを認めて、大切なものを守るために自分を変えること……それが、本当の強さなんだって、最近ようやく分かってきたよ」
私は浩介の手に、自分の手を重ねました。
「そうだね。私たち、まだ『親』としては新米だけど。あの子が誇れるパパとママになれるように、これからも頑張ろう」
優太が、こちらを向いて手を振りました。
「パパ、ママ! 見て、お花見つけたよ!」
駆け寄ってくる息子の笑顔を、私たちは最高の笑顔で迎えました。
かつて朱に染まっていた私たちは、今、新しい色に染まろうとしています。
それは、激しい赤ではなく、温かな日溜まりのような、優しい色。
不器用で、遠回りばかりしてきたけれど。
親に相応しい人間になる。その大切さを胸に刻み、私たちはこれからも、三人で歩んでいきます。
あとがき:親として頑張る二人に、応援が止まらない
不器用でも、障壁があっても、愛さえあれば努力できる。それを感じさせてくれるエピソードでした。親としての責任を果たすため歩き始めた優子と浩介を、これからも応援していきたいですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










