🔴【第1話から読む】結婚の邪魔をする「毒親」過干渉はいつまで続くの?
恋人である祐一となかなか結婚できない中、なんと里奈は妊娠します。祐一とその母は喜んでくれていましたが…?
不意の妊娠、彼とその母は祝福してくれたけれど…
季節が初夏へと移り変わる頃、私の体に小さな異変が起き始めました。
いつもなら大好きなはずのコーヒーの香りに、わずかな嫌悪感を覚える。朝起きた時の、胃の奥に広がる言いようのない不快感。カレンダーを確認し、私は震える指で検査薬を手に取りました。
結果を待つ数分間は、永遠のように長く感じられました。やがて現れた二本の線。それは、私と祐一さんの五年の歳月の結晶であり、同時に、停滞していた私たちの時計の針を強制的に進める運命の合図でもありました。
病院の帰り道、私は込み上げる涙を抑えきれず、駅のベンチで祐一さんに電話をかけました。祐一さんには、まだ不確定だったのもあり何も話していなかったのです。
「祐一さん……赤ちゃんができたの。私、お母さんになるんだって」
スマホの向こうで、祐一さんが息を呑む音が聞こえました。
「……本当かい? 里奈、本当なんだね。ありがとう。ああ、どうしよう、すごく嬉しいよ。君の体は大丈夫? 今すぐそっちに行きたいくらいだ」
彼の歓喜に満ちた声を聞いて、私の不安は一気に晴れ渡りました。その夜、私たちは実母よりも先に彼の母の家へ向かい、報告をしました。
「あら! まあ! 嘘みたい、本当に嬉しいわ。おめでとう、二人とも」
彼の母は立ち上がって私の手を握り、何度も何度も頷きました。
「里奈さん、体に障ることは何もしちゃダメよ。何かあったら、昼夜問わず私を頼って。私、頑張って美味しいものたくさん作るわね」
彼の母の瞳には涙が浮かんでいました。その温かな歓迎に、私は「この命を授かって本当に良かった」と心から思えたのです。
しかし、その幸福感の裏側には、避けては通れない、そして考えるだけで心臓が早鐘を打つような恐怖がありました。実母への報告です。
「里奈さん、お母さんには私からも付き添いましょうか?」と彼の母は心配そうに言ってくれましたが、私は首を振りました。これは私自身の問題であり、いつかは乗り越えなければならない壁だったからです。
「大丈夫です。自分でちゃんと話してきます」
翌週末、私は重い足取りで実家へ向かいました。リビングに入ると、母はいつものように通販カタログを眺めていました。
「お母さん、大事な話があるの」
私の声のトーンで何かを察したのか、母は眼鏡をずらして私を鋭く見据えました。
「何? 祐一さんがやっと昇進でもしたの?」
「……ううん、そうじゃないの。私、妊娠したの。祐一さんとの子供よ。だから、もう結婚を……」
言い終わらないうちに、部屋の空気が凍りつきました。母の顔から血の気が失せ、次の瞬間、それはドス黒い怒りへと変わっていきました。
母の激怒、そして大暴走
「……今、なんて言ったの?」
「妊娠したの。私……」
「汚らわしい!」
母はテーブルを叩き、立ち上がりました。その叫び声は、私の鼓膜を突き刺さんばかりでした。
「嫁入り前の娘を、よくもそんな目に! 順番も守れないなんて、なんて破廉恥なの。あの男!それに母親は、一体どんな教育を受けてきたの! 私がこれまでどれだけ大切に、手塩にかけてあなたを育ててきたか!」
母の怒りは、私への心配ではなく、自分のプライドが傷つけられたことへの憤りに満ちていました。「娘を汚された」という被害者意識だけが肥大し、私の意志や新しい命への祝福など微塵も感じられません。
「お母さん、落ち着いて。私たちは喜んでいるし、これから二人で……」
「認めない! そんな不潔な結婚、私は絶対に認めません! 今すぐその子をおろしなさい。まだ間に合うわ、私が信頼できる病院を探してあげる。なかったことにすれば、まだやり直せるから……」
実の親の口から出た「おろしなさい」という言葉。それは、私の心を粉々に砕くのに十分な破壊力を持っていました。私が震えながら立ち尽くしていると、母は狂ったように上着をひったくり、玄関へ向かいました。
「どこへ行くの!?」
「決まっているでしょう。あの厚顔無恥な親子に、一言物申してやるわ。娘をたぶらかした責任を、どう取るつもりなのかしら!」
止める間もありませんでした。母はタクシーを呼び、祐一さんと彼の母が待つ家へと怒鳴り込みに行ったのです。
後を追って到着した私が目にしたのは、阿鼻叫喚の光景でした。
「責任を取りなさい! 私の大事な娘を傷物にして、平気な顔をして笑っているなんて! あなたたちのせいで、私の人生はめちゃくちゃよ!」
住宅街に響き渡る母の叫び声。近所の人が何事かと窓を開けています。玄関先で、祐一さんが必死に母を止めようとしていましたが、母はその手を振り払い、彼の母に対しても罵言を浴びせ続けました。
「あなたのような親がいるから、息子もこんな無責任になるのよ! 」
彼の母はただ黙って、母の暴言を受け止めていました。その顔は悲しみと困惑に満ち、私の心は罪悪感で張り裂けそうでした。祐一さんの表情からは、徐々に感情が消えていきました。慈しみ育ててくれた自分の母を、目の前で侮辱されたのです。そうなるのも当然でした。
結局、その場は警察を呼ばれる寸前で、私がなんとか母をタクシーに押し込み、帰らせることで幕を閉じました。静まり返った玄関先で、私たちはしばらく言葉を発することができませんでした。夜の風が、冷たく通り過ぎていくだけでした。
🔴【続きを読む】過干渉を正義と信じる母。母が頼ったのは祖母だった
あとがき:予想通りではあったけれど…
母親のまさかの大暴れ。まさかここまでとは、娘の里奈からしても驚きでしょう。しかし一番迷惑を被ったのは祐一一家……果たしてこれからどんな選択を迫られるのでしょうか。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










