「はじめはさ、お袋『2万円じゃ少ないわね』なんて言ってたらしいんだ。でも俺が、紗枝が産休に入ったらキツくなるからって、なんとか納得させたんだよ」
衛は手柄を立てたかのように笑いますが、私は笑えませんでした。産休中で収入が減り、これから子どもにお金がかかる時期。その2万円があれば、空のおむつだって、将来のための貯金だって、もっと余裕を持ってできるのに。
私の両親は定年を迎え、決して裕福ではありません。それでも「あんたたちはこれから物入りなんだから、自分たちのために貯めておきなさい」と、お祝いこそくれど、1円だって受け取ろうとはしません。
「お母さん、今日も趣味のダンスに行ったんだって。元気でいいよな」
無邪気な衛の言葉を聴きながら、私は空の柔らかい頬をなでました。この違和感は、私の心が狭いだけなのでしょうか。それとも、家族としての「当たり前」の形が、どこか歪んでいるのでしょうか。
不満を口にすれば、義母との仲がこじれるかもしれない。衛を傷つけるかもしれない。そう自分に言い聞かせ、私はまた、重い溜め息を飲み込みました。 ※1
「2万円の仕送り」不満を伝えられない…
本来であれば、わが子のために少しでも貯蓄したいものです。ところが、「義母へ毎月2万円の仕送り」が課されており、自分たちの生活費を削って捻出する日々。紗枝は不満を募らせます…。
夫・衛は母子家庭で育ったため、母に恩返しをしなければと考えているようです。ですが義母からは、結婚祝いも出産祝いも、もらったことがありません。そればかりか、結婚式のときの義母の着付け代や親せきの宿泊費は、衛夫婦が負担したのです。また、義母から仕送りに対してお礼を言われたこともありません。
豪華なランチに旅行…義母の豪遊
SNSには、仲間と豪華なランチを楽しんだり、旅行に行ったりする写真がアップされています。そのランチ代や旅行代の一部が、私たちの生活費から削り出した2万円だと思うと、虚しさがこみ上げます。
ある日、義母から「プレゼント」が届きました。
「紗枝さん、これ使って。空くんにいいと思って買ったのよ」
届いたのは、有名ブランドの抱っこひもでした。普通なら大喜びするところですが、私の心は冷めていました。
「ありがとうございます……大切に使いますね」
電話口では明るく振る舞いましたが、切った瞬間、スマホを置く手が震えました。 この抱っこひも、だいたい2万円くらい。……そう、私たちが先月送った「仕送り」とほぼ同額です。 ※2
義母は、生活に困っている様子はありません。SNSには、楽しそうな日常が投稿されています。そして、抱っこひものプレゼント…。義母に対して、不平・不満ばかりが募ります。
このままではダメだと思い、紗枝は夫に思い切って相談します。
「仕送り」に対する価値観
「私たちの今の貯金額、知ってる? 空の教育資金、このペースじゃ目標に届かないよ。私の両親はね、定年後も自分たちのことは自分たちでやって、空のためにお金を貯めておきなさいって言ってくれる。お祝いもたくさんくれた。でもお義母さんは? 結婚式の費用も、着付け代も、全部私たち持ち。祝儀もなし。出産祝いもなし。それでいて毎月の仕送りはお礼もなしに受け取って、趣味に明け暮れてる。これ、おかしいと思わない?」
「それは……お袋、そういうの疎いっていうか、悪気はないんだよ。甘えてるだけだって」
「その『甘え』のせいで、私がどれだけストレスを感じてるか、考えたことある? 抱っこひもをもらった時も、素直に喜べなかった。だって、私たちが送ったお金で買ったんだなって思っちゃったから。そんな風に思う自分が嫌なの。お義母さんのことを嫌いになりたくないの」
私の声が少し震えました。ただ不満をぶつけたいわけじゃない。このままでは、義家族との関係が修復不能なほど壊れてしまうという恐怖があるのです。 ※3
「悪気がないから」というのは、理由にはなりませんね。仕送りをするのであれば、両家へ平等にするべきです。そして、いちばんの問題は、自分たちの生活を切り崩して仕送りをしている、という事実です。お金の支援は、余裕があるときにするべきですね。
「恩返し」という言葉に、妻はストレスを感じていました。夫は、もっと早く気づくべきでしたね。ですが、義家族との関係が壊れてしまう前に、妻は気持ちを吐き出すことができ、よかったです。夫も、今回のできごとがきっかけで、仕送りについて考えを改めます。
家族の「当たり前」に飲み込まれる前に、きちんと話し合うことが大切ですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










