義母には肩から腰にかけてまで、広範囲にわたるやけど痕があるらしい。奇異な目で見られたり、他人に不快な思いをさせるのでは…と、彼女は大浴場を控えている。だからこそ、テレビの温泉を羨ましそうに観ていたのだろう。
彩音「知りませんでした…」
徹「まあ、母さんも隠してたから仕方ないさ。それにしても雅人、お前からきちんと話してなかったのか?」
雅人「ごめん。彩音に任せればいいと思ってたから」
彩音の暴走に拍車をかけていたのは、雅人の人任せな部分や言葉足らずなせいもある。ふがいない弟に、徹は苦笑をもらした。
徹「おいおい、還暦祝いは息子の俺たちが考えるべきだろう」
雅人「そうだな…ごめん」
雅人も反省したので安心した。そのとなりで急に大人しくなった様子の彩音に、私は声をかけた。 ※1
失敗してしまった、義弟の妻
知らなかったとはいえ、大好きな義母のために計画を立てたことが失敗に終わってしまい、彩音は落ち込みます。義弟のフォローも足りませんでした。
ですが、今回のことがきっかけで、改めて還暦祝いの計画を立て直すことができます。
新しいお祝い計画
佳奈子「それでね、徹とも話し合ったんだけど、温泉付き客室にしたらどうかなって」
個室に温泉がついている旅館なら、義母もよろこぶだろう。
彩音が企画してくれた旅館にももちろんあるが、ただでさえ高級ホテルなのに、さらに温泉付きとなれば価格は跳ねあがる。そのため、もう少し値段に手が届く、それなりの旅館をいくつかピックアップした。
佳奈子「パンフレットも持ってきたの。この中から話し合って決めない?」
徹「あと、プレゼントは俺と雅人で考えるよ。母親の還暦だ。きちんと俺たちで選びたい」
私たちの言葉を受けて、彩音は黙りこむ。何か言い返されるだろうか…と覚悟したとたん、彼女は涙ぐみ、謝罪した。
彩音「ごめんなさい…」
予想外の展開に、私は驚いた。 ※2
彩音は、涙を流してしまうほど、今回の暴走を深く反省したようです。ですが、彩音のおかげで、素敵な還暦祝いができそうです。
全部見抜いていた義母
お祝いは大成功で、義母は用意された自分の個室の露天風呂にとてもよろこんだ。夕食は私たち夫婦の個室で、みんなで集まって宴会を開く。そのなかで、義母がこっそりと話しかけてくれた。
義母「佳奈子さん、ありがとう。今回の準備で、彩音さんを説得してくれたそうね」
義母の発言に驚いた。どうやら徹から事情を聞いたらしい。彼女は彩音の暴走にも、ずっと気づいていたようだ。
義母「以前から『いい嫁に見られたい』って気持ちが強かったものね。でもあの子も、ちょっと複雑な事情があるのよ」
佳奈子「事情ですか?」
彼女が語るには、原因は彩音の家庭にあるという。礼儀知らずで、毒親傾向な彩音の両親。結婚する際も義母を見下した発言をし、数々の無礼を働いたそうだ。
義母「彩音さんはそれを恥じて、申し訳なく思ったみたい。私に嫌われないよう一生懸命になったの。でもちょっと、方向性を間違えていたわね」
佳奈子「そうだったんですか…」
「親の失礼な態度」を払拭するために「いい嫁ポイント」を、必死に集めていたのだ。だからこそ過剰にアピールし、同じ立場の私をけん制した。理解はできないが、そういった行動原理があったのだろう。
それに毒親がいたぶん、よけい優しい義母に惹かれたのではなかろうか。彼女が義母に向ける視線にはいつも「憧れ」や「尊敬」の色があった。だからこそ、義母によろこばしくない温泉旅行を企画したのを悔いて涙したのかもしれない。 ※3
実は義母は、彩音の暴走にずっと気づいていました。そして、裏で加奈子が苦労していたことも知っていたのです。彩音のせいで、モヤモヤすることもありましたが、義母がすべてを見抜いており、佳奈子は救われた思いでした。
育った環境は、大人になっても尾を引くものです。彩音がしたことは、間違いだったかもしれませんが、これからは自分の家族と信頼関係を築いていけそうですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています










