ママの再就職には多くのハードルがある
一度離職してからの再就職には多くのハードルがあります。仕事探しのためハローワークに通ったり、少しでも長く働けるようにと資格取得したりと、さまざまな準備をしなければなりません。
しかし、子連れでハローワークに行くのは躊躇(ちゅうちょ)するもの。公的な職業訓練制度もあるとはいえ、資格取得や再就職までには時間や手間がかかることが考えられます。
さらに、働くためのスキルは申し分ないにも関わらず、応募しても条件面での折り合いが合わず、選考から漏れてしまうことがあります。
せっかく仕事への意欲があるのに、ママだからという理由で仕事復帰できないという苦悩を抱えている……そのような方のために、再就職への一歩を応援する「ママボノ」というプログラムがあります。
今回はママボノを開催している認定NPO法人サービスグラントの樫尾直美さんに、プロジェクトの内容や実際に参加したママたちの特徴などについて伺いました。
おひざに抱っこで仕事復帰を疑似体験。ママボノとは
ママボノとは、再就職や仕事復帰を考えるママが、これまでの仕事の経験やスキルを生かしながら、チームでNPOの支援活動を行うものです。育児中心の生活から仕事モードへのウォーミングアップとして多くの人が参加しています。
子供を抱っこしながら参加するママも
2016年は、東京と大阪で開催され、東京は66名で10チーム、大阪は12名で2チームの編成で行われました。1チームにつき6名程度での活動となり、子供連れで参加できるのがママにとってはありがたいポイントです。
「対象となるのは、育休中あるいは再就職を目指している方々。お子さんを抱っこしながら参加している方も多いですよ」(樫尾さん)
離職中のママが参加した年もありますが、四期目(2016年度)は参加者のほとんどが育休中のママでした。これまでに参加した離職中ママは、いったんは仕事をやめて専業主婦という道を選択。育児モードの生活を送っている中、ママボノの存在を知り、参加を決意したそうです。
「昨年度の参加者で離職中の方は一人だけでした。今年度はもっと離職中のママにも参加してほしいと思っています」と樫尾さんは強調します。
プロジェクトはチーム単位で
プロジェクトはママたちがチームで進行。支援を必要としているNPOがもつ課題を解決するための後押しをします。一つの目標に向かって話し合いを進めることで、仕事復帰へのイメージがわきやすくなるといいます。
活動期間は約2ヶ月。チームごとにメーリングリストやSNSで連絡を取りながら、チームミーティングや支援先訪問、個人作業などを通し、限られた時間の中で成果物を作成し、支援先に提出します。
この「成果物」とはチラシ制作のほか、ウェブサイトの改善案のとりまとめ、マーケティング調査など多岐にわたります。いずれも支援先からの評価が高く、支援先へのアンケート結果でも、「ママボノの支援を受けて良かった」という回答が100%でした。
「成果物を作るというプロジェクトは、ママたちが今までの仕事スキルや経験を生かせる場面が多いものです。また、ママならではの細やかさを発揮できることから、ママボノプロジェクトは各支援先で高評価をいただいています」(樫尾さん)
実際にママボノへ参加した人たちの声
不安を感じながらも、仕事復帰への第一歩としてママボノに参加した方々の声をご紹介します。
「ママ友とはなかなか仕事の話をしにくかった」
育休中ママも離職中ママも、仕事復帰後のイメージはなかなかわかないかもしれません。ママボノの参加者たちも、プロジェクト参加前は同じような不安を抱いていたものの、「プロジェクト終了後のアンケートには、仕事復帰への自信がついたという声が数多く挙がっていました。ワーキングマザーとしてのロールモデルや仲間が見つかったという方もいます」(樫尾さん)。
また、「ママ友とは仕事の話はしにくい」「仕事の話ができるつながりが欲しかった」という声も。確かに、子供を通じて仲良くなったママ友には、仕事の話をしづらいかもしれません。そんな中、ママボノの参加者間では同じ土台で話ができるという安心感があったようです。
「今まで自覚していなかったスキルを発見できた」
参加者の中には、「仕事復帰に向けて気持ちがさらに高まった」という方も。事実、プロジェクト終了後のアンケートで、100%の参加者が「参加をしてよかった」と回答、その主な理由は「仕事にプラスになった」「ネットワークが広がった」「視野が広がった」などでした。
さらに、「異業種交流ができて視野が広がり、自分自身が自覚していなかった新たなスキルに気づいた」「復職へのスタートラインに立てただけでなく、さらなるチャレンジができそうだ」という感想もありました。仕事復帰に対する不安を解消するだけなく、自分を「仕事モード」へスムーズに切り替える場としても、ママボノが役立っているのですね。
支援先のニーズとママならではの強みが一致
ママの支援を希望する団体には、女性・子育て・福祉系分野に携わるNPOなどが多く、プロジェクトでは社会人としてだけではなくママの視点や強みを生かすことができます。
プロジェクトがスタートしたら、まずは時間をかけてヒアリングを行います。約2ヶ月という限られたプロジェクト期間で、支援先への理解を深め、プロジェクトの目標として設定されている成果物を完成させるためには、分担やスケジューリングが重要です。
ママたちの作成する成果物は、育児をする当事者ならではの視点ときめ細かさがあるとのこと。写真はその一例です。
「限られた時間の中で話し合い、成果物を完成させるママボノでは、女性ならではの共感力やコミュニケーション力が生きています」と樫尾さん。支援先とママの両者にとってwin-winの関係であるといえそうです。
無理せず仕事復帰への第一歩を
ママボノは2017年度もさまざまなイベントを予定しています。東京と大阪で行われるプロジェクトだけでなく、ママボノを紹介するイベントや説明会も開催予定です。育休中ママだけでなく再就職を目指すママにとっても、ママボノは大きなきっかけの一つになるでしょう。
仕事復帰、再就職というと肩に力が入ってしまうものですが、ママボノのように少しずつウォーミングアップしながら前に進むことができる仕組みが増えると良いですね。今回の記事も、決して無理をするのではなく、ママたちが自信をもって仕事復帰できる一助となれば幸いです。