育児休業制度改正で最長2年取得可能に
厚生労働省は2017年5月、育児・介護休業法を改正すると発表しました。その内容は、「保育園に入れない場合、最長2年間取得できる」というもの。また、子供が生まれる予定のある従業員に対し、事業主が育児休業に関する制度内容などを知らせる努力義務と、未就学児を育てながら働いている人が子育てをしやすいよう休業制度を設ける努力義務が創設されます。
今回のこの制度で、ママたちの注目を浴びているのは「育児休業が最長2年取得できる」という点ではないでしょうか。
改正後の制度が適用されるのは今年、2017年の10月1日から。原則として育休の期間が「子供が1歳になるまで」と考えられていることは変わりませんが、現在の制度ではそこから育児休業を延長できるのは半年間に限られています。そこから大きく変更されるのは、再延長が可能になる、という形で最長2年まで育休が取得できるようになることでしょう。
延長、再延長する際の理由に関しての変更はなく、保育する者が病気である、保育所に入れないなどです。現時点では、対象など細かい点が掲載されていないため、これから取得予定の人、産休や育休中の人はハローワークもしくは勤め先に確認することをおすすめします。
政府はこの制度改正で保育園へ入園できないことを理由とする離職率を下げることを目的にしており、子育てをしながら働く労働者が育児休業制度を取得しやすいような職場環境づくりも促進すると発表しています。
- 厚生労働省「保育園などに入れない場合2歳まで育児休業が取れるようになります!」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/291001kaiseiri-fu.pdf,2017年5月24日最終閲覧)
再延長のメリットとは
- 多くの時間を育児に専念できる
- 保育園に入園できるチャンスが増える
- 子供の病気が多い時期の復帰を避けられる
育休が最長2年取得できた際に、果たしてどんなメリットがあるのでしょうか。私なりに上記の3点を挙げてみました。
2年間育休を取得するにはもちろん正当な理由が必要ですが、乳児から幼児に変わる時期は子供にとっても両親にとっても、成長が多く見られる時期なので貴重な時間になるのではないでしょうか。
また、再延長できることで保育園に入園できるチャンスが増える点は、今回改正する際のメリットではないかと考えます。
その他、私の経験上、0~2歳児は何かと病気が多いので、保育園から菌をもらってくるのは承知の上ですが、ほとんどの場合、1度の病気が1日で治ることはなく、復帰早々、同僚たちに頭を下げて休んでいたのを覚えています。
- 渡辺とよこ(監)「写真でわかる!はじめての女の子育児」58(西東社,2013)
保育園を作らない限り少子化は続く
メリットを挙げましたが私はこの制度改正、根本的な問題を解決しているようには思えません。冒頭でも触れましたが、今回国は、「保育園へ入園できないことを理由とする離職率を下げるという目的」として制度改正に挑みました。
しかし、働きたいママ達が懸念している点は、「再延長して保育園に入ることができるのか」ではないでしょうか。
保活を経験している方はご存知かと思いますが、1歳児クラスでの入園は至難の業。これはもう運としか言いようのないほどの狭き門です。
しかしその次に狭き門なのが、2歳児クラスになります。厚生労働省のデータによると、低年齢児(0~2歳)の待機児童は全体の約8割、その内の約7割が1~2歳児なのです。
内閣府が、出産後も継続して就業を希望していたができなかった女性などに調査した「就業を継続するために必要だと思うこと」によると、全体の約6割が「認可保育園・認証保育園等に子供を預けられれば」と解答しています。
つまり、最長2年間の育休を取得できたとしても、安心して預けられる場所がなければ復職に至らず、離職せざるを得ない状況を回避することはできないでしょう。
国としては、少子化が続いている今、保育所を増やしても今後定員割れするのを恐れているのかもしてませんが、保育所が増えない限り子供を産もうと考える女性が増えないのではないでしょうか。保育園を作る予定がないのであれば、今回再延長する際の給付金を、待機児童解消のために利用することはできないのでしょうか。
ママ達にとって育休のゴールは「安心できる保育所への入園と職場復帰」なのです。
育休を再延長したその後、確実に保育園に入ることはできますか?
ママが聞きたいのは、この1点なのではないでしょうか。
- 厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日))」(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000098603.pdf,2017年5月25日最終閲覧)
- 内閣府「「第1子出産前後の女性の継続就業率」の動向関連データ集」(http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/k_39/pdf/ss1.pdf,2017年5月26日最終閲覧)