発達障がいの子供には、どんな特徴があるの?
発達障がいの子供の共通点は、話し言葉のように目で見て確かめることができないものの意味を理解することが上手ではないことでしょう。コミュニケーションがうまくとれない、マイペースさが目立つ、生活習慣が身につきにくいなどが共通点だと言われています。
一方で、発達障がいの子供の多くは視覚的情報を理解することが非常に上手だと言われています。記憶力がよい、好きなことには粘り強い、色やマーク・形などに興味を持つなどが共通点で、目で見て理解することが得意なのです。
発達障がいの子供は、日常生活の習慣を身につけることが難しいですが、得意なところをうまく活用して生活できるように、大人がサポートしてあげることで、生活の中で生まれる困難を乗り越えることができるのです。
発達障がいの子供がぶつかる困難を乗り越える方法
特に日常生活で覚えたいこととしては、下記の3つが挙げられるでしょう。
- トイレ
- 食事
- 着替え
これらは、毎日欠かさず行うことだからこそ、発達障がいのある子供でも、身につけて自立できると良いですね。
日常生活でぶつかりやすい3つの困難を乗り越えるアイディアを紹介していきます。ママの負担が少しでも減るようになります。
トイレ
一人でトイレを使えるようになるためには、「膀胱をコントロールする技術」と「トイレを使う技術」を身につける必要があります。膀胱のコントロールとは、いわゆるトイレトレーニングのことで、一定の時間、膀胱に尿をためておけるようになることです。そして、尿意を感じて、人に伝えたり、自らトイレに行ったりすることで身につけます。
発達障がいの子供が、トイレを身につけることが難しいことには、5パターンの問題が考えられます。
- トイトレがうまくできない
- トイレの便座に座りたがらない
- トイレットペーパーを一人で使うことができない
- そもそも、トイレに行きたがらない
- 外出先のトイレにあるジェットタオルや水の音が苦手
それぞれの課題ごとに、アイディアをご紹介していきます。
トイトレがうまくできない
うまくトイレをすることが身についていない場合、膀胱に尿をためておくことができない可能性があります。トイトレを始める前に、まずは膀胱に尿をためておくことが大切です。
オムツを外そうとする前に、1時間半から2時間くらいおしっこと間隔が空くかどうかを確かめてみましょう。間隔が空いてきたら、トイトレを始めましょう。発達障がいの子供の特徴に合わせたトイトレの手順は以下になります。
1. トイレに座る練習を始めます。最初は1日2回くらい、おしっこが出そうな時間を狙って座らせてみます。トイレでの成功が増えてきたら、時間を決めて、座らせる頻度を増やします、朝の起きがけのなどが出やすいかもしれません。
2. 時間排泄で成功するようになってきたら、時間で誘うのを遅らせて、子供が尿意を示すサインを出すかどうか待ってみましょう。そして、午前中はトレーニングパンツにしてみるなど、オムツを徐々に外していきます。この時、子供によっては、トイレカードを用意するなど、トイレの伝達方法を教えていきます。
トイレの便座に座りたがらない
感覚の敏感さを持ち、便座に座ることに抵抗を示す子供がいます。そのような場合は、便座シートを使うなど、なるべく心地よい環境を作ってあげられるように工夫をします。
身体が小さくて、便器の穴に落ちるのではないかという恐怖を感じていたり、足を踏ん張れずに、便器の上で姿勢を保つことが難しくて、座るのを嫌がったりする子供もいます。
トイレの便座に座れるようになるためには、以下のようなことを試してみましょう。
- 子供用の便座シートを取り付ける
- 足を置く台を設置する
- 座って見える位置に子供の好きなキャラクターやものの写真を貼る
- 座る時間に見通しを持たせるために、数を数えたり、砂時計を使ったりする
トイレットペーパーを一人で使うことができない
トイレットペーパーを適量に切って使うことが難しい子供もいます。そういう場合は、あらかじめ適量に切ったものを用意しておきます。
子供によっては、「壁に印をつけて、適切な長さを切る」「壁の反対まで引きのばして切る」など、ペーパーを適切な長さに切る方法を伝えて、自分で切らせます。数がわかるようなら、「手に3回巻きつけたら切る」なども良い方法です。
そもそも、トイレに行きたがらない
トイレを嫌がったり、遊びやテレビなどに夢中になっていると、ギリギリまでトイレに行きたがらなかったりして、失敗してしまう子供もいます。
そのような場合は、子供の興味関心を生かした動機付けを探しましょう。上の写真は、家庭でのサポートの一例です。車が大好きな子供に対して、トイレの中にサーキットを描き、トイレができたら、その子供が好きな車などのシールを貼っていくようにして、トイレを馴染みのある所にしていきました。
外出先のトイレにあるジェットタオルや水の音が苦手
発達障がいの子供の中には、音に敏感なことがあります。そのため、トイレの水が流れる音や、公衆トイレのジェットタオルの音に不快や恐怖を感じることがあります。そのため、外出先でのトイレに困難をきたすことがあります。
このような場合、耳栓やイヤーマフなどを使って、音を遮断するなどの配慮が必要となります。
食事
発達障がいの子供には、色々な理由から食事が苦手なことがあります。食べることに意欲がある子供もいれば、意欲がない子供も多く、席を立ったり、遊び食べをしたりして、食事の時間が長くなってしまいがちです。
せっかく作った料理を食べてくれずに、悩むママも多くいると思います。食事が苦手な理由と対処法をご紹介していきます。
集中して食べることが難しい
気が散りやすく、食事への意欲が少ない子供に対しては、集中して食べることにも配慮が必要となります。子供に合わせて、離席しにくい席を作ったり、視野に気が散るもののない設定を考えたりして、食事をする環境を工夫することが大切です。
落ち着いて食事ができない子供には、丈の低いカップボードの位置をずらして、食卓とリビングの間に仕切りを設けただけで、劇的に落ち着いて食事に向かえるようになった子供もいます。
注意が途切れやすい子供には赤の席、席を立ちやすい子供には青の席をおすすめします。
席を立ちやすい子供は、大人が立ち上がるとつられてしまう場合が多いので、炊飯器などは手近に置いておき、大人が席を立つ回数や時間を減らすこともおすすめです。
食具を使うことが難しい
子供が使いやすい食具を選びましょう。持ち手の握りやすさ、すくう大きさや量などを考慮します。子供が食具をどれだけ使うことができているか理解するために、観察すべきポイントは以下になります。
- どのくらい自分ですくって食べることができているのか
- 食具をどう持っているのか
- スプーンやフォークの使い分けはできているのか
- 利き手ではない方の手を、食器に添えることができているのか
以上のようなことを、毎日の食事の場面で、子供の様子を観察し、無理のない範囲で食具の練習をしていきましょう。
また、すくいやすいお皿、食べ物の大きさなども最初は配慮が必要です。子供が上手に食具を使えるように、ママがサポートしてあげましょう。
他にも、持ち方をサポートするお箸も色々と売り出されています。必要に応じて、補助するための道具を活用しましょう。
偏食のある子供には
感覚の問題や、咀嚼の難しさなどがあり、発達障がいの子供の中には、極端な偏食の子供がいます。また、家での静かな環境の中では、好きなものを食べていても、集団の中で決められたものを食べることには、強い拒否やこだわりを示す子供もいます。
偏食指導については、画像の項目を参考にしてみましょう。
コミュニケーションが苦手な子供には
食事の時間は、家族でのコミュニケーションの時間でもあります。
やりとりをするときは、その子供にわかるコミュニケーションの形態、具体物、シンボル、絵カード、写真カード、文字カードなどを使用しましょう。絵や写真カードがあることで、言葉でも伝えやすくなります。また、視覚支援は、人に手渡さなければならないため、確実に人に向かって発信することになります。
子供は、どうしても大人から話しかけることが多いため、子供からの自発ではなく、応答のコミュニケーションになりがちです。しかし、食事の場面では、子供の方から言葉を使って大人に援助を求めやすく、「〜ください」や「〜減らしてください」などの交渉も練習できる機会になります。
子供の好きなものを使って、伝える練習や交渉の練習をしていきましょう。
着替え
知的な遅れのあるなしに関わらず、着替える意欲がなく、手順が覚えられず、着替えの苦手な子供がいます。
一人で着替えることができても、靴下が反対だったり、ボタンの掛け違いがあったり、だらしないような着方だったりすることがあります。
着替え中にも関わらず、テレビやおもちゃなどの刺激が気になり、着替えていることを忘れてしまう子供もいます。そのため、だらだらと時間がかかり、ママの声がけが必要になってしまいます。
着替えの技術をどう教えるのか、どこで着替えるのか、手順をどう伝えるのか、意欲を持って着替えさせるにはどうしたら良いのかをご紹介していきます。
着替えに集中できない子供には
着替えの時間は、家庭によって様々です。朝起床してすぐだったり、朝ご飯を食べた後だったり、歯磨きの後だったりして、各家庭で異なりますが、家庭ごとに着替えの時間を決め、流れを一定にして習慣化させることが大切です。
着替える場所には、気が散るものがないような環境を作ってあげましょう。
子供に着替えようとする自発的な動きが見られない場合は、声がけが必要となります。声かけよりも、着替えの合図となるカードを示したり、実際の衣服を手渡したりする方が、スムーズに始められる子供もいます。
脱いでいるのか着ているのか、わからなくなってしまう子供には
着ている服を脱いで、違う服に着替えることは、簡単なことのようですが、着替えているうちに、脱いでいるのか着ているのかわからなくなってしまう子供がいます。「脱ぐ」と「着る」を区別できるようにサポートしてあげましょう。
ある家庭のママは、脱いだ服を入れるカゴと、着る服の入ったカゴの2つを色違いで用意しました。左から右の流れで行えるように設置して、洗面所で着替えさせるようにしました。カゴの色を分けることで、「脱ぐ」と「着る」を区別することができるようになり、洗面所で着替えるようにすることで、脱いだ服を入れたカゴをすぐに洗濯機の所に置けるようになりました。
着替えが一人でできない子供には
「脱ぐ」「着る」の技術はある程度あるのに、注意の問題で手順が続かない子供がいます。
そのような場合は、手順書が役立ちます。自分がやるべき手順を確認できますし、終わりの達成感を得ることもできます。
服の前後がわからない子供には
シャツは前後の判断が難しかったり、どこを持って着れば良いのかわからなかったりする子供がいます。
そのような場合は、シャツの後ろ裾に、ボタンや刺繍などで、持ち位置を示す目印をつけます。目印の意味さえ伝われば、子供が好きなキャラクターの絵や、子供本人の名前を目印にしてもかまいません。
赤いシャツは、シャツを広げるための視覚支援です。実物大の紙の上に位置を合わせて、シャツを広げます。
一人でボタンをはめられない子供には
ボタンをはめる作業には、右手と左手が別の動きをすることが求められます。
最初は、大きめのボタンを一つだけはめるなど、達成できそうなことから始めましょう。机上で、はめる練習をしておくのも良いかもしれません。
はめることができるようになってきたら、首回りなど難しいところをやってあげて、見やすいところを二つ、三つはめるなどにしていきます。
一人で靴下が履けない子供には
最初は、足先を入れてあげて、引っ張り上げるとことから練習を始めます。ソックスのような長いものより、足首の短いものが履きやすいかもしれない。服の持つ位置と同じように、靴下の指で持つところ(靴下の中)にシールや文字の目印をつけておくとわかりやすいです。
かかとの色が違っている、前面に動物の顔が付いているなど、かかとの位置が判断しやすいものも増えています。
一人で靴が履けない子供には
面テープのついているもの、バレーシューズのように操作が必要でないもの、子供が履きやすそうな靴を選びましょう。
かかとにリングがついていると、引っ張るところがわかりやすくなります。金属の輪っか、ゴムバンドなど、子供が扱いやすい素材を選びます。
靴の左右の理解が難しい子供もいます。印をつけるなど、視覚的なサポートを加える方法もあります。
ママのサポートで一つずつ困難を乗り越えよう!
発達障がいの子供は、日常生活の中で困難にぶつかることが多くあります。覚えることが遅くても、子供の得意なことを活かして、ママがサポートしてあげることで、少しずつ身につけていくことができます。子供の成長が遅くて、出口のないトンネルの中にいるような気持ちになるママもいると思います。今回、ご紹介したような方法を試してみると、いつもと違った反応が見られます。ぜひ、試してみてくださいね。
『発達障害の子ものびのび暮らせる生活サポートブック 幼児編』という本では、発達障がいの子供の特徴や、生活の中で大人ができるサポートの方法が丁寧に紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。
本で紹介されている内容をもとに、子供のできることが一つずつ増えて、家族で一緒に成長を実感できるようになると良いですね。