食事の自立はどのようにすれば良いの?
離乳食が完了に差し掛かってくると、赤ちゃんはママに食べさせてもらうだけではなく、自分で手づかみをしたり、スプーンを使ったりして食事をしようとする姿が見えてきます。食事が自分でできるようになってくれると、食事のお世話はぐっと楽になってきますね。
しかし、赤ちゃんたちは初めから上手に自分で食べられるわけではありません。インターネット上では、ママたちから「食事の自立」に関する疑問が寄せられていました。
手づかみからスタートし、スプーン、フォーク、箸と日本人は様々な道具を使って食事をします。いつ、どのように使い方を教え、上達まで導けばよいのでしょうか。
親子カフェで働く、経験豊富な保育士のトマトさんに、子供の食事の自立について聞きました。
手づかみからお箸まで、保育士に聞いたステップと伝え方のコツ
食事の自立は手づかみから始まります。ステップごとの教え始めるタイミングや、伝え方のコツについてご紹介します。どの段階でも子供自身の「やりたい」という気持ちと「できた!」という達成感を大切に進めることがポイントです。
手づかみ食べは「自分で食べる楽しさ」から
食事の自立の第一歩は「手づかみ食べ」。トマトさんは、手づかみ食べは大いにさせると良いといいます。離乳食がカミカミ期に入ったら、手づかみのメニューにチャレンジさせてみましょう。
おすすめは小さなおにぎりや、茹でた野菜やうどんを小さく切ったものなど、離乳食の段階にあった手づかみしやすいもの。おやつでは赤ちゃんせんべいなら、口の中で溶けるので食べやすいようです。
今まではママが口に運んでくれていた食事。それを「自分の手で」食べる楽しさを感じるには、手づかみ食べが一番だそう。また、手のひらを下にして食べ物をつかみ、口に運ぶときは手首を返して食べ物を口に入れる動きは、後でスプーンを使うようになった時の動きとよく似ています。手づかみ食べをしっかりさせると、その後の食事の自立もやる気を持って臨むことができるかもしれません。
手づかみ食べを始めたころは、口の周りが食べ物だらけになったり、ハイローチェアの周りまで食べこぼしで汚れたりしますが、しばらくの辛抱。ビニールシートを敷くなどの対策をしながら、できる限り手づかみ食べに付き合いましょう。
スプーンは「上手持ち」から「下手持ち」に
手づかみ食べで上手に食べ物を口に運べるようになったら、スプーンに挑戦できる時期でしょう。まずはあらかじめスプーンの上に一口大の食べ物を乗せておき、それを口に運ぶ練習からしていくと良いそうです。
初めはスプーンの柄を上からつかむ「上手持ち」。上手持ちで食べ物をすくって食べることが上達してきたら、スプーンの下から持つ「下手持ち」にしてみましょう。最終的には鉛筆のように持って手首を上手に動かして食べる「鉛筆持ち」になります。初めから下手持ちできる子も中には居るそうですが、基本的には段階を追って教えてあげましょう。
スプーンの教え始めはスプーンに食べ物が乗ったまま、スプーンをひっくり返して口に入れてしまう「返しスプーン」になってしまう場合があります。しっかり食べ物を乗せたまま口に入れ、口を閉めて食べ物を唇で取れるように、口の動きも合わせて、根気強く伝えてあげましょう。
フォークは口の力がついてから
フォークはスプーンとほぼ同時に始められますが、フォークに刺してあるものを唇で取って食べなくてはいけないため、口にある程度力がついてからがよいようです。
まずはフォークに小さくした食べ物を刺しておいてあげて、手で上手にフォークをつかみ、食べ物を唇で取れるようになってから自分で使うようにしましょう。刺した食べ物が大きすぎると喉に詰まらせてしまうので、食べ物を小さくするのもポイントだそうです。
保育園に通っている場合は、給食に出ている食べ物の大きさを参考にすると良いでしょう。また、フォークは先がとがっているので、ケガをしないように見守りましょう。
箸は遊びに取り入れて、簡単なものからスタート
スプーンやフォークまでは順調に進んでも、箸を教えることに苦労しているママは多いかもしれません。箸は片方の手で2本の箸を使わなくてはならず、手の動きにコツがいりますね。
箸の持ち方は、以下の手順で教えましょう。
- 親指と人差し指を立て、鉄砲の手を作る
- 中指と親指の間に箸を渡し、自然に握る(鉛筆持ち)
- 薬指と親指の間にもう1本を差し込む
- 上の箸だけを動かす
すでにスプーンやフォークを鉛筆持ちで持てている場合は、そのまま箸に持ち替え、下に1本動かさない方の箸を差し込むだけで形になります。動かすにはコツがいりますが、力を入れずに持つように少しずつ伝えましょう。
トマトさんは、箸を教えるタイミングは食事中だけではなく、遊びからスタートするのがおすすめだといいます。食事中では早く食べたい焦りや、思うように食べられないイライラが募ってしまって「もう使わない」と言い出すことになりかねないからです。
箸を使って身の回りの物をつかんでみたり、持ち上げてみたりして「できたね!」と自信をつけてあげることから始めましょう。食事の時に使うのが苦手な時は、初めの数分だけ箸を使い、あとは使わなくても良いようにするなど、無理がないようにします。
上手にできないときは無理強いせず、遊びの中でトレーニングを
食事の自立をさせたいとは思っても、本人のやる気が追いつかない場合がありますね。新しい道具を始めたばかりの時は、思ったように食べられないことに子供がイライラしてしまい、進まないことがあるでしょう。
トマトさんは、そのような時は無理強いをせず、視点を変えて「遊び」としてトレーニングをすることがおすすめだといいます。
手先を使う遊びは、すべての道具を使うことにつながる
トマトさんによると、道具の使い方がうまくいかない時には、手先を使う遊びを取り入れるとよいそうです。糸通しや、細かいものをつまむ遊びなど、指先を器用に使うように意識していくと、道具を思い通りに使えるようになっていくでしょう。
食事ではモチベーションが保てない子供でも、遊びの中で楽しくトレーニングできれば、いつの間にか道具使いも上手になり、自信につながりますね。
手先が器用に使えるようになってきたら、箸なら豆つまみ、スプーンならおままごとなど、遊びの場面の中で道具を登場させてみるのもよいですね。
「できないから練習させる」というのではなく「遊んでいたらいつの間にかできるようになった」という方が、子供にとっても負担がなく、上達できる道になります。
本人のやる気を最優先に、もしできなくても食卓には置く
なかなかうまくできずに本人が自信を無くしてしまったとき「もう使いたくない」と言われたら、箸やスプーンを食卓に出さないようにしていませんか?
トマトさんは「もしできなくても、食卓には道具を出してあげてください」と話します。家族で楽しく食卓を囲み、パパやママが道具を使って上手に食べているのを見て「僕(私)もやってみようかな」という気持ちになるかもしれません。その時、その場に道具がなければ機会を逃してしまいますね。
いつやる気がでるかわからないため、いつでも使えるように食事の道具は出しておいてあげましょう。また、「自分の物」という意識があるとやる気がでることがあるといいます。できれば道具は一緒に買いに行き、選ばせてあげることもおすすめですよ。
食べる楽しさを感じながら、自立よりも笑顔中心の食事タイムに
食事の時間は家族にとって大切なコミュニケーションの時間。いつでも笑顔を大切に、食事を楽しみたいものです。食事の道具を使って上手に食べられることは良いことですが、そのために笑顔がなくなってしまうのはもったいないですね。
道具の使い方は食事以外の時間にも少しずつ伝え、食事の時にどれだけ道具を使って食べるかは、本人のやる気に任せるのがよいようです。「できる」という楽しさを感じてくると、だんだん積極的に道具を使って食べられるようになるでしょう。
家族で囲む食卓が楽しいと、食事そのものもとてもおいしく感じるもの。自立よりも笑顔を大切にして、食事の時間を過ごしましょう。
取材協力:親子カフェHedgehog the Rainbow見守りスタッフ トマトさん
公立保育園に15年間勤める保育士。保育士をする傍ら、アロマセラピストやボディケアの仕事もする中で「もっとママたちを癒し、子供に関わる仕事がしたい」と感じ、親子カフェの見守りスタッフを始める。日々頑張るママたちがホッとする時間を作ることが、仕事のやりがい。