認可保育所は入園選考がある
国の定めた設置基準を満たした保育園は「認可保育所」と呼ばれます。区市町村が運営する公立保育所と、社会福祉法人などが運営する私立保育所があります。どちらも公費で援助されており、保育料が比較的安いことが特徴です。保育料は市区町村が定める所得の基準や、子供の年齢によって決定します。
認可保育所の申込みが受け入れ人数を上回った場合には、利用調整(入園の選考)が行われます。選考の結果選ばれた家庭のみが、認可保育所を利用することができるのです。
選考基準は勤務時間や生活状況による「点数」
入園選考は「選考指数」や「利用指数」と呼ばれる点数を基準にして行われます。指数の設定は区市町村ごとに異なり、自治体のホームページや申込み用の冊子などから確認することができるでしょう。
指数は以下のような項目に沿って決められています。
- 労働
- 求職
- 出産
- 病気
- 看護・介護
- 災害
- 職業訓練
労働や介護にあたる時間が長いほど指数が高く、入院も長い方が指数が高くなります。細かく状況が区切られているため、ほんの数時間の労働時間の差や、就労や介護の日数の差で入園の可否が分かれることがあります。
- 世田谷区「選考方法について」世田谷区(http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/103/129/1809/d00005740.html,2017年6月20日最終閲覧)
- 北区「保育園の入園申請(利用調整方法)」北区(https://www.city.kita.tokyo.jp/k-hoiku/kosodate/hoikuen/hoikuen/moshikomi/shinsa.html,2017年6月20日最終閲覧)
- 東京都福祉保健財団「認可保育所と認証保育所の違い」とうきょう福祉ナビゲーション(http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/contents/tokushu/ninsyo/ninsyo_02.html,2017年6月20日最終閲覧)
- 東京大学「東京大学で子育て」東京大学(http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/hoiku/02.html,2017年6月20日最終閲覧)
- 世田谷区「認可保育園等保育料の改定について(平成29年9月)」世田谷区(http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/103/129/1809/d00148461.html,2017年6月20日最終閲覧)
- 新宿区「幼稚園・保育園・子ども園等の保育料について」新宿区(http://www.city.shinjuku.lg.jp/kodomo/hoiku02_002036.html,2017年6月20日最終閲覧)
- 北区「保育の利用基準表」北区(https://www.city.kita.tokyo.jp/k-hoiku/kosodate/hoikuen/hoikuen/moshikomi/documents/hoikunoriyoukijyunnhyou29_4.pdf,2017年6月20日最終閲覧)
- 世田谷区「保育の調整基準」世田谷区(http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/103/129/1809/d00005740_d/fil/tyouseikijunn.pdf,2017年6月20日最終閲覧)
意外と知らない?指数に関するポイント
保育園の選考に「指数」が大きく関係することはわかっていても「いったい自分は何点もらえるのか」すぐにわからないことがありますよね。また「保活」という言葉が一般的になっていく中で、指数に関するいろいろな噂を耳にすることもあるのではないでしょうか。
保活を始めるなら押さえておきたい指数の知識を「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんに聞きました。
短時間勤務する場合も「定時」での申請が認められている自治体が多い
保育園に入園した後、短時間勤務をしようと考えているママはいますよね。そのとき、保育園の申込用紙に書くのは時短の勤務時間か、会社が定めている定時の勤務時間か悩むところです。
普光院さんによると、自治体によっては定時の勤務時間での申請を認めている自治体が多くなってきているとのこと。法律で3歳までの時短勤務が認められている一方で、保育園の選考上点数が低くなり、不利になるようなことはするべきでないという判断からだそうです。
知らずに時短勤務の時間で申請してしまうと、貴重な「就労」部分の点数が低くなってしまうかも。申請前に自治体に確認しましょう。
希望園は「通える範囲で」視野を広げて書く
入園を希望する園を書く部分は、空欄なく申込み園を書かなくては不利になるのでしょうか。普光院さんによると、申込み園を多く書いたからといって有利になるのではなく、通える範囲の園だけを書くとよいそうです。
せっかく内定が出ても、遠くて通えなかったり、園が気に入らなかったりして辞退してしまうと、その後の選考で不利になる自治体もあるようです。
そうはいっても、少しでも入園できる可能性がある園は多い方が良いですよね。園探しのときに気を付けるべきことは、家から駅の方向だけを見るのではなく、駅と反対側にある園も視野に入れること。また、電車を使って隣の駅に行くと、意外にも競争率の低い園が駅前にある場合があるそうです。
地図上だけで判断せず、広い視野で希望園の候補を洗い出しましょう。そして応募する前にできる限り見学をし、内定後に辞退しないようにしましょう。
祖父母が保育できない理由は明確に書く
申込書の中に、祖父母の状況を書く欄がある自治体があります。住所や就労の情報を書く場合や、同居の場合は就労の証明書が必要になるケースがあるため、注意が必要だと普光院さんはいいます。
「同居していないけれど近くに住んでいる」という場合には、その祖父母が日中子供を保育できない理由を明確にできるとよいそう。市内や隣の市など、預けに行けそうな距離に祖父母がいる場合には、空欄や別紙に「就労している」「親の介護中」「病気」などと状況を添えるとわかりやすいですね。介護や病気は証明しにくいですが、もし可能なら診断書や看護・介護されている人に対する医師の診断書原本または、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、介護保険被保険者証等のコピーを添付しましょう。
就労実績のない「保育ママ」「認証園」は加点がないことがある
多くの自治体が、認可園を申し込む前に、保育ママや認証保育園に入園していた場合には加点をつけています。しかし、普光院さんは「就労せずに預けていた場合には、加点されない場合があるため気を付けて」といいます。
認可園の保活が激化してきたため、多くのママは1点でも加点が欲しいと思い「前もって保育ママや認証園に預けよう」と思うママが増えてきたよう。こうした実態に自治体側が反応する形で「就労していない場合は加点なし」に変更されたと考えられます。
また、0歳児の場合のみ、就労して認証園や保育ママに預けているママと、育休から復帰するママの点数を同じにしている自治体もあるそうです。
せっかくお金をかけて保育ママや認証園に預けても、加点がなければ困りもの。あらかじめ自治体に確認をしましょう。
点数の付け方は自治体によって違う!まずは入園案内を入手する
保活の情報をインターネットを通じて調べているママは多いでしょう。しかし、入園選考の点数をどのようにつけるかは、自治体によって全く違います。そして、毎年と言っていいほど内容が変わると普光院さんはいいます。
まずは、前年のものでも良いので入園案内を手に入れることが大切だそう。基本的な就労や介護などの指数はもちろん、調整指数と呼ばれる加点や減点を定めた部分もしっかり確認しましょう。
自治体によっては育休明けのママに加点をつけていたり、保育士、看護師のママは加点していたりする場合があるようです。意外な部分に加点や減点があるかもしれないため、じっくり見てみましょう。
そして入園申込みの時期には新しい入園案内を入手し「昨年と変更はありませんか」と確認することもお忘れなく。自治体によっては窓口で持ち点を一緒に計算してくれるところもあります。どうしてもわかりにくい場合には相談してみるとよいでしょう。
申込書に書ききれない困りごとは、別紙に書く
保育園の申込書には、あまり大きな自由記入欄はありません。そのため、保育園に入れないとどれだけ困ってしまうのかを訴えることができる場所はほとんどないと言えるでしょう。
普光院さんによると、嘆願書や別紙が直接ポイントに結び付くとは言い切れないものの、困っていることは伝えた方がよいといいます。保活激戦区では、同点で多くの申込書が並んでいる状態になるため、伝えたいことを明確に伝えることが入園に結び付くケースも0ではないかもしれません。
その場合は、保育園に入園できない場合の生活面の困りごと(経済的なことや、失職などの大きな心配)を中心に端的にわかりやすく書きましょう。
申込書の記入方法や指数については、保育園を考える親の会が編集した書籍「はじめての保育園」にも詳しく書いてあります。ぜひ参考にしてください。
- 町田市「2017年度保育園等入園の申し込みに必要な書類について」まちだ子育てサイト(https://kosodate-machida.tokyo.jp/mokuteki/4/11/2387.html,2019年9月26日最終閲覧)
- 保育園を考える親の会(編)「はじめての保育園」P76~88(主婦と生活社,2014年)
選考基準をきちんと知ることが入園への近道に
普光院さんが語るのは、まずは情報収集することが大切だということ。自分が住んでいる地域は、待機児童がどのくらいいるのか、近隣の保育園の質はどうかということは、申し込みの時期が来る前に見学をするなどして知っておくとよいでしょう。
また、自治体ごとの入園決定率については、保育園を考える親の会が発行する「100都市保育力充実度チェック」で知ることができます。興味のある方は保育園を考える親の会ホームページで見てくださいね。
申し込みをする際には、選考基準をまずしっかりと確認し、難しい部分は役所に直接問合せをします。地域ごとに差が大きいものであるため、インターネットなどは情報の手助けとして、直接聞くことが大切だと普光院さんはアドバイスしてくれました。きちんと正しい情報を知り、早めに対策をすることが入園への近道になるでしょう。