「絵本ばあちゃん」浜島 代志子さんに聞く、心から楽しむ読み聞かせ
子育てをする中で、手に取ることがある絵本。テレビやスマホなど、子供が物語を目にするツールは増えていますが、ママの声で、いつでもどこでも物語を伝えることができる絵本は、ぜひ楽しみたい育児の味方です。
しかし、絵本を育児に取り入れたいと思う一方、絵本に関する悩みもあるもの。そこで、出版社・すばる舎のご協力のもと書籍『1日7分の絵本で子どもの頭はみるみる良くなる!』(すばる舎)の著者、浜島代志子(はましま よしこ)さんに、ママリ編集部と0~4歳の子供を育てるママたちが、絵本の楽しみ方を聞きました。
「対話」で楽しむ読み聞かせって?
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まずは浜島さんに、読み聞かせのお手本を見せていただきました。読み聞かせを始める前、浜島さんが初めに語ったことは「とにかく自由に、聞いている人は黙っていないでどんどん声を出す」ということ。絵本は読み手が話し、聞き手は静かに座って聞くものではなく、対話を楽しむものだというのです。
お手本で読んでいただいた本は『ね、ぼくのともだちになって!』(エリック・カール/作、偕成社)と『まっくろネリノ』(ヘルガ・ガルラー/作 矢川 澄子/訳 偕成社)の2作品。『ね、ぼくのともだちになって!』には、作品中にほとんどテキストがありません。そのため、子供との対話によって話を進めていきます。
浜島さんは子供と一緒に登場するねずみの気持ちになり『ね、ぼくのともだちになって!』と動物に語り掛け、「この動物はなんだろう?」「この動物さんと友達になれそうかな?」と子供たちに問います。
読み聞かせを聞いていた4歳の女の子は「どうかな?ちょっと困っているから友達にはなれないかもよ」などと、独自の目線で素直な発言。それに対して「参った!そんな発想があったのね」と浜島さんは楽しそうに答えます。
「読み聞かせはね、子供に黙っていさせる必要はないのよ。自由に楽しむこと。それが一番大切なの」(浜島さん)
対話の中で子供たちは考える力を身につけ、どんどん賢くなるといいます。物語を書いてある通りに伝えるよりも、子供にとって楽しく、親子のコミュニケーションにもなる読み聞かせ方法ですね。
絵本ばあちゃんが答える、ママの読み聞かせに関する悩み
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読み聞かせをしていただいた後、浜島さんにママたちが抱える絵本に関する悩みについて聞きました。絵本を楽しみはじめた0~1歳ごろの読み聞かせ方法から、パパの読み聞かせのことなど、ぜひ実践したいアドバイスをたくさんいただきました。
「絵本は食材」子供の成長に合わせて選び、調理する
赤ちゃんを育てるママからは、絵本の選び方や読み方がよくわからないといった悩みが聞かれました。まだ言葉がわからない子供にどのように絵本を楽しませるかはママにとって難しく思えるようですが、浜島さんは難しく考える必要はないと話します。
「赤ちゃんは感性で言葉を聞いています。理解できないということはないのですよ。0歳の時期は視覚や聴覚、触覚が成長しているので、絵がはっきりして興味をひくものや、思わず触りたくなるような絵がある絵本が良いでしょう。触ったりめくったりを楽しむのもOK。なめたりかじったりしてもOK。絵本はおもちゃ、消耗品だと考えましょう。でも、もしボロボロになっても捨てないこと。そのボロボロな本も、後で見ると良い子育ての記念です」(浜島さん)
また、絵だけを楽しんでテキストを読むのが好きではない子には、無理にテキスト通りに読む必要はないといいます。絵を楽しみながら、ママが独自に語り手となって物語を伝えてあげればよいのです。
「絵本は食材。ママたちは自分の子に合わせて食材を選ぶし、調理するでしょう?それと同じなのよ」と浜島さんは語ります。子供の成長や興味に合わせて、ママが自由に読み聞かせをし、子供も自由に考え、感じることが大切なのですね。
集中は「年齢分」しか続かないと心得る
いざ読み聞かせをしようとしても、子供の興味が続かず、立ち上がっていなくなってしまうとママは自信を無くしてしまうもの。ママからは「集中して聞いてくれないので絵本のハードルが高くなってしまった」という声があがりました。
それに対し浜島さんは「1歳の子が1分でいなくなってしまうのは当たり前。1歳は1分、2歳は2分しか集中できないのよ」と話します。読み聞かせに自信がないというママにも「ママの読み方が悪いわけじゃないの、自信をなくさないでね」と笑顔。
1分集中が続かないなら、30秒ずつ分けて読んでも大丈夫。それでも「これだけは続けて聞いてほしい」というときは、おんぶして読み聞かせると良いそうです。おんぶなら子供が立ち去ることがないので、最後まで読めますね。
赤ちゃんにも「物語」は絶対に必要
0~1歳ごろの赤ちゃんの絵本を読むときは、絵だけでストーリーはあまりないものを選んでいると話すママたち。しかし、浜島さんは「赤ちゃんにも『物語』は絶対に必要なのよ」と話します。
絵が愛らしくても「その動物が何をしているのか」「これからどうするのか」というストーリーが絵本にとっては命。それがない絵本は、何も考えることがなく、子供をすぐに飽きさせてしまうと話します。
浜島さんがお手本を見せてくれた『ね、ぼくのともだちになって!』のように、絵だけの絵本でも対話でストーリーを作り出せれば大丈夫だそう。ママが読み聞かせるときも、「ぞうさんだね」「いぬさんだね」という読み聞かせではなく、「ぞうさんは何をしているのかな?」「いぬさんは今どんな気持ちなのかな?」と、想像を膨らませて、物語を感じられるように工夫してみましょう。
勇ましい物語は、パパの出番
浜島さんは「パパの読み聞かせは、とても大切」と話します。参加したママたちからは、パパが読み聞かせをしているという声もありました。
ママの1人は「パパは週に2~3回、子供に読み聞かせをしています。今は『おやすみ、ロジャー』を読み聞かせていて、たとえ息子が興味をなくして周りで遊び始めても、ひたすら読んでいます」と話しました。浜島さんは「たとえ興味を失われても、読み続けるパパは素晴らしいですね」とにっこり。
浜島さんによると、パパママ両方が読み聞かせをすることはとても大切だといいます。中でもパパにおすすめの絵本は「勇ましい物語」。冒険などのワクワクするストーリーは、パパも気持ちが盛り上がり、楽しく読み聞かせられるそうですよ。
パパが読み聞かせをしてくれると、ママは助かりますね。「上手に褒めて、パパに読み聞かせの習慣をつけてもらいましょうね」と話す浜島さん。育児の先輩としてアドバイスしてくださいました。
図書館を上手に活用して
子供がどのような絵本が好きなのか、絵本の好みはわかりにくいもの。ママの中には「書店で子供が興味を持った本を買っていますが、家に帰って見せてみるとあまり興味がなかったことがあって…」と、どんより話す方も。
そんなママに浜島さんは「最初から購入しないで、図書館を上手に使ってね」とアドバイス。図書館では無料で本を借りられるため、まずはいったん興味を持った本を借り、何度も借りたがるようなら購入すればよいとのこと。
小さいうちは子供に絵本を選ばせるのではなく、ママが「この子に読みたい」と思う絵本を選べばよいと浜島さんはいいます。ママが気に入った素敵な物語を、子供に聞かせてあげましょう。
また「最初は興味を持って何度も読んだ本がありますが、今は全く興味を持たなくなってしまいました」というママも。浜島さんは「それは飽きてしまったのね、他の本を読んであげて、しばらくしたらまたその本を見せたら、また好きになるかもしれないですよ」といいます。どのくらいの期間1冊の本が好きでいるかは本によりますが、もし興味をなくしてしまったら、新しい本にチャレンジしてみましょう。
絵本は「自由に、自分らしく」子育ての味方として活用してみて
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絵本を使った育児は難しいものではなく、ママが自由に、自分らしく取り組めば良いもの。浜島さんはママたちに「自信を持ってほしい」と話します。
絵本の読み方も選び方も「こうでなくてはいけない」という正解はなく、それぞれの子供とママの関係性の中で、もっとも楽しめる方法を探していけばよいのです。そして、ママだけでしなくてはいけないと思うのではなく、パパにはパパらしく、楽しい読み聞かせの時間を持ってほしいですね。
「絵本は育児の味方、おばあちゃんのようなもの」と浜島さんが語るように、絵本はママを助けてくれる存在です。絵本を通して親子の対話の中で、楽しい親子のふれあい時間を作りましょう。
なお、浜島さんの書籍『1日7分の絵本で子どもの頭はみるみる良くなる!』では、読み聞かせのコツや対話式読み聞かせのメリットがわかります。また、年齢ごとに浜島さんおすすめの絵本を紹介するコーナーがあり、すぐに育児に役立ちそうです。読み聞かせを上手に育児に取り入れたいママは、一度手にとってみてください。
取材協力:浜島代志子さん
神戸大学文学部国文学科卒。神戸市立中学教諭を経て松戸市へ。ミュージカルなどを行う劇団天童(現在は天童おはなしキャラバンに名称変更)を設立、運営。2014年にえほん教育協会会長に就任。子供の成長過程における絵本の重要性を訴えて絵本教育を実践している。
今回ご紹介させていただいた絵本
『ね、ぼくのともだちになって!』(エリック・カール/作、偕成社)
『まっくろネリノ』(ヘルガ・ガルラー/作 矢川 澄子/訳 偕成社)