いつもどおり、保育園へ子どもたちのお迎えに行くと、困った顔をしている保育士さんが。その後ろには物凄い形相で仁王立ちしている同じ園のお母さんがいました・・・。
長男のダイスケが年中の時なので、かれこれ10年以上前になりますか。
いつもの時間(19:00ギリギリ)にお迎えに駆け込むと、保育士の先生が困ったような顔をして「おかえりなさい、お母さん。実は今日・・・」と話を切り出しました。
あぁ、日中、喧嘩でもしたかな?と聞く姿勢をとる私を待っていたのは・・・
---事の発端は、ダイスケとお友達が遊んでいたら、年長クラスのA君が「僕も(遊びに)いれて」とやってきて。「いまはむりだからあとでね」とダイスケが応じると、A君は不機嫌になり、ダイスケを小突き、ムッとしたダイスケが反撃。突き出した指がA君の鼻のあたりを引っ掻いてしまった、というよくある話。
A君の傷も浅く、大事には至らず。
男児の成長過程としては、しごく真っ当な事例の「報告」だと思って聞いていたのですが。
続きが、ありまして。
相手方のお母さんがものすごく怒って待ち構えていました。文字通り、仁王立ち。
「いますぐに一緒に、総合病院を受診する」「傷跡が跡形もなくなるまで、整形外科にも通うが、保険は一切使わないから全治療費を負担しろ」とすごい剣幕でまくし立てるのでした。。
うちの子が原因なのに「保育の目が行き届かなかったために申し訳ない」と繰り返しながら、担任&看護師も同乗してくれて、病院へ。
診察室に入ると、ふたたびA君の親は饒舌にダイスケの「悪行」を語り、「跡が残らないように治療したい」と申し立てたのでした。
恐ろしいやら哀しいやらでうつむいていると、力強い医師の声が診察室に響き渡りました。
「あのね。何勘違いしてるの。保育をなんだと思ってるの?保育は親の代わりじゃないよ?大きな怪我がないようにどれだけの注意を払っているか知ってるの?集団生活をなんだと思ってるの。そこから学ぶものの大きさがわからず、ただひたすら怪我のないように育てたいならば、あなた今スグ仕事なんて辞めて、お子さんは家で育てたらいい!」
まさか医師からそんな言葉を聞くとは思っていなかったのと。その言葉に私自身が救われたのと。緊張が解けたのと。
なにより担任の先生も看護師も暗かった顔が明るくなった嬉しさで、思わず号泣。
あの医師も、お子さんを保育所に預けていたのかな。10年経っても色褪せないひとコマです。 ※1
(登場する場所・名前・所属などは編集部により架空のものに差し替えています。)
本当に素敵なお医者さんですね。保育者の方たちがどれだけ子どもたちの安全に気をつけているか、真に理解している発言なような気がします。職業柄でしょうか。保育は親の代わりではなく、集団の中で家庭とは違う新たな成長を促す機会のひとつ。そこには家庭以上に安心・安全な環境が求められます。一人で何人もの子どもを保育する保育士の方たちはやはり保育のプロなのでしょう。こういう保育者の目線を理解している方が増えるといいですね。