「もしかして虐待かも?」と思ったら
赤ちゃんはママが一生懸命あやしても、ずっと抱っこしていてもどうしても泣きやまないときがありますね。イヤイヤ期など子育てに手こずって、つい声を荒らげてしまう時期もあるでしょう。子育てから少し手が離れた筆者などは、叱られてべそをかいている子供を見てママとの関係がほほえましく映ることも多いです。
しかし、「これは尋常ではないのでは」というような子供の叫び声や親の怒鳴り声を聞いたときは少し事情が異なります。例えば同じマンションや近所の家で頻繁に怒鳴り声が聞こえたり、激しすぎるほどの子供の泣き声が聞こえたりすれば「虐待かも?」と思ってしまうことがあるかもしれません。
妊娠、子育て、妊活中の女性向けアプリ「ママリ」に次のような投稿がありました。
何階の部屋であるかとか、詳しいことは分かりませんがヒステリックなお母さんの声と時々子どもの泣き声や「やめて」「ごめんなさい」という声が聞こえる感じです。
ご近所から聞こえてくる泣き声と怒鳴り声を心配するママの声です。
子育てをしていれば怒りたくなるときもあるし、つい怒鳴ってしまうことだってあります。そういった母親としての気持ちがわかるとはいえ、聞こえてくる声が思った以上に激しいものだったときにどう判断すればよいのか。虐待と思いたくはないけれど、少し心配になってしまう…こういうシーンに遭遇することは珍しくはないのかもしれません。
投稿に寄せられた回答には、「同様の経験があり通報した」という声や「少し様子を見た方が良いかも」というものなどさまざまな意見が集まっています。子育てはケースバイケース。各家庭にもいろいろな事情があるので、気になったとしてもどこまで踏み込んでよいものかと迷ってしまいますね。
児童虐待の数は年々増加
厚生労働省の資料によると、全国の児童相談所での児童虐待に関する相談対応件数はこの20年あまり年々増え続けているという現状があります。相談件数を児童虐待防止法施行前の平成11年度と比べると平成26年度は7.6倍にまで増加しており、児童虐待による死亡事例も高い水準で推移しています。
平成26年度では、児童相談所における児童虐待相談対応件数の内訳は心理的虐待が最も多く、次いで身体的虐待が多くなっています。また、虐待を受けた子供の年齢構成を見てみると小学生が34.5%と最も多く、次いで3歳から学齢前児童が23.8%、0歳から3歳未満が19.7%となっており、小学校入学前の子供を合計すると43.5%と高い割合を占めることになります。
- 厚生労働省「児童虐待相談の対応件数及び虐待による死亡事例件数の推移」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000108127.pdf,2018年4月3日最終閲覧)
虐待かもと思ったら「189」
虐待かもしれないと思うような場面に遭遇したとき、すぐに児童相談所に通告・相談ができる電話番号があります。
「児童相談所全国共通ダイヤル」は覚えやすい3桁の番号「189(いちはやく)」。この番号にかけると発信者側の市内局番等から地域を特定し、管轄の児童相談所に電話が転送されます。
どんなときに電話すればよいのか、どんなふうに対応してくれるのか。「189」についてご紹介します。
どんなときに電話できるの?
この番号は周囲の虐待を疑ったときだけでなく、ママ自身が育児で追い詰められてしまっているときや、子供自身が親に虐待されていて通報したいというときにも使うことができます。
虐待かどうか判断に迷うことも多いでしょうが、次のように感じた場合には「189」に電話をかけてください。
- あの子、もしかしたら虐待を受けているかも…
- 子育てが辛くて子供に手をあげてしまいそうになる…
- 近くに子育てに悩んでいる人がいる…
児童相談所では専門家が相談に応じてくれます。通告・相談は匿名で行うこともでき、相談者やその内容に関する秘密は守られます。
このような場合も虐待とみなされます
虐待とは暴力だけでなく、家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう、きょうだい間での差別的扱いをする、なども含まれます。
ご近所などで心当たりがある場合は、相談してみてください。
児童相談所とは
児童相談所は全国の都道府県、指定都市等に設置されています。子供の健やかな成長を願って、ともに考え、問題を解決していくための専門の相談機関です。
相談する勇気を
近年では日常的に目にするようになってしまった児童虐待のニュース。小さな子が被害に遭う報道を聞いて心を痛めているママもいるのではないかと思います。
けれども実際に「虐待かも」と思うような場面に遭遇したときには、通報するべきかどうかを迷ってしまうという人も少なくないのではないでしょうか。例えば子供の泣き声が聞こえたとしても、それが通報する程のものなのかそれともよくある範囲のものなのか、判断が付かない場合も多いと思います。ママリに寄せられた声の中にも「頑張っているお母さんが崩れてしまうかもしれない」と様子を見た方が良いというものもありました。他人の家庭は見えないことが多いだけに本当に判断に迷いますよね。
けれど、万が一を考えるとやはり手を差し伸べる必要があるのではないでしょうか。
もしかすると子育ての悩みから抜け出せなくなっているお母さんもいて、児童相談所の専門家の目で判断してもらい、介入してもらうことで防げる事例もあるかもしれません。
子供を虐待から守るためには、「もしかしたら」「気になるな」という段階で相談してみる勇気も必要なのではないでしょうか。
- 厚生労働省「児童相談所全国共通ダイヤルについて」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/gyakutai/,2018年3月26日最終閲覧)
- 厚生労働省「児童虐待相談の対応件数及び虐待による死亡事例件数の推移」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000108127.pdf,2018年3月26日最終閲覧)
- 厚生労働省「児童虐待の定義と現状」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/about.html,2018年3月26日最終閲覧)