お話を伺った食育インストラクターのtottoさんは、テレビや雑誌でのフードスタイリングやレシピ開発の仕事をはじめ、2009年からは、こども達がシェフとなって親に料理をもてなす「家族のための1日限定こどもレストラン」というワークショップを開催されています。こども達が楽しみながら料理と向き合うコツをたくさんご存知の先生です!
今回、tottoさんには、こども達も参加できる料理の工程を伺いつつ、こども達の好奇心をくすぐるポイントをお聞きしました。一緒に料理を手伝ってくれたのは、tottoさんの長女・莉子さんです。
テーマは、ホットドッグパーティー!
「ホームパーティーを開くとなると、あれこれと料理を用意しないといけないのでは…?」そんなふうに思う方もいるかと思いますが、今回、tottoさんが考えたテーマは、「自分で選ぶ!自分で挟む!ホットドッグパーティー」。
「テーブルに並べるのは、ほぼ、パンに挟む食材だけ。手巻き寿司のように、みんながそれぞれ挟みたいものを選ぶので、ホストはとってもラクですよ。何よりも、こども達が、『次はあれ食べたい!』と、選んで仕上げる楽しさがあります」
なるほど!ホームパーティーを主催するハードルをグッと下げられるメニューです。この日、tottoさんには、ポテトサラダと皮なしソーセージの作り方と、最後に、こどもでも簡単に作れてパーティーの雰囲気が高まるケーキのレシピを教わりました。
「潰す」と「混ぜる」を楽しむ、ポテトサラダ。
まず1品目は「ブロッコリー入りポテトサラダ」。(レシピはページ下で紹介)
ホットドッグに挟む食材のひとつですが、そのままサラダとして食べてもおいしい料理です。
「こどもには、まず下ごしらえの『潰す』パートを担当してもらいます」とtottoさん。
茹で上がって柔らかくなったじゃがいもを潰すのは、小さなお子さんでもできる仕事です。
小さなこどもが、砂遊びをしながら、型を使ってできた立体物を作っては壊し…と夢中になっていると思いませんか?こどもは、元のかたちが別のものに変わることに興味を持つのかもしれません。
「こどもに料理を手伝ってもらう場合は、遊びとリンクさせるといいですよ。こどもは、『こねる』とか『混ぜる』とか、粘土遊びのような工程は大好きです。そんなふうに、どんな遊びと重なるかな?って考えるんです」
ある程度じゃがいもが潰れたら、次は「混ぜる」。
塩、こしょう、マヨネーズを加えて、じゃがいもと混ぜていきます。こどもには混ぜることに集中してもらい、調味料は大人が味を見ながら加えてあげましょう。
ブロッコリーの緑が均等になるように混ぜます。ブロッコリーを細かく刻んでいるのは、見栄えの点もありますが、好き嫌いがあるこども達のことを考えての工夫です。ちなみに、料理を手伝ってくれているこども本人が、仮にブロッコリーが嫌いだとしたら、どうすればいいでしょうか?「あ!今日のポテトサラダ、ブロッコリーが入ってる…」となったら?
「そんな時は、『食べる相手のことを考えてごらん?』と言ってあげるといいでしょう」とtottoさんはアドバイスをくれました。
「ワークショップの時にもよくありました。『僕はレタス嫌いなんだけどなぁ』と言うこども。そんな子には、『でも、ママは好きだよね?じゃあいっぱい入れようよ』と気づかせてあげるんです。食べる相手のことを考えようねと」
食べる相手。ホームパーティーでいうと、友達や、そのお母さんやお父さん達のこと。ホームパーティーを開催すると、そうした他者への想いも学べるきっかけになるのですね。
手でころころするだけの、簡単ソーセージ。
2品目は「皮なしソーセージ」。(レシピはページ下で紹介)
ソーセージというと、特別な機械を使って、豚の腸に肉を詰めていく工程を思い浮かべる人も多いはず。「自宅でできるの?」なんて思ってしまいますが、tottoさんが教えてくれたソーセージは、その名の通り、皮がないので料理はいたって簡単です。
まずは、「こねる」。
ひき肉をこねる感触は、粘土などをこねる感覚とはまた違って、こどもにとっては新鮮かもしれません。
「生肉をこねる料理は、こどもがある程度大きくなったら手伝ってもらうといいでしょう。こどもが小さすぎると、手を舐めちゃったりするので」。
生肉が扱えるようになれば、こども達に人気があるハンバーグなども一緒に手伝ってもらえそうですね。
続いては、ソーセージへと成型する工程。
こねた肉を手の平でころころと伸ばして、ソーセージへと成型していきます。これもまさに粘土遊びをやるかのような感覚!どんな子でも簡単に参加できそうです。
「こどもと料理をする時は、達成感を味わってもらうのが大切です。『自分がやったんだ!』という満足感。そうしたワクワクポイントを必ず盛り込むようにしながらメニューを考えていますね」
tottoさん曰く、どの工程をこどもにやってもらうか、ポイントを絞ることも大切なのだとか。全部を一緒にやらせようとすると、手間がかかるし、味も今一つになりがち。だからこそ、大人がやるべき工程と、こどもがワクワクできる工程の役割分担をするそうです。
ソーセージの場合、「焼く」工程は大人が担当。でも、焼きあがったソーセージは、まさに自分の手で作ったままの形なので、「これを作ったんだぞ」という満足感が得られやすそうな料理です。
「成功した体験はその先に繋がります。完成した時の喜びが半減しないように、成功させてあげることが大人の役目なのかもしれませんね」とtottoさんは微笑みます。さらに話は子育てについても及びました。
「私が子育てやワークショップで一番大切にしていることは、“こどもたちの選択肢を増やす”ということです。こどもたちが成長する中で、迷った時に選択肢がいくつかあればより良い方法を選ぶことができますし、記憶の中から自分自身で選んで進むこともできますよね」
こうした考えは、tottoさん自身も、こどもの頃のいろいろな記憶がふとした時にとても力になり、励みになってきたという経験から学んだことだそうです。
「だから大人がサポートできる間には、こども達にはいろいろと経験させ、選択肢を増やしてもらい、力強く生きていって欲しいなと思っているんです」
長女の莉子さんには、普段から料理を手伝ってもらうというtottoさん。そこには、お子さまの将来を優しく見守る親心がありました。
次回は、パーティーのテーブルを華やかに演出する「ケーキ」の作り方を伺います。
(1)ブロッコリー入りポテトサラダ
■材料(4人分)
じゃがいも…350g
ブロッコリー… 200g
塩…小さじ1/3
こしょう…少々
マヨネーズ…大さじ3
■作り方
1.じゃがいもは茹でるか蒸して柔らかくする。
2.ブロッコリーは小房に分け、柔らかく茹でて細かく刻む。
3.「1」のじゃがいもはマッシャーでよく潰し、「2」を合わせ、塩、こしょう、マヨネーズを加えてよく混ぜる。
(2)皮なしソーセージ
■材料(4人分)
豚ひき肉…400g
塩…小さじ1
セージ(ドライ)…小さじ2/3
ナツメグ…少々
菜種油…小さじ1
※セージやナツメグがなければお好みのハーブ(バジルやオレガノなど)でもOK
■作り方
1.材料をすべてボウルに入れ、ハーブが全体に行き渡るように混ぜ合わせる。
2.「1」を手で棒状にする。
3.フライパンに小さじ1の菜種油を温め、「2」を転がしながら弱火で焼き、中まで火を通す。
totto(黄川田としえ)/料理家・フードスタイリスト・食育インストラクター
テレビや雑誌、広告でのフードスタイリング、レシピ開発など、多岐にわたり活動中。フードスペースやその空間を演出するイベント等のフードケータリングなども行う。こどもたちの心と体の成長をサポートし、家族で楽しめるワークショップを各地で開催中。著書「毎日のごはんと心地よい暮らし(宝島社)」など。https://toshiekikawada.com/