子宮内膜症の治療は、薬物療法と手術療法のいずれかで行われます。年齢や症状の重症度、妊娠希望の有無によってそれぞれに適した治療方法を選択する必要があります。
薬物療法
薬物療法には痛みを抑えるための対症療法と、子宮内膜症の進行をできるだけ止めて患部を小さくするためのホルモン療法の二つに分けられます。
対症療法には、鎮痛剤が使用され生理時の下腹部痛緩和に有効です。できるだけ痛みがひどくなる前から服用することが望まれます。ただし、子宮内膜症の症状を抑える効果はないため、症状が進行して日常生活に支障が出るようならホルモン療法による治療を検討します。
ホルモン療法は、子宮内膜症が増殖する原因になっているエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌を抑える効果のある治療法です。排卵を抑制させてエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌を抑制する低用量ピルやジエノゲスト、点鼻薬や注射で人工的に閉経の状態を作り子宮内膜症の増殖を抑えるGnRHアナログ法で子宮内膜症の病巣を小さくさせます。
手術療法
子宮内膜症の手術療法には、保存手術と根治術の二つの方法があります。
保存手術は、将来的に妊娠を希望する場合に行われる手術で、子宮や卵巣、卵巣を温存する方法です。おなかの中を内視鏡で観察しながら行う腹腔鏡手術で卵巣のチコレート嚢胞を取り除き、癒着部分をはがしていきます。
腹腔鏡手術は通常の開腹術と比べて傷が小さく済むため、痛みも感じにくく術後の回復も早くなります。ただし、保存手術であるため再発の可能性もあります。
妊娠を希望しない人や症状がひどく薬物療法では回復が見込めない場合は、子宮や卵巣、卵管を摘出する根治術を行います。
- 京都府立医科大学産婦人科学教室「子宮内膜症外来」(http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/ob-gyn/html_new/kanjya/shikyunaimaku.html,2019年2月5日最終閲覧)
- 日本医科大学付属病院「子宮内膜症」(https://www.nms.ac.jp/hosp/section/female/guide/cure004.html,2019年2月5日最終閲覧)
- 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017」P106-112(日本産科婦人科学会事務局,2017年)
子宮内膜症だと妊娠しにくい?
子宮内膜症になると妊娠しづらくなってしまうと思う人もいるでしょう。
子宮内膜症の症状が進行すると卵巣や卵管、腸管に癒着が起こります。癒着が起こると、卵巣から卵子が放出されなかったり、卵管の入り口付近にある卵管采(らんかんさい)からうまく卵子を取り込むことができなかったり、もし受精できても受精卵が卵管内を移動できない状態となり、それが不妊症の原因となってしまいます。
また、子宮内膜症の治療中は薬の影響で排卵が止まってしまうため、妊娠が望めません。薬を中止しても次の排卵が起こるまでには1~3ヶ月かかるため、妊娠できるまでの時間も長くなります。
子宮内膜症を持つ人の約50%が不妊症を伴っていますが、年齢や症状の程度によるものの治療によって妊娠することも可能です。年齢が高い場合や卵管癒着がひどいときは早めに体外受精を勧められるケースもあります。
妊娠、出産、育児のQ&Aアプリ「ママリ」でも以下のような声がありました。
子宮内膜症の手術をしてその後妊娠した
手術したあとは妊娠しやすいみたいで四月末に手術して五月には妊娠しましたよ♪
手術も内視鏡で一週間程度の入院でしたし、この先気になりながら生活されるのでしたら手術も検討されてもいいかと思います。
ご参考になれば幸いです!
子宮内膜症と診断され手術が必要となるとやはり勇気がいりますよね。しかし手術を行ったことで、その後無事妊娠、出産することができたという人もいます。
治療後の妊娠率は、年齢や症状の程度によっても異なりますが、妊娠を希望する場合は子宮や卵巣を温存する治療方法を選択することもできるため、医師とよく相談して自分に合った治療方法を選べるとよいですね。
子宮内膜症の手術後体外受精を行った










