カプセル入りスポンジ玩具が幼児の体内に
2018年12月、消費者安全法に基づき消費生活センターから消費者庁に、生命・身体被害に関する重大事故などとして通知された、「カプセル入りスポンジ玩具」が幼児の体内へ入るという事故。
事故の原因となった「カプセル入りスポンジ玩具」とは、ゼラチンで作られた小さなカプセルの中に、圧縮された恐竜やフルーツの形をしたスポンジが入っているものです。このカプセルを水やぬるま湯につけることでゼラチンが溶け、カプセルの中に入っていたスポンジが出てくる仕組みになっています。
4歳の女の子は体の不調が続き、病院へ行くも原因が見つからず、ようやく判明したのは約4ヶ月後。その原因とは、入浴中に「カプセル入りスポンジ玩具」で遊んでいた際、保護者の知らないところで膣内へ入ってしまったというもの。摘出までには更に1ヶ月を要し、女の子の体には大きな負担をかける結果となりました。
消費者庁は今後同じような事故の発生を防ぐため、消費者に向けて注意を呼びかけています。
- 消費者庁「カプセル入りスポンジ玩具が幼児の体内に入る事故が発生! 」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/2018/pdf/consumer_safety_release_190215_0001.pdf,2019年3月5日最終閲覧)
- 消費者庁「Vol.440 カプセル入りスポンジ玩具が幼児の体内に入る事故に注意!」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20190221/,2019年3月5日最終閲覧)
事故の経緯と原因となったおもちゃを紹介
楽しく遊ぼうと思って購入した玩具で予期せぬ事故が起こり、女の子はとてもつらい思いをしたことでしょう。子供を持つ親としては、決して他人ごとではありませんよね。なぜこのような事故が起きてしまったのでしょうか?
この事故の原因となった「カプセル入りスポンジ玩具」についても、あわせて詳しく紹介します。
事故の経緯を紹介
100円均一ショップにて「カプセル入りスポンジ玩具」をいくつか購入。約2ヶ月間にわたり、入浴のときにほぼ毎日と言ってもいいほど当該玩具を1つ使って遊んでいた今回の事故に遭った4歳の女の子。
この玩具で遊ぶようになってから2ヶ月ほど経ったある日、保護者が女の子の下着に薄い血液が付着しているのを発見し、医療機関を受診しましたが症状は改善されず。その後も微量の出血・血尿・皮膚のただれ・強い臭気などの症状が続き、再び医療機関へ。症状に合わせた処置は行われるものの原因の特定には至らず、いくつもの病院を受診したとのことです。症状に悩まされて2ヶ月ほど経った頃、受診した小児科で婦人科への受診をすすめられ、症状が出だして約4ヶ月経ったところで受けたMRIによって原因がわかりました。原因は、膣内に異物があったことによるもの。原因特定からさらに1ヶ月後、女の子は全身麻酔で異物を摘出する手術が行われたとのこと。
手術から1ヶ月後、女の子を悩ませた症状は治まったことが確認されています。
どんなおもちゃだったの?
今回の事故の原因となった玩具は、「水でふくらむスポンジ」や「水でふくらむ!スポンジカプセル」などの名称で販売されており、1商品にカプセルが12個入っているものが多いようです。
無色透明のゼラチンでできたカプセルの中に、恐竜・果物・動物などの形をしたピンクや水色などカラフルなスポンジが圧縮された形で入っています。お風呂などで水や湯につけると、カプセルが溶けて中からスポンジが出てくる、子供心を刺激する工夫が凝らされた玩具です。
こちらの玩具の対象年齢は3歳以上となっており、今回事故に遭った女の子は4歳ということで対象年齢には達していました。しかし、対象年齢に適合していても、子供だけで遊んでも良いということにはならないということを頭に入れておきましょう。
何種類ある?大きさ、形は?
調査により、100円均一ショップに売られているものだけで11銘柄(A社4銘柄、B社7銘柄)あり、どの銘柄も1商品に付き12個のカプセルが入っています。
カプセルは長辺22~24mm×短辺7~8mm程の大きさ。日頃よく目にする、サプリメントなどに使用されるカプセルと同等のものだということが分かりました。
また、スポンジは11銘柄あり、それぞれ1商品に12個入っているため、合計132種類です。形は、恐竜や果物、動物といったさまざまなものがありました。カプセルが溶け、膨らんだ後のスポンジの大きさは形状によって異なりますが、縦32~33mm×横42mm×厚さ6mm~8mmほどになります。溶ける前のカプセルと比べると、体積が5倍以上に膨らむことが分かりました。
誤嚥(ごえん)及び窒息の可能性は?
玩具には、法令上の規格や基準などはありません。しかし、今回の事故の原因となった「カプセル入りスポンジ玩具」には誤嚥(ごえん・むせること)及び窒息の可能性があるのか否か調べるため、一般社団法人日本玩具協会が定める玩具安全基準の小部品試験を実施。
その結果、すべてのカプセルが小部品円筒に完全に収まり、膨らんだ状態ではA社では48種類のうち38種類、B社では84種類のうち77種類が小部品円筒に収まり、誤嚥・窒息のおそれがあるということが分かりました。
今回の調査対象である銘柄すべてが対象年齢を36ヶ月以上としており、パッケージには窒息に注意するようにとの表示が書かれています。
- 日本気管支食道科学会「誤嚥とは」(http://www.kishoku.gr.jp/public/disease05.html,2019年3月7日最終閲覧)
- 名古屋逓信病院「誤嚥とは」(https://www.hospital.japanpost.jp/nagoya/health/healthinfo201508.html,2019年3月7日最終閲覧)
おもちゃの管理に気をつけましょう
今回のような事故の発生を防止するため、「カプセル入りスポンジ玩具」を購入した場合、子供の手の届かない場所に保管するようにしましょう。大人が見ていないところで子供が勝手に遊ぶと、目や耳や鼻などに入れてしまう可能性があり、窒息など思いもよらない事故につながる恐れがあります。たかが玩具と思いがちでですが、大人の管理下に置いておくことが最も大事です。
また、入浴中にこの玩具で遊ぶときには、必ず大人が見ているところで遊ぶようにしましょう。膣や肛門から体内に入ってしまう危険があることを頭に入れておき、遊びはじめと終わりにカプセルの数の確認を大人が行いましょう。
そして、万が一カプセルが体内に入ってしまった場合、すぐに症状が出ずとも病院への受診が必要です。喉に詰まってしまったときは、一刻を争うので速やかに応急処置もしくは救急車を呼びましょう。
対象年齢に達していても、必ず保護者のそばで
玩具で遊ぶとき、多くのママ・パパが参考にするであろうその玩具の対象年齢。子供が対象年齢に達していたら安心して玩具を渡してしまいがちですが。今回の事故は対象年齢に見合った玩具を使用していたにもかかわらず、起きてしまいました。
子供は大人の想像を超える行動をすることが多々あります。子供用の玩具であっても、ときには命を脅かすような凶器にもなり得るということを念頭に置いておきましょう。今回の事故で、玩具の対象年齢に達していても大人がしっかり管理する、大人の目が届くところで遊ばせることの重要さを改めて実感させられましたね。
どの玩具で遊ぶときも、子供の安全を第一に考え、ルールを守って正しく楽しく遊びましょう。