子どもの不慮の事故は「窒息」が最多
消費者庁の資料によると、0~3歳の子どもが死亡する事故のうち最も多い原因が「窒息」となっており、5割以上を占めています。これには就寝時の窒息死や原因不明のものも含まれますが、誤飲などによる事故も少なくありません。
子どもの事故は思いがけないことで起こるものですが、パパやママが気をつければ事故が起こる確率を下げることもできるはず。窒息の原因と対処法について詳しく見ていきましょう。
窒息の原因はおもちゃだけではありません!
3歳児が口を開けたときの大きさの目安があります。消費者庁の資料によると最大39mmなのだそう。もちろん個人差もありますが、直径39mmの円を通るものは子どもの口に入り、窒息の危険があるのだと認識しておきましょう。
また、窒息の原因となるのはおもちゃなどの小物ばかりとは限りません。普段口にするのが当たり前のような食べ物が、子どもの窒息事故の大きな原因ともなっています。
窒息事故の原因となるもの
- 食べ物(ゼリー、あめ、ミニトマト、豆・ナッツ類など)
- おもちゃ
- その他の小さな物(ペットボトルのふた、消しゴムなど)
窒息事故を防ぐ方法を紹介
そもそも事故が起こらないようにするには、意識して予防しておくことが大事です。では、子どもの窒息事故を防ぐには、どのようにすればよいでしょうか。
各家庭によって事情はさまざま。思いつく方法もいろいろとあるかもしれませんが、大きく分けて、注意したいのは次の二つのポイントです。
1.子どもの手が届かないところにものを置く
小さいおもちゃや小物類などは、子どもの手の届かないところに置くようにしましょう。子どもの手が届く範囲の目安は、台の高さと合わせて次の通りです。
- 1歳:90cm
- 2歳:110cm
- 3歳:120cm
食べ物の与え方に注意
食べ物を与えるときも与え方に注意しましょう。遊びながら食べたり、寝ながら食べたりしては誤飲も起こりやすくなるもの。次の通り気をつけておきましょう。
- 食べ物は小さく切り、食べやすい大きさにする
- 遊びながら、歩きながらや寝転んだまま食べさせない
- 食事中に眠くなっていないか注意する
- 硬い豆やナッツ類は、5歳以下の子どもには食べさせない
- 徳島県・消費者庁「子どもの窒息事故に注意!」(http://www.caa.go.jp/future/project/project_006/pdf/project_006_180402_0001.pdf,2021年10月19日最終閲覧)
- 消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥 ごえん 事故に注意!」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_047/assets/caution_047_210120_0001.pdf,2021年10月19日最終閲覧)
窒息事故が発生したときの対処法
もちろんあってほしくはないですが、子どもの事故というのはいつどんなときに起こるとも限りません。
事故が起きないようにするには予防が肝心。それでも窒息が起こった場合には、すぐに応急措置を行いましょう。万が一の場合にそなえ、窒息事故の対処法を紹介します。
子どもの気道異物除去の手順
子どもの窒息に気づいた際、呼びかけに反応する場合には気道に詰まった異物の除去を試みます。 異物除去には次に挙げる二つの方法が有効です。異物が取れるか、意識がなくなるまで続けます。
1.背部叩打法(はいぶこうだほう)
乳児には、背中をたたいて異物除去を行う「背部叩打法」を行います。
乳児を片腕にうつ伏せに乗せ、手のひらであごを支えながら頭を体よりも低く固定します。もう一方の手のひらの基部(手首に近い部分)で背中の真ん中を 平手で何度も連続してたたきます。年長児や大人の場合には肩甲骨の中間あたりを強く何度もたたきます。
2.腹部突き上げ法(ふくぶつきあげほう)
※妊婦や乳幼児には行えません。
年長児や大人の場合には、腹部を上方へ圧迫する「腹部突き上げ法」を行います。
患者の後ろからウエスト付近に手を回し、一方の手でへその位置を確認。もう一方の手で握りこぶしを作り、へその上でみぞおちの十分下に親指側を当てます。へそを確認した手を握りこぶしにして両手を組み、素早く手前上方に向かって突き上げるように圧迫する方法です。
腹部突き上げ法を行った場合は内臓を傷める恐れもあるため、救急隊にその旨を伝えるか医師の診察を受けるようにしてください。
- 日本医師会「気道異物除去の手順」(http://www.med.or.jp/99/kido.html,2018年7月17日最終閲覧)
子どもの心肺蘇生方法の手順
呼びかけたり肩を軽くたたいたりしても反応がない場合には、ただちに心肺蘇生を行います。心肺蘇生の方法は基本的には大人でも子どもでも同じで、心臓マッサージを強く、早く、絶え間なく行うことが大事です。
心肺蘇生を行っている途中で異物が見えたら、異物を取り除きます。見えない場合は心肺蘇生を優先させてください。
心肺蘇生法は次のような手順で行います。
1.119番通報とAEDの手配
手伝ってくれそうな人が周囲にいる場合には、119番通報とAEDの手配を頼みます。自分1人の場合にはすぐに119番通報で救急車の要請をし、可能であればAEDの手配をします。
2.呼吸の確認
胸と腹部の動きを見て普段通りの呼吸があるかを確認します。呼吸がなかったり、しゃくりあげるような不規則な呼吸をしたりしている場合にはただちに心臓マッサージを行います。
3.心臓マッサージ
乳児や小児に対する力加減の目安としては、胸の厚さの3分の1が沈むくらいの強さで行います。胸の真ん中あたりを目安に1分間当たり100~120回のテンポで、中断は最小限にして素早く、絶え間なく心臓マッサージを行います。
4.人工呼吸
まずは片手で傷病者の額を押さえながらもう一方の手であごを持ち上げ気道を確保します。
心臓マッサージ30回に人工呼吸2回を1セットとして交互に繰り返します。人工呼吸ができない状況では、心臓マッサージだけでも続けましょう。
5.AEDが到着したら
AEDは、心停止した心臓に電気ショックを与え、心臓の拍動を正常に戻す救命器具です。
電源を入れて電極パッドを装着し、音声ガイドに従って操作します。除細動ボタンを押すときは、誰も傷病者に手を触れないようにします。電気ショック後にはすぐに心臓マッサージを再開します。
- 日本医師会「心肺蘇生法の手順」(http://www.med.or.jp/99/cpr.html,2018年7月17日最終閲覧)
子どもの一次救命処置を紹介
心臓マッサージと人工呼吸による一次救命処置の手順は、基本的には大人も子どもも同じですが、体の小さい子どもに対しては気をつけておきたいポイントもあります。
ここでは、1歳未満の子どもを「乳児」、1歳以上16歳未満の子どもを「小児」としてそれぞれの場合における救命処置の方法を紹介します。
乳児(1歳未満)の場合
心臓マッサージを行う位置について、乳児の場合は両乳頭部を結ぶ線の少し足側を目安とする胸の真ん中を2本指で押します。
胸の3分の1が沈むくらいの強さで押し、1分間に100~120回程度の早めのテンポで、絶え間なくマッサージを行います。
小児(1歳以上16歳未満)の場合
年齢の幅が広い小児ですが、基本的に心臓マッサージを行う位置は胸の真ん中あたりが目安になります。体格が大きい場合には成人と同じように両腕で押してもよいでしょう。
乳児の場合と同様胸の3分の1が沈むくらいの強さを目安に押し、1分間に100~120回程度の早めのテンポで、中断を最小限に絶え間なくマッサージを行います。
AEDの使い方
AEDの使用手順も大人の場合と同様ですが、小児用パッドや小児用モードがある場合、未就学児には小児用を使用します。
小児用がない場合には成人用モード・成人用パッドを使いますが、成人用パッドで小児用モードを使う場合にはパッドが触れ合わないように注意してください。
- 日本医師会「子どもの一次救命処置」(http://www.med.or.jp/99/kids.html,2018年7月17日最終閲覧)
誤飲したときは、まずはすぐに119番を!
子どもがぐったりする、意識がなくなるというような事故が起こった場合にはまず119番に通報してください。救命処置は救急車が到着するまでの応急措置として知識を深めておくことが理想的です。
普段、事故が起こる前に心肺蘇生法の講習会などに参加しておくのもよいと思います。筆者は子どもの幼稚園の講習会でAEDの使い方について受講したことがありますが、体験してみると、知識だけでは何もできないものだと痛感しました。講習会は医師会や日本赤十字社、消防署などでも受けることができますよ。
また子どもの事故には親もパニックになりがちです。かかりつけの病院や近くの救急病院など、緊急時の連絡先はすぐに見られるようにしておくとよいですね。
子どものけがや事故はいつ起こるかわかりません。それでも、知識を持って事前に対処しておけば発生の可能性を減らすことはできますし、万が一の場合の対処法を心得ておくことで救える命もあるでしょう。国や自治体などからも、事故にそなえるための情報がたくさん発信されています。そういったものも参考にしながら、子どもの安全に気を配ってあげたいものですね。