漢方薬はどれくらいで効果を実感できる?
「漢方薬はなかなか効果が出ない」というようなイメージを持っている方は少なくないと思います。ママリにも以下のような投稿がありました。
漢方薬は、どのような目的で服用するのかにもよりますが、すぐに効果が現れないこともあります。
肩こりを例にすると、漢方薬を飲んだからと言ってすぐにこりが解消する訳ではありません。肩こりの原因とも考えられる冷え性、血の巡りなどを改善することによって肩こりを起こしにくい体へ導いていくのが漢方の考え方だからです。
このように体質改善を目的とするならば、数か月服用することで徐々に「冷えを感じにくくなった」「肩こりが楽になった」などといった漢方薬の効果を実感することがあります。
なかには即効性のある漢方薬も
体質改善を目的とした、長期間の服用が必要な漢方薬もありますが、効果が出るまでに時間がかからない漢方薬もあります。例えば風邪をひいたときに、その人に合った漢方薬を服用すれば15〜30分後には頭痛等がやわらぐこともあります。
- 嶋田豊(監)「漢方薬事典 改訂版」40(主婦と生活社,2016)
- 慶應義塾大学医学部漢方医学センター「Q8漢方薬は長く飲まないと効きませんか?」(http://www.keio-kampo.jp/ja_1/page06.html#answer8,2020年11月4日最終閲覧)
漢方を飲むタイミングは「食前または食間」が基本
では、より漢方薬を効果的に服用するにはどのようにすればよいのでしょうか?ママリにも、風邪のひきはじめにどのような対策をとっているかの質問がありました。
こちらの方のように、風邪の引き始めやゾクッと寒気を感じた時に早めに服用すると効果がある漢方薬もあります。
漢方薬の飲み方は、「食前または食間に服用してください」と指示されることが多いです。食前とは食事の30分〜1時間前、食間とは食事と食事の間のことで、食後2時間くらいを指します。
つまり、漢方薬は基本的には空腹時に服用することが勧められています。空腹時に服用が勧められる理由としては、漢方薬の吸収が良いとされているからです。
つい飲み忘れてしまったときは食後でもOK。気づいたときに服用を
しかし、漢方薬にはさまざまな種類があり、「絶対空腹時に服用しないと…」と考えるよりも、ご自身が忘れずに服用できるタイミングをより重視した方が良いでしょう。漢方薬も決められた量を飲まないと、きちんと効果を発揮することができません。
忙しくてつい飲み忘れてしまった場合は食後に服用しても良いですし、思い出した時にすぐに服用して構いません。ただし、次の服用時間が近いときは2回分まとめての服用はしないでください。判断に迷う場合には薬剤師に確認してください。
また、「食前に服用すると胃がムカムカする、気持ち悪くなる」などといった、胃腸障害を感じる方にはあえて食後に服用してもらうこともあります。胃に負担がかかりやすい生薬が入っている漢方薬だと胃腸障害が出やすいので、気になる方はご自身が処方された漢方薬の飲み方を、その都度かかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。
- 日本医事新報社「服用タイミングと飲み合わせによる漢方薬の有効性の違い」(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3768,2020年11月4日最終閲覧)
- 嶋田豊(監)「漢方薬事典 改訂版」128(主婦と生活社,2016)
- 田中良子(監)「薬効別服薬指導マニュアル第8版」964(じほう,2015)
漢方薬の正しい飲み方
漢方薬を服用する際に気になるのは味ではないでしょうか。苦味が強く、苦手な方は少なくないでしょう。ママリにも、漢方薬がどのような味なのかを気にする投稿がありました。
漢方薬の味の感じ方には個人差があり、苦い漢方薬もありますが、甘くて飲みやすいものもあります。どの漢方薬でも、基本的には水または白湯(さゆ)で飲むことをおすすめします。
処方された漢方薬の味が苦手でなければ、コップ半分程度の白湯(100cc程度)に漢方薬を溶かし、煎じ薬のようにして飲むと香りが立つのでより薬効を得ることができますよ。
苦くて飲みにくい場合には
苦くて飲みにくい場合は、少量のはちみつを混ぜると飲みやすくなります。その他にもオブラートに包む、丸剤や錠剤に変更してもらうなどの方法があります。
水や白湯(さゆ)意外で飲みたい場合には、自己判断せず薬剤師に相談しましょう。
- 日本医事新報社「服用タイミングと飲み合わせによる漢方薬の有効性の違い」(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3768,2020年11月4日最終閲覧)
- ウチダ和漢薬「五十音順検索 【蜂蜜(ハチミツ)】」(https://www.uchidawakanyaku.co.jp/tamatebako/shoyaku_s.html?page=191,2020年11月4日最終閲覧)
- 嶋田豊(監)「漢方薬事典 改訂版」128(主婦と生活社,2016)
複数の漢方を服用してもOK?
病院などで、複数の漢方薬を処方されることがあるかもしれません。実際に、ママリでも複数の漢方薬の飲み合わせを気にする投稿がありました。
医師によっては、症状に応じて複数の漢方薬を処方する場合もあります。ただし、自己判断で複数の漢方薬を服用するのはやめましょう。漢方薬は複数の生薬で構成されているため、複数の漢方薬を服用すると生薬の成分が重複する可能性があります。
例えば「甘草(かんぞう)」という生薬に含まれるグリチルリチンという成分が原因で、むくみ、血圧が上がるなどといった副作用が出ることがあります。甘草は多くの漢方薬に含まれているだけでなく、甘味料として食品にも含まれてる場合もあり、気付かないうちに大量に摂(と)っている可能性もあります。
その他にも、個人の体質や他の併用薬などの要素も関係してくるため、複数の漢方薬を服用する場合は、必ずかかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。
- 慶應義塾大学医学部漢方医学センター「Q13漢方薬には副作用がないのですか?」(http://www.keio-kampo.jp/ja_1/page06.html#answer13,2020年11月4日最終閲覧)
- 嶋田豊(監)「漢方薬事典 改訂版」40,41(主婦と生活社,2016)
漢方の副作用
「西洋薬に比べて漢方薬は副作用がない」というようなイメージを持つ方がいるかもしれません。しかし、漢方薬でも副作用が起こる可能性はあります。ママリの以下のような投稿も、副作用の一種です。
生薬の中には胃に負担がかかりやすいものがあり、胃腸が弱い方や体調が悪い時に服用すると胃もたれやムカつき、吐き気などを感じることがあります。この場合は食後に服用することで症状が軽減する場合もありますが、胃腸が弱い方には胃腸に優しい生薬を含む漢方薬に変更するという選択肢もあります。
また、先程もご紹介したように、甘草のように成分のはたらきにより予測できる副作用以外にも、アレルギーが原因で皮膚のかゆみや湿疹(しっしん)などを生じることがあります。いずれにせよ、漢方薬を服用していつもと違った症状を感じる時は服用をすぐに中止し、かかりつけ医や薬剤師に報告することが大切です。
- 慶應義塾大学医学部漢方医学センター「Q13漢方薬には副作用がないのですか?」(http://www.keio-kampo.jp/ja_1/page06.html#answer6,2020年11月4日最終閲覧)
- 嶋田豊(監)「漢方薬事典 改訂版」129−130(主婦と生活社,2016)
正しく付き合えば、体調管理の助けに
漢方薬は、西洋薬とは考え方や効き方が異なるため、飲んだことのない方は漢方薬に抵抗や不安があるかと思います。また、体質によって処方を決めるので、自分に合った漢方薬を選ぶのは難しいでしょう。
まずは、自己判断ではなく医師や薬剤師に相談し、自分の体質にあった漢方薬を服用することが大切です。その上で、今回ご紹介した効果的な飲み方や副作用を意識していただければと思います。
執筆:薬剤師 道川佳苗
薬剤師、調理師。明治薬科大学卒業後、調剤併設型ドラッグストアにて従事し服薬指導をする中、病気の予防、健康維持には食育が大切であると感じ、調理技術、栄養学を学ぶため服部栄養専門学校に入学し卒業する。その後、大手料理教室講師、漢方クリニックの門前薬局で煎じ薬の調剤、漢方相談、服薬指導などを経験。現在は今までの経験を活かし web上で健康相談や薬膳や漢方に関する情報発信をしている。