しつけで子どもをたたくことはある?
世間のパパママはしつけで子どもをたたくことに対してどのように考えているのでしょうか?
2018年に公益財団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが発表した「子どもの体やこころを傷つける罰のない社会を目指して」によると、しつけと体罰の関係性について次のような回答結果となりました。
【しつけのために、子どもに体罰をすることに対してどのように考えますか】回答者数:2万人
- 積極的にするべきである:233人(1.1%)
- 必要に応じてするべきである:3,262人(16.3%)
- 他に手段がないと思った時のみすべきである:7,850人(39.2%)
- 決してすべきではない:8,655人(43.2%)
調査の結果を見ると、「決してすべきではない」という意見が過半数ですが、「他に手段がないと思ったと時のみすべきである」という人が容認派だと考えると、しつけのために子どもをたたくことを容認している人のほうが多いということがわかります。
- 公益財団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「子どもの体はこころを傷つける罰のない社会を目指して」(https://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/php_report201802.pdf,2022年4月19日最終閲覧)
しつけでたたくことが子どもに与える影響とは
それでは、しつけでたたくこととは子どもにどのような影響を与えるのでしょうか?公的機関による調査結果をまじえながら、しつけとして子どもをたたくことへの影響について紹介します。
子どもが攻撃的になるリスクがある
厚生労働省の報告によると、親にたたかれて育った経験をもつ子どもは心に大きな傷を負ったり、攻撃性の強い子に成長したりするリスクがあるとしています。
「愛の鞭である」と親が思っても、子どもにとって大人から叩かれることはとても怖いことです。ちょっと叩かれただけ、怒鳴られただけでも、心に大きなダメージを受けることもあります。 ※1
体罰を受けてきた子どもたちは、仲間に対してより攻撃的である傾向が高く、友達関係において暴力を使ったり、いじめをしたり、友達から暴力を振るわれたりすることを容認する傾向が高く、紛争の解決に暴力的手段を使ったり、親に対して攻撃的である傾向が強い。 ※2
しつけとして子どもをたたいたとしても、子どもからするとたたかれることは暴力であり、「怖い」という気持ちが生まれてしまいます。そして、たたくしつけで育てられた子は「暴力は有効な手段」だと考えるようになり、将来的にいじめをしたり、攻撃性の高い子どもに成長したりすることもあるのです。
心の病にかかりやすくなる
しつけで子どもをたたくと、子どもの感情が不安定になったり、自尊心が低くなったりして心の病にかかりやすくなるとも報告されています。
2002年のメタ分析で、12の研究すべてが、体罰と、行動障がい、不安症、うつ病、および絶望感など、子どものメンタルヘルス低下との関連性を明らかにした。 ※3
子どものころの心の傷は大人になってからも影響が続き、うつ病や不安症などの精神疾患の原因になります。パパママにとってはしつけで軽くたたいたつもりでも、子どもの心に悪影響を与える可能性もあるでしょう。
親に対する反抗心が生まれる
親に叩かれて育った子どもは、親に対して反抗心を抱きやすくなります。自分に対して「怖いこと」「痛いこと」をする人との信頼関係を築くことは大人でも難しいですよね。小さな子どもならなおさらです。
子どもはしつけで自分を叩く親との信頼関係を築けなくなり、安心できる居場所がなくなります。恐怖心から親に悩みや相談をすることもできません。そのため非行に走ったり犯罪につながったりと、反抗的な態度をとるようになることもあるのです。
- 厚生労働省「(PDF)体罰等によらない子育てのために」(https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/minnadekosodate.pdf,2022年4月19日最終閲覧)
自分の子育てでもたたくようになる
たたかれて育った子どもは、大人になって自分の子どもが生まれたときに、同じように子どもをたたく父親・母親になる可能性があるという報告もあります。
暴力は暴力を生む。体罰は暴力や報復を問題解決の手段だと教えてしまい、子どもが自分の見たおとなの行動を真似することで、延々と続いていく。男児、女児が子ども時代に暴力を受けた経験は、その後の反社会的行動、犯罪行為、暴力行為の予測因子となる。 ※4
このように、パパママからたたくしつけを受けた子どもの中には、「たたくことは有効な手段だ」という考えが根付いてしまい、子ども自身も同じ行動を行うようになります。
しつけでたたくと攻撃的な子に成長することと同じく、子どもは親の行動をマネします。そのため、たたかれて育った子どもは、自分に子どもが生まれたときも、自分がされたことと同じようにしつけで子どもをたたくように…。
たとえしつけであったとしても、子どもをたたくことは負の連鎖を招くことになりかねません。
たたかないしつけを行うポイント
頭を叩かれて育った子どもには、さまざまな悪影響が現れることがわかりましたね…。それでは叩かないしつけを行うにはどのようにすれば良いのでしょうか?
子どもが言うことを聞かないとイライラして叩いてしまう…そのような方は、今日から四つのポイントを意識しながら子どもと接してみてくださいね。
きっと子どもとの関係性も今より良くなっていくでしょうし、叩かないしつけをすることで、ママパパ自身の心も穏やかになるかもしれません。
たたかないことを強く念頭に置く
まずは「絶対に叩かない」ことを強く念頭に置くことから始めましょう。叩くしつけが日常化すると、叩く加減がだんだん強くなる傾向があります。
子どもは痛みに対して耐性をつけ、言うことを聞かせるためにはもっと強く叩かなければならなくなるからです。エスカレートした結果、叩くしつけが虐待へと発展するケースも…。
子どもを叩きそうになったらグッと感情を抑えて、深呼吸を1回しましょう。深呼吸をすれば感情から行動までのテンポがずれるので、行動をコントロールしやすくなりますよ。もしすぐにコントロールできなくても、少しずつ感情的に接することをやめていきましょう。
子どもの行動の理由や気持ちを理解するよう努める
しつけで叩くことをやめられたら、子どもがなぜ怒られるような行動をとったのか、理由や気持ちを理解するようにしてください。大人でも理由や気持ちを理解してもらえず、頭ごなしに怒鳴られたり叩かれたりすれば不信感を抱いてしまいますよね。
子どもとママパパが落ち着いたタイミングで、優しく冷静に理由を聞いてあげましょう。もちろんその理由に納得できないこともあるでしょう。しかしその場合でも否定せず、まずは子どもの気持ちを受け止めてからママパパの考えや気持ちを伝えるようにします。
肯定文で伝える
子どもをしつけで叩くときは、「○○したらダメでしょ」と否定文になりますよね。そこでおすすめのしつけ方法が「肯定文で伝える」ことです。たとえば「片付けなくちゃダメでしょ」を肯定文にすると、「片付け上手にできるかな」「片付けようね」等となります。
肯定文で優しく諭すようにすると子どもに伝わりやすく、叩くこともなくなるはずです。伝えるときはわかりやすいように具体的に説明するのがおすすめ。ママパパが一緒に片付けてお手本を見せてあげるのも良い方法ですね。
「できること」を具体的に褒める
子どもをしつける基本は「できること」「できたこと」を見つけて褒めることです。子どもの行動を見ていると、つい「できていないこと」に目が向きがちですよね。
しかし褒められた子どもは自己肯定感が高まり、「もっと褒められたい」との気持ちから良い行動をするようになります。
肯定文で伝えるのと同じく、できることも具体的に伝えてあげることが大切です。「ちゃんと片付けができてえらいね」とできたことを褒めるのも良いですが、「ひらがなのお勉強を毎日していてえらいね」と頑張っていることを具体的に褒めてあげるのも効果的ですよ。
- 厚生労働省「(PDF)体罰等によらない子育てのために」(https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/minnadekosodate.pdf,2022年4月19日最終閲覧)
たたくしつけはNG!子どもの意思を尊重するしつけを
子どもが言うことを聞いてくれないと、ついたたいてしまうというパパママもいるかもしれません。しかし、たたくことは子どもの心に深い傷を負わせることになりかねません。
たたくことなくしつけるためには、子どもの気持ちを理解し、パパママの思いを伝え、子どもの意思で考えて行動できるようにすることが大切です。今回の記事を参考にしながら、子どもを尊重したしつけ方を考えてみてくださいね。